眠りの巨像

眠りの巨像

広場の真ん中に、眠りが横たわっていて、忙しそうな人々も、立ち止まってはそちらを見る。何事もなかったかのように通り過ぎる。かろうじて地球の引力に支えられているだけの、不安。そこに感情がなかったから安心する。眼球さえも零れ落ちそうだった。いや、すでにいくつも零れ落ちていた。あっちを、こっちを、瞼がないと表情すらわからない。眠りの背中にはジッパーがついている、中身はやわらかいんだろう。表面は新品の革製品みたいで、傷はつきそうにもなかった。やがてはきっとそこにあるのが当たり前の存在になるんだろうけれど、いつここに眠りがやってきたのかさっぱり見当がつかない。ところで、僕はいったい何を観察しているんだろう。

眠りの巨像

眠りの巨像

瞼がないと表情すらわからない。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-10

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