夜のおと

 ねがおが、こどもみたいだとおもった。ぼくよりも、おとなのひとなのに、あどけない感じが、ちいさなこどものようだった。ねいきは、おだやかで、まつげがいがいと、ながい。真夏の夜は、にぎやかで、むしのなきごえと、夜にだけあらわれる、ひとびとの、ささやきが、カーテンのふくらみにまぎれて、仄暗い寝室に、はいってくる。てんじょうを、ベッドのしたを、観葉植物の葉っぱあたりなんかを、音は、なでるみたいに、すべってゆく。かろやかであり、みみざわりではない。ねむりのさまたげにならないでよかった、とおもいながら、ぼくはひとつ、あくびをする。

夜のおと

夜のおと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-06

CC BY-NC-ND
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