水槽について
水槽について
水生生物がたくさん展示されている、アクアリウムみたいに大きな水槽とか、金魚鉢みたいな、小さな水槽とか。どっちにしろぼくらには居住権すらなくて、ガラス板一枚で隔絶されている。そのガラスをつくったのはどう考えても人間。
星空文庫にもきっとあるであろう、真っ暗な穴(またいつか、東京のどこかで移民になった12歳のはなし。切り取られて思い出になるのは、早ければ早いほどいい。ぼくもそうやって夜をやり過ごしてきたんだよって言ったら、うるせえって噛みつかれた。正直ちょっとびびったけど、彼女はきっと素直ないい子。だけど、ぼくにはもうわけのわからないところにいる。隔絶されてる。している。ばか!)。他人の不幸だけを吸い込む都合のいいやつ。べつに笑ったりしないよ。ただ無表情で芸の肥やしにするだけさ。まあ、自分のフコーでもいいけど? 自殺したら教祖になれる。くずだ、って思うでしょう。でも、そうやって人間が作ってきたものがやがては文化になるんです。ええ、星空文庫という名前の自傷行為だって存在していいというのがぼくの持論ですよ。
水槽のむこうで魚が溺死していても、ぼくら大して気にも留めないよね。もし発見しても、あくまで自分勝手に終わりをかなしむよね。人魚の死体だったら大騒ぎするよね。水槽のむこうにはいつも冒瀆がある。ほら、また酸欠気味の人魚が。このかなしみを忘れないよう、あいつが死んだらフライにして食べてあげよう。
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