(BL)ハジマリ→コイ?

えりな

  1. 『チカンゴッコ。』

いつもの日常から始まる
いつもとは違う出来事。

そこから始まったモノが色々なモノへと変わり
そこからまた、新しいカタチに変わっていく。

そんなお話です。

※他カップルによるBL・MLの恋愛模様です。

『チカンゴッコ。』


カタンカタンとゆっくりと揺れる車体。

それに身を任せながら車窓から外をみつめて流れていく景色をぼんやりと見ていた。

そして、
感じる、
いつもの気配。


つり革を持っている肘の辺りにピタリと温かな物が触れる。
なんでかな?
ヤツラは必ずそれをしてくる。
一体全体なんのサインなんだか?

すると。



するり。



その温かな物…おそらくそれはソイツの指先なんだろね。
それが背後から俺の股間に触れてきた。

なんの反応も示していない俺の前を一撫でして…無抵抗とわかるとそれは急に大胆に掌でそれを包み込む。
…つか…そんなやり方までみんな一緒なんだな。
内心ため息を吐きつつ、背後からされる行為をどこか冷めた気持ちで受け、視線を窓の外に向けた。


ぐにぐに。


無駄にデカい掌の中で俺のが揉まれ続ける。

…こいつ…マジで。

奥歯を噛み締めて眉間にグッと力を込めたその時。
ふっ、と耳に熱い息が吹き掛けられて。


「怖くないから…リラックスして?すぐにキモチよくしてあげるから…」


含み笑いの入り交じった声と荒い息づかいに瞬時に鳥肌が立った。
は、と短く息を吐く。
背後では見ず知らすのヤツがはあはあと荒い息を吐きながら俺のケツの割れ目に堅いのを擦り付けてて。
俺は。


「あのさぁオッサン。マジで下手クソな?お巡り呼ばれたくなかったらとっとと失せな。」


低く、低くそう言って、少し上げた足をそのまま背後に振り抜いた。



ガッ!



聞いたことないくらいの鈍い音がしたのと同時に車内に電車の到着アナウンスが響き渡る。
停車し開いたドアに向かって大量の人波が流れていくと背後の痴漢は逃げるようにその場をあとにした。


「思ったよかイケメンさんだったな。」


呟きが閉まるドアの向こうに消えていく。
そして何事もなかったのかのように電車はまた走り始めた。

さっきより少しすきはしたが車内はまだ朝のラッシュ中。

拍子抜けだった行為に小さくため息を吐き出し、俺はまた手をかけているつり革を見上げた。
…すると。



するり。



またしてもさっきと同じなにかの合図的な肘への接触がなされた。


(マジ?二人連続とか珍しいな。)


そんなことを思っていると肘を離れたその指先はそのままツッと二の腕を滑り降りて胸元に向かった。


(こっち?)


それを感覚で追っているとさっきよりも熱いその指先は予想通りの場所にたどり着いて乳首に軽く触れた。
つんつんと突っつくように触れるとそのまま親指と競合してそれを捏ねくり始める。
施す力加減が…なんつーか絶妙?な感じで俺は少しばかしテンションが上がってしまった。


ふ、


短く吐かれた後ろのヤツの吐息が耳元を掠める。
なんとなく気恥ずかしくて俺は視線だけを車窓の外に向けた。


「勃ってきたな。」


思ってたより低めの声に心臓が飛び跳ねる。


「…気のせいだろ?」
「そうか?」


なんで痴漢ヤローとこんな話を…と思っていると



ジー…



制服のズボンの前が開けられ…その中に熱いのが差し入れられた。


「な…図々しい…」
「直に触って欲しいのか?」


低い声に首を振ってこたえる。

小さく笑った痴漢はそのままボクサーパンツのあわせから指先を滑り込ませて勃起している俺のモノの尖端を一撫でした。


「!」


恥ずかしいくらい震えてしまい俺は奥歯を噛み締める。
すると…痴漢ヤローの唇が耳たぶを甘噛みして。


「ここまでされんの初めてなんだろ?…せっかくだからさ…もっとキモチよくしてやるよ…」


言葉の最後は電車の到着アナウンスにかき消され…
到着し開いたドアに向けて俺と痴漢ヤローは並んで歩き出した。

ざわざわとしてる人波を逆に向かいホーム中程にあるトイレに入る。
誰もいないのを確認し一番奥の個室に入り。



カチャン。


鍵をかける。
そして…
ゆっくりと振り返る……と?


