絹枝の魔性2️⃣

絹枝の魔性 2️⃣


-謀略-

 樽川が殺した男、アキラの周辺がにわかに騒がしくなった。
その頃、この地方で重大な事件が立て続けに発生していた。
 半月前の夜半に、北の国を縦断する国営鉄道のレールがこの地域で破壊され、夜行列車が脱線した。死傷者は一〇〇名に上った。その二日後には、国をあげて戦争を遂行する体制翼参会の幹部で、この地方から選出されている国会議員の某が自宅で焼死して、殺人と断定された。戦争に反対する勢力の仕業と予断した官権の大々的な捜査が始まった。社会主義政党、労働組合、共産主義者の周辺に捜査の手が及んでいた。半島の民族の関与も噂されている。愚連隊グループも探索されていた。
 樽川も聴取を受けたが明白なアリバイがあった。だが、アキラにはなかった。簡単な事情聴取に応じたアキラは言を左右して、ある捜査員から疑念を抱かれていた。二つの事件の時間帯とも、アキラは地主の若い後妻と密会していたのである。真相を隠したままでごまかしきれると、安易に考えていた。そして、再び、あの刑事がアキラの周辺を捜査し始めたのである。その情報が樽川を震撼させた。
 樽川は絹枝とその継母から、それぞれ相応の金をせびって遁走した。
 しかし、その後もアキラの失跡が警察の本格的な捜査の対象になることはなかった。不品行の極まる男の失踪は身内ですら深刻に案じはしなかった。アキラの家は貧しく、後家の母親は熟れた情欲を満たしながら、ある男の僅かな援助を受けていた。妹は遥かに離れた街の場末で、身体で稼いでいた。


-絹枝の殺意-

 二度目の殺人の十日前、店が休みの広い台所に絹枝は一人だった。
 勝手口から流れてくる托鉢の読経に、何故か胸がざわめいた。布施を渡しながら旅の僧に声をかけると、編み笠を上げたその顔はあの樽川だった。一〇年ぶりの再会である。男が衣絵の所在を調べて訪ねてきたと言う。
 この刹那、長い間、女の胎中に鬱血していた禁忌の情欲に一気に火が点いた。辺りに全く人の気配はない。
衣絵は無言で男にしゃぶりついた。さらに何かを言おうとする男の唇を強奪して、懐かしい匂いに犯されながら舌で舌をまさぐる。唇をべろで舐める。噛む。唾をのむ。この一瞬で二人は熔解し一つの情炎にたぎった。女が猛る獣を娑婆に引き出そうとする。男が充血した女陰を獰猛に催促する。その時、使用人の下女の声がした。

 二日後に、男が忍んでいる町外れの空き寺に、衣絵が密かに入り込んだ。廃屋も同然の本堂で、キスももどかしく、女が下半身を脱ぎ払う。
 「そうよ。夕べもやったわよ。仕方ないでしょ、夫婦なんだもの」舌打ちする男の耳を舐めながら、「あの時みたいにして」「あなたの小便で全部流して。あなたのべっちょに作り直して」女が狂おしくせがむ。「小便が出たくなるまでしてあげる」女が男根をしゃぶり尽くす。やがて、背中を見せて太股を大きく開き、突き出した豊かな尻を割った。すっかり崩れた女陰に男が挿入した。二つの性器は瞬く間に深々と結束した。その深奥に男が大量に排尿した。「気持ちいい。これをしたかったの。私もしたくなった。出すわよ」二人の小便が混じりあって、結合の隙間から流れ落ちた。
 塵芥のむしろの上に座り、牡の欲望を剥き出しにした巨根を突き上げる男に股がった女が、鋼鉄の勃起を根元まで呑み込みながら、口を吸い合う。互いに首を絞め合い没我の境地を漂う。男の男根を膣の深奥で締め上げ、乳房を千切れるほどに絞られて、女は余りの淫楽に口内が干上がる。女陰に似た半開きの紅い唇から途切れることなく喘ぐ。余りにも甲高い嬌声を封じるために、女が自らハンカチを押し込んだ。
 長い髪が夜叉に変貌した顔に貼り付いている。喜悦の表情で、男の首をさらに強く絞めた。男も女の首を限界まで絞めながら、痙攣して男根に絡み付き、悶絶する膣に劣情の丈を放出した。
 「時間がないから」女が金を渡しながら、「二日後に県境の温泉宿にいて。目に立つから雲水姿はやめてね」と、言った。


