八月の無力感について

八月の無力感について

夏休みが楽しいのは案外最初と最後だけだったりする。何に対しても不満を言えるからぼくは急にリセットされたりしない。いま、ここ。それがそんなに嫌なのか? あついって言い続けることで自分の存在を継続させていた。
東京上空で八月がうねっている。ミキサーで攪拌されたようなからだ、がうかんでいた。ぐろてすくでよく似合っているなと思った。たぶん、八月は端役のためにある季節なんだと。ぼくひとりが人類史からシカトされている感覚。べつに、端役に脚光をバンバン浴びせるためじゃないよ。端役をののしってふみつけていきのねをとめるための八月だよ。太陽、の下にみんな住んでいること。人間が生まれてからずっと変わっていない、古臭い現実にぼくはどう対応すればいいんだ。街路樹に上って、ぴょんと飛んで見せたあの少年は現実の類に属していなかったのかもしれない。でも夏だからツッコミを入れるのはやめておいた。何人も、何人も、ぼくの記憶の中でフラッシュバックされていくよ(グロテスク)。Δの間に吐瀉物よろしく溢れかえるね。アイデンティティが、ほどけて、やがては首の皮一枚で地球とつながっている感じを、ほら。

八月の無力感について

八月の無力感について

何人も、何人も、ぼくの記憶の中でフラッシュバックされていくよ(グロテスク)。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-06

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