ん????


「せ…」


開きかけた唇が痴漢ヤローのに塞がれてしまった。


(え??なんで…?)


啄まれている最中にも巡るのはいくつもの“?”
だって…
この痴漢ヤロー…


「ん、せ、んせ…!」
「びびった?」


唇が解放されてすぐの俺の声にソイツときたらこの場に相応しくないくらいの爽やかな笑みをよこして、またキスをしてきた。
隙間から滑り込んでくる熱い舌。
それにどうこたえていいのかわからない俺をリードするかのように先生は首や顔の角度を変えて吸ってくる。


「ん…」


聞こえてくるのは遥か遠い先からの電車の到着アナウンス、そして…


「悠哉…」


やたらと甘く俺の名を呼ぶ先生の低い声だけ。
そんな妙な空間に身を委ねていると急にズボンの前が楽になりパンツの中に熱い指先が滑り込んできた。
それは完勃ちの裏筋をゆるゆると撫でながら速度を早めていく。
こんなこと…それこそ自分でだってやってるってのに…?


「キモチいいだろ?」


囁かれる言葉に俺はただただ頷くしかできなかった。
ただ、指が動いてるだけなのに?
ただ、熱い掌に軽く握られてるだけなのに?
ただ、それだけなのに。


「い、くッ…!」


なのに俺は先生の巧みな指先テクですぐにイかされてしまった。

初めて他人に身体を触られたのは小学四年の夏だった。


その頃俺は地元から数駅離れた場所にある塾に通っていて、その日はたまたま夏期講習最終日のテストの日だった。
いつもなら仲間達と一緒につるんで塾まで通うのに…その日は本当にたまたま、寝坊をしてしまって一人で電車に乗っていた。
割りと早めの時間からだったので電車の中は通勤途中の会社員やら遊びに行くオニーサン、オネーサン達でごったがえしてまだ体の小さかった俺はその人垣の中で必死に呼吸をしているような状態だった。

ガタガタと電車がゆれる度、左右前後にいる人に押され潰され虫の息。
そんな時にふと、背後に違和感を感じた。


『なにか…?』


尻に当たる固いもの。
それは多分、鞄なんだと思う。
まあ…これだけギュウギュウの車内なんだもん仕方ないよな。

そう、思った瞬間。


『!?』


いきなりズボンの前が握られた。
突然の事に驚き一瞬息が止まる。
それをどうとったのかその手はゆっくりゆっくりと握ってる俺のをまるで台所のスポンジでも泡立てているかのようにリズムをつけながら動き始めた。
何事かと頭がパニックを起こしている間に…段々と、俺のそこが何やらじんわりとした物に包み込まれていて。


『え?え?なに…』
『きもちいいの?』


耳元にかかる熱い息に体がびくりと震える。


『だれ…』
『初めてなのかな?もう出ちゃうと思うからじっとしていなさい?』
『なに言っ…』
『ほら、ほら…出ちゃったね?』


くすくすと笑う声と同時にパンツの中に広がる熱とぬめり。
なにが何だかわからず、でも怖くなった俺は停車し開いたドアから転げるように飛び出しホームに座り込んだ。
目の前を人の波が通りすぎていく。
でも俺はそこに座ったまま顔さえ上げることができずにただ座っていて…
駅員さんに保護されるまでずっとそこから動くことができなかったんだ。




