もてたい高1の二ヶ月での決意

僕の名前は前田本木。16の高1だ。中学の時は学校の成績は体育を除いて中ぐらい。体育は下の下。もちろん帰宅部。高校が始まってすぐの体力テストでの50M走は8秒73。鼻は低い。顔はデカイ。性格も陰気臭い。そんな僕だから、恋愛はてんでダメ。彼女ができた事もないし、そもそも女心って奴がさっぱり分からない。何よりルックスがいまいちなのだ。恋愛……。まずはもてたい!そんなわけで下心から、運動音痴の僕はサッカー部に入部したのである。最初は走り込みだ。グランドの外側20周。運動音痴の僕には始めキツくてキツくて仕方がなかった。いつも皆に追い越され、大恥をかいてばかりだった。そんな僕を男子は「のろま」とか何とか言ってからかった。女子はその姿を見てクスクス笑ってる。ドリブルの練習では、ボールを進めるごとにあさっての方向に行ってしまう。シュート練習にいたっては、隣のラグビー部のコワイ奴に当たって、殺されるかと思った。でもそいつは意外と優しい奴で、「馬鹿野郎!」と怒鳴ってきただけだった。そして僕にも気になる人ができた。テニス部の川中恵里だ。とてもかわいいのに清楚な感じがして、ポニーテールで背の低い女の子だ。彼女とは同じC組で、僕が4月早々風邪をひいて学校を休んだ次の日、「大丈夫?」と言ってくれた時から優しい子だなと思っていた。僕は「ありがとう。すっかり良くなったよ」と答えただけだった。惚れやすい僕だから、最初はあまり気にしないように努めていたが、どうしてもその優しい一言が忘れられなくて、今思えばストーカー並みの極端さで好きになってしまった。それまで女の子からそんな優しい言葉をかけられた事は無かったんだ。

5月になり、ようやく4月の少し肌寒い季節から抜けて、一番過ごしやすい季節になった。サッカー部のランニングにも慣れて、ビリではなくなったが、代わりにビリになった奴がいる。長身で痩せ型の、佐々木賢治だ。彼とは最初から仲が良かった。僕は「ささちゃん」彼は「もとちゃん」と呼び合っていた。2人とも共通の趣味を持っていた。テレビゲームだ。特にファイナルパロディウス5の話は語っても尽きる事が無かった。あのモンスターは強かっただとか、あのボスはこうやって攻略すればいいだとか、そんな他愛ない話をするのが、楽しかった。そんなささちゃんに、部活に入りたての頃聞いた、「どうしてサッカー部にはいったの?」ささちゃんは「サッカーってカッコいいから」と言っていた。まぁ僕とそうかわらない理由だなと思った。その正直なところが好感がもてた。その彼は、ランニングでビリになっている。何だか友達として切なくて、「ドンマイ」という言葉をかける事しかできなかった。後でいやみみたいだったなと後悔したが……。ささちゃんは、パスがなかなか上手で、僕の学校の中では中ぐらいに上手かった。僕はというとようやくドリブルだけはサマになってきた。ささちゃんと毎日練習に励んできた成果が一ヶ月にしてようやく少しずつでてきた。授業中は、ばれないように川中の事を見ていた。かわいいなぁ……。または寝ていた。寝ながら僕はいつかひそかに決意していた。「川中恵里に好かれるために勉強も部活も頑張って、いい男になるぞ!」そしてむくっと目を覚まし、夢中で授業を聴き始めた。

Fin

もてたい高1の二ヶ月での決意

もてたい高1の二ヶ月での決意

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-12

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