メロン臭い男

男は毎朝

起きると

服を一枚一枚脱ぎ

その醜い全裸を

満足げにさらけ出し

冷蔵庫で冷え冷えの

夕張メロンを

左手に持ち

優雅にステップを踏み

それ専用の

よく研がれた包丁と

それ専用の

木製のまな板で

メロンをとてもとても

慣れた手つきで

口笛を吹きながら

切り落とすのだ

そして鏡の前に立ち

メロンを体にこすりつける

熟れたメロンは

浸透するように

その男の体に

グチョグチョになりながら

溶けてゆく

丹念に丹念に

全身にこすりつける

男はこれを35年間続けてきた

メロンはなにも言わない

やがて濡れた体が

乾いてゆく

ある夜

それを一切やめようと

心に誓う

次の朝気づくと

メロン臭い男が立っている

メロンはなにも言わない

メロン臭い男

メロン臭い男

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-12

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