◇◆◇◆◇◆◇





「んで?現在に至る、と?」


目の前で渋い顔をしている爽やか系アンチャンは眉をしかめ腕を組んだ状態で俺をじっと見ながら唸るようにそう言った。
俺はこくりと一度頷き出されてる缶コーヒーに手を伸ばして。


「それからしばらくは怖くて外に出れなかったんだよね。表向きは風邪こじらせて入院ってことになってたんだけど…社会復帰するのに年越しちゃったもん。」


軽く笑った俺の頬にヤツの指先が触れる。


「聞いちまって悪ぃ。んで…あと…」
「あ、俺にチカンしたことなら謝らなくていいよ?ちゃんと罪は償ってもらうから。」


飲んでいたコーヒーを喉に詰まらせたのかヤツ…さっき俺にチカンしてきたウチの担任・樋口広海(ひぐちひろみ)はゲホゲホと盛大にむせながら苦しさに涙目になった先をこっちに向けた。


「てゆーかセンセはなんで俺を狙ったの?」
「狙ったとか人聞き悪ぃな。」
「行き当たりばったりじゃないんでしょ?」


問うた声にしばらく黙ってから先生は俺を見て、苦笑いをして。


「お前こそ年中あんなことされてんだろ?」
「年中ってわけじゃないけど割りと毎度。」
「それを年中って言うんだよ。まー俺も早朝会議ない時はあの時間の電車に乗るんだよ。んで…まー…初めてその場面に出くわした時、お前なんか慣れた感じであしらって、尚且つ相手を車外に放り出したろ?あれから妙に気になってたんだよ。」


言いながらヤツは俺の頭の上にその大きな掌を乗せてゆっくりと撫でて。


「助けるってより…楽しんでる風のお前見て楽しんでたって感じ?」
「教師としてってか人としてサイテーだなアンタ。」


呆れた俺を気にするでもなく先生は緩く笑ってその手を止めてポンポンと軽く叩くと。


「そうかも。」


そう言って喉の奥でくくっと笑った。


「てかさー。」
「ん?」
「俺って今日は欠席になるの?」


言いながらここまでの流れをプレイバック。


電車を降りた俺と先生はそのままトイレの個室でそれなりにそれなりの時間を楽しんだ。
楽しんだ…って言ってもお互いに抜き合いをしたってだけ。
とはいえなかなかにディープな時間ではあった。
何せ散々色々してトイレを出た時にはすでに二時間が過ぎていたのだから。

そっから学校に登校し、教室には寄らず真っ直ぐここ、美術準備室にきた。
途中のコンビニで買ったパンツに履き替え一緒に買った缶コーヒーを飲みながら…の、今現在とゆーことなんだ。


「欠席にはしてねーよ?」
「なんか裏工作したんだ?」
「裏工作とか失礼だな。いやお前が電車の中で気分悪くなったから俺が介抱してここで様子見してるんだよ。」
「…それが裏工作ってんじゃないの?」


言いながら笑ってしまう。
この…樋口先生ってのは美術担当の先生で俺のクラスの担任で美術部の顧問。
新卒の新米の割りには頭が切れてイケメンで面白いってのですでに学校内ではかなりの人気保持者だ。
…ウチは男子校なんだけど。
こんな風な感じだからか俺は今回の事でこの人を責める気にもならず逆に…。


「よし決めた。」
「なんだよ急に。」


ぐっと拳を握る俺を見ながら先生は地味に微妙な顔をする。
きっと俺の吹っ切れた風な顔付きにイヤな予感を感じたんだと思う。


「俺、今日から美術部に入る。」
「は?」
「んでセンセ、俺にチカン行為をしたことを学校にバラされたくなかったら、これからは俺の言うこと聞いてもらうからね。」
「なんだよそれ脅迫か?」
「当たり前でしょ。脅迫だよ。これからセンセは一生俺の奴隷ね。」


そう言って笑う俺をみつめて先生は苦笑いをした。


その次の日から、俺と先生の奇妙な関係が本格的に始まった。


朝は駅で待ち合わせをして一緒に電車に乗り込みそのまま先日の…アレのような感じでワンプレイ。
車内で後処理までをした俺達は電車のドアが開くのと同時に離れ別々のルートで学校に向かって校門でばったり会ったような顔をして昼休みまで過ごす。

