ビデオテープについて

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繰り返すたびに、たいせつさがわからなくなることばかりだ。
暦の上ではもう秋だけれど、夏休みすらはじまっていないどこかの街の中学校。ぼくら、違和感を押し殺して寝てるから、みんな寝つきが悪い。頭の中に昨日とか今日とかが蔓延してるから海綿状になる記憶。いしそつうがうまくいかないこととかばっかりをなげくためにきみののうみそはついているんじゃないんだぜ。
巻き戻されていくよ、ぼくとかきみとかのすべてが。神様だけが自己満で眺めている、つまらないロードショー。じいじいと嫌な音をたてて、巻き戻される。そういうのがあるんだと思う。テープが伸びて、ぼくらの記憶があいまいになるけど、そもそもこれは神様の自己満でしかないからぼくらには関係ないところで完結してしまうんだ。だからあの子の母親はきれいなものを見て泣いている。概念。いまのぼくを捨ててしまいたいといつかのぼくがわめくことがあるんだろうか。見えないし、見たくもない。きょうもまたいしそつうがうまくいかなかった。繰り返すたびにどうでもよくなっていく、一日の集大成がぼくの心臓。

ビデオテープについて

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いしそつうがうまくいかないこととかばっかりをなげくためにきみののうみそはついているんじゃないんだぜ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-07

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