コーンスープ

 きゅうっとくるしい。暑くって、つめたいものばっかりのんでいたら、胃がぼろぼろになって、悲鳴をあげ始めた。くちびるの皮をぺりぺり剥がしていると、やめろとするどい声がとんできて、きみに心配をかけることは、とてもおそろしいことだ、と思いだした。きみがこわいのではなく、そんなことをしたぼくのことが、おそろしいのだった。くちびるをなぞる骨ばったひとさしゆびと、つめたいものばっかりのむから、という声と、胃のあたりをそっと撫でるてのひらと、やさしさは、数えだせばきりがなくて、ぼくはまたやってしまったと思うのだった。もう、事足りている。これ以上を、うけとる器はなくて、飽和するやさしさに、窒息しそうになりながら、それでも、全身であびるしあわせは、もうやめられない。ぶっきらぼうなやさしさ。あふれかえるやさしさ。ひとのしあわせで死にたくなるやつは、かってにすればいいけど、そうだな、その攻撃的な感情を、ぶちまけないでほしい。このバランスが、正義だ。あたたかいにおいがして、ほらこれのもう、とコーンスープができあがって、もうそれだけで、こっくり、中身から、あたたまってゆく。

コーンスープ

コーンスープ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-10

CC BY-NC-ND
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