昼休み。
弁当を持って小走りに美術準備室に向かいもらった合鍵で中に入るとそこには先生…の顔をした俺の奴隷がそこにいて。


「どうする?」
「そうだな…取りあえずキスして、よ…」


返事を待たずに近付いてきた先生は俺の最後の言葉と一緒に俺の息を飲み込んだ。
柔らかな唇が触れ何度も啄まれる。
ぶっちゃけて言えば。
数いたチカン共に散々エロいことはされたがそれ以外は全部が初めてだ。
そのことを初めてキスした時に知られ、それ以来先生はキスばっかしてくる。
まあ…
それがまたキモチイイんだけど。


「ん…」


離れた唇から舌が抜かれて急に口寂しくなる。
あまりに長くキスされ続けてたからまだ舌には先生の感覚が残ってはいるんだけど。


「飯にするか?まだいいならイかせてやるけど?」
「うん。シてよ…」


椅子に浅く腰掛けた前に彼が屈み俺の両膝を割り開く。
手慣れた手付きでズボンの前を開き少しばかり立ち上がっている俺のを引き出して。


「声は我慢しとけよ?」
「ヘーキ。キモチよくなければ出ないから。」


言葉を最後まで聞かずに彼は俺のを口に含んだ。


「…っく…」


直ぐ様出てしまった声に気を良くしたのか先生は楽しそうに俺のを舐め上げ強く、弱く吸いながら扱きそれを続けていく。
何度も言うけど。
俺は…こーゆーことされるの初めてだから…。


「んっ、ん、出るっ…」


大人な先生のテクになんぞかなうわけもなく毎度瞬殺されてしまうんだ。
体が痙攣を起こしたように震えその度に先生の口の中に吐き出す。
そして最後の一滴まで全てを飲み込んだ彼は涼しい顔付きで立ち上がると。


「んじゃ飯にするか。」


何事もなかったかのよにそう言いながら俺の制服を元の通りに直し始める。
なんてゆーか。


「俺が言うことじゃないかもだけどさ?」
「ん?」
「ヤローのセーシ飲んだ後によく飯とか食う気になるよね?」


目の前に広げられたコンビニ弁当を見て、先生の顔を見る。
そんな俺を不思議そうに見返しながら先生は緩く笑って。


「お前のだからな。」


意味深な台詞を口にして弁当を頬張った。


そんな昼休みを過ごしてから午後の授業に入って放課後。
再び美術準備室に向かった俺はそこには行かずにその隣の美術室に入った。
こーなったことをきっかけに俺は先生が顧問を務めている美術部の一部員としてそこにいることになったんだ。
どうやら先生は俺の昔話を聞いて俺を一人で電車に乗せるのがイヤになった、らしい。
だからの一緒に登校、下校もちろんエロいコト付き。
その提案の真意がわからないまま日が過ぎ…
初めてチカンされてから十日目の昼休みを迎えた。



「マジもやもやする。」



言いながら美術準備室の鍵を開けて中に入る。
いつもならそこにいるはずの先生の姿はなくなんとなくガランとした感じ。
おかしいなと思いつついつもの椅子にどかりと腰掛け机に自分の弁当を置いた。


「ったく…奴隷のくせにご主人さまに断りもなくここにいないとか。」


舌打ちを一つした俺は座ってる椅子をぐるんと回し白い天井を見上げた。

もやもや、する。

始まりがこーだったから仕方ないんだろうけど?
んでももう十日間、休みを抜かして十日も一緒にいるんだぞ?
なのに。
…なのに、まだ、キスとフェラ以外のエロいことはしてない。
それよりなにより。
そーゆーことしてる間一度だって先生が服を脱いだことなんてないんだ。


「いつも俺ばっか。」


脱いでるのも
感じてるのも
声出してるのも
イッてるのも俺だけ。

先生はいつものまんま。
なんにも変わらない。

俺がしてって言うことしてくれてるだけ?
俺を抱きたいとかそういうのってないの?

なんでこんなことを思うのか自分でもわからない。
けど…多分俺は。


「センセー…俺のことどー思ってるのかな?」


一緒にいるようになって色んな話をして先生がどんな人かってのがわかった。
前評判の通りやっぱ先生はいい人でいい男で面白くって頭が切れて。
ようするに、俺は。


「俺は、センセーのこと、好きなんだよ…きっと…」


エロいことから始まったから自信がない。
けど…先生が側にいない時間が長過ぎる。
先生と一緒にいると時間が流れるのが早すぎる。
そう、思うのって。


「こーゆーのを恋っていうんじゃないの?」


自分で言って恥ずかしくなって掌で顔を覆う。
すると…
澄ました耳に極々小さな声が聞こえてきた。
何事かと立ち上がってそっちに目を向けるとそれは美術室に繋がってるドアで。
近付いて引き戸をゆっくりゆっくりと開けた。



「なんであんな奴を入れたんですか?」


“いきどおり”って感じの声に少し驚く。
美術室への引き戸から中を盗み見るとそこには先生と。


「いきなりなんだ?浜野?」


美術部の部長をしてる浜野くんがいた。
浜野くんは細身で物静かな秀才くんって感じの人。
そんな彼がこんなに感情的になってるなんてビックリだ。


「なんであんな…美術のビの字にも興味ないような…あんな奴を入部させたんですか?」


聞きながら。


ん?

もしかして俺のこと?


思って少し考えてみる。
俺が美術部に入るって紹介された時、あ、確かに。
浜野くん突然立ち上がったかと思ったら何も言わずに部室から出ていっちゃったっけ。

苦笑いを浮かべながらポリポリと頭をかく。
美術のビの字。
おっしゃる通り全く興味なんてありません。
俺が興味あるのは先生だけだからね。
そんなことを唱えながら中に視線を戻す。


「部活に来てもなにをするわけでもなくただフラフラしてて何かやらせようにもやる気の欠片もない。」
「ああ…」
「そんな奴の横で一生懸命やってるのが馬鹿馬鹿しいとさえ思います。」
「ああ…うん、そうだな。」


いつもは大人しい浜野くんの剣幕に押されたのか先生は苦笑いを浮かべながら相槌をうってる。
てか、そこはなんかしら俺を庇えよ!と、思いながら拳を握った。


「それに…っ…」


浜野くんの勢いが止まる。
“それに”と言ったきり黙ってしまい先生がそんな彼の顔を覗き込んだ。


「浜野?それに、の続きは?」


いつもと同じトーンだけど語尾が少し強い。
先生が続きを促す時の言い方。
それに気付いたのか浜野くんは短く息を吐いてから。


「彼、高見悠哉はチカン恐喝をしています。」


と、言った。


え?

何それ?

初めて聞いたんだけど!


予想外の発言にビックリして思わず声が出そうになる。
それを飲み込めたのはここから見える先生の顔。
いつもの緩いイケメンはどこへ?な感じのなんつーか…フラットな感じ?
色に例えるなら暗グレイ。


「チカン恐喝?初めて聞くけど?」
「恥ずかしい話なんですけど…俺のいとこが彼にそういうことをしたらしいんです。」
「いとこ?男なんだろ?」
「はい…だからあまり大きな声では言えないんですが。いとこが高見悠哉にチカンをしたらしいんです。」


言われて…
あまりに有りすぎて見当もつかない相手を思ってみる。
どいつ?


「それで?」
「それで本人に詰め寄られて…お金を盗られたと言っていました。」
「…いくら?」
「三万円だそうです。」


三万円?
って金額にピンとくる。


「だから…」
「つーかそれってどーなんだ?」


思い出してる途中で先生がいつもより低い唸るような声を上げる。


「え?」
「いや、高見が仮に三万盗ったとしてだ。それ以前にチカン行為をしたお前のいとこは悪くないのか?」
「え…」
「アイツが男だからそこは罪にならない?でも女だったら立派に性犯罪だろ?」
「…はい…」
「百歩譲って高見が悪いってしても元はお前さんのいとこがやらかしたことが原因だろ?自業自得じゃないのか?」


いつもの先生らしからぬ、な言い方。
別に甘くみてるって訳じゃないけど…まさかあの爽やかイケメンがこんなに怒りを露にしてるなんて。
なにより。
彼の表情がばっちりわかるから思うんだけど…顔が怒ってないのに声だけがめちゃめちゃ怒ってるから尚更怖い。
そんな彼がその表情を崩さないまま懐に手を入れて…引き出したのは、財布で?


「これ。」


開いたそこから彼は札を三枚取り出しそれを浜野くんに…。


「え!?」
「これ、いとこに渡しといて。」
「先生?」
「そんでさ、伝えて?お前、恥ずかしくないの?って。」
「……」


黙ってしまった浜野くんの頭の上に先生が手を伸ばす。
一瞬縮こまってしまった彼の頭に掌を置いた先生は…いつもの優しい顔付きに戻ってて。


「この話はこれでおしまいな?んでさ、浜野さ、高見のこと変に見ないでくれないか?」
「…え…」
「あいつさ、無礼もんだし自由人だし無頓着なんだけどさ?悪いことはしない奴だよ。だからさ、そーゆーのも込みなんだけど…ちゃんとアイツのこと、見てやって欲しいんだ。」


言いたい放題だな。

そう、
思っても…
先生は、ちゃんと俺のこと見ててくれてるんだな。
そう思ったら…なんか物凄く嬉しくて。

…涙が出そうになった。


そんな視界の中で二人の話が終わり解散して。
こっちに近付いてきた先生が美術準備室との境の引き戸を開けた。


盗み見するのにしゃがんでた俺と
そこから戻ってきた先生の視線が合って。


「覗き見とはいい趣味だな。」
「盗み見って言って欲しいな。」


言いながら立ち上がった俺を見て先生は少し笑って。


「お前の口止め料は三万なのか?」


そう言ってまた笑った。
反論しようと口を開いた瞬間。
さっき思い出してたことの続きを思い出した。


「そういえば先月?かな?めっちゃヘッタクソなチカンヤローがいて…ホームにそいつ引き出して“このヘタクソ!”って怒鳴り付けたら慌てて財布取り出して俺に三万渡して逃げたのがいたんだよ。」
「あー…んでその金は?」
「持ってるよ。」


持ってきてた財布から小さな袋を取り出して先生に渡す。
それを受け取った彼は中身を確認して…俺をみて。


「…これ没収な?」
「いいよ。それで…その金で、先生を解放してあげる。」
「三万で?」
「そっ。和解金ってことでいいよ。」


解放ってことは…
もうこうして先生の側にいれなくなるってこと、だな。
そう思っても、さっきの先生が俺を信用してくれてるってことが何よりも嬉しかったから。


「…もう俺とこうして…会うのは…」
「もう俺はお前の奴隷じゃないってことだな?」


“終わりでいいよ”
そう言おうとした唇が先生のに塞がれる。
突然のことにびっくりしてると。


「んじゃこれからは、俺とちゃんとレンアイしてくれっか?」


目の前の爽やか系イケメンは
この上ないくらいに嬉しそうに笑って俺を抱き締めて


「…すきだよ…」


そう言って抱き締めてくる腕に力を込めた。
俺は返事を返さず彼の体に腕を巻き付け力の限り強く強く抱き締め返した。




ENDー
2020.9.20.

(BL)ハジマリ→コイ?

(BL)ハジマリ→コイ?

♂×♂ 他カップルによるBL・MLの恋愛読み物です。 ドキドキワクワク?胸キュンなお話です。 ※強い性的表現はありませんが年齢制限を設けておりますのでこの要素となります。

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