-禁忌の性戯-

 その二日後。温泉宿の部屋に入るや、絹枝は樽川の股間に泣き堕ちた。しゃくりあげて、詫びを繰り返しながら、股間をまさぐる。
 男に促されて裸になった女の陰毛が、すっかり消えていた。赤黒い女陰が剥き出しだ。「丸見えでしょ。夫に剃られたの」身体中のアザを男が問いただすと、「キスマークよ。夕べ夫がつけたの」夫婦の生々しい性交の記録だ。沸騰した嫉妬が樽川の神経を無惨に掻きむしった。絹枝が反転すると尻一面に、尻の合わせ目にまでも、夫の存在が刻印されているのだった。
 「明日は泊まるんだから浮気封じだって」三日月眉の眉間に縦皺を深く刻んだ女が唇を舐めながら、「さんざん抗ったのよ。あなたに会うんだもの」睫毛は濡れ、「でも、あの人が無理矢理するんだもの。縛られたの。セーラー服を着せられて。時間も知らなくなるほど舐められて。嵌められて。気が遠くなってしまったの」朦朧とした大きな瞳をそむけながら、「仕方ないでしょ。夫婦なんだもの」と、熱い息を吐いた。
 樽川の茫然とした視線の先に、女の真っ白い肌が汗を弾いて艶めいている。熟成しきった豊潤な乳房の頂点に、大きな赤黒い乳首が尖っている。二段に張って痙攣する腹と丸い臍。その下に台形に広がる膨大な毛根の剃り痕。地肌は紫だ。剥き出しの桃色の膨れた陰核。丸裸の裂けた紫の陰唇。乳房やふしだらに広げた豊かな太ももの内側にも、付け根にも、おびただしいアザが浮かんでいるのだ。
 絹枝は萎えた男根をまさぐりながら、しっとり湿りを浮かせる張った小鼻をひくひくさせて、追い討ちをかける様に、「あの人が駅まで送ってきて、駅の便所でも嵌められたのよ。嫌だって言ったのに。まるで強姦されたみたいに。まだ精液が入ってるわ」
 「一晩泊まるのにも大騒ぎ。もう、うんざりだわ。老舗の若女将なんていわれても、女中に毛の生えたようなものだし。夜はさんざんにおもちゃにされて」「もう我慢できない。あの時みたいにすっかり自由になりたい」
 男好きのする顔を曇らせながら、「写真まで持たされたのよ。御守りだって。何枚も。性具も。やりたくなったら写真を見てこれでやれって。あんなの焼いてしまうわ」「写真、見たいの?その手提げに入ってるわ」
 「それは看護婦の制服とセーラー服よ。忌々しいからどこかで焼いてしまおうと思って持ってきたの」と、女が追い討ちをかける。男が女の手提げからニ〇枚ほどの写真を取り出して、食い入る。「それは、私のに夫が嵌めてるの。夫が撮ったの。自分の指で剥らしてる、って?だって。逆らうと、ひどく怒るんだもの。やりたくてやってるんじゃないわ」 「私のが?濡れてる、って?随分に意地悪な事を言うのね。馴じんでしまった夫婦の身体だもの、仕方ないでしょ。女の身体は気持ちとは別に反応する時もあるのよ」「それは顔に精液をかけられて。しゃぶらされて」「それは、無理矢理に私の穴に入れてるの。見えないけど前にはバイブを嵌められてるの」「こんな事を毎日させられるのよ。堪らないわ」
 「その写真?」「看護婦の格好をした私が風呂場で縄で縛られて。破れた下穿きのままで小便してるの。じゃあじゃあ出てるてしょ。やっぱり小便出してる夫のにかけてるの」
 「何で看護婦の格好をしてるんだって?」「それ、どうしても聞きたい?ドキドキするから、あなたのを弄りながらならら、話してもいいわ」男が許すと、女は勃起を貪りながら、禁断の痴戯の模様を告白し始めた。 「半年ぐらい前に撮った写真よ。私が看護婦の格好して。皇室の病院の看護婦になるのよ」「そうよ。皇族しか行かない病院の。四〇位のベテランの看護婦になるの。夫は二十歳位の皇太子よ」「そう、皇太子よ。そういう小説があるんだって。夫が真似しようって」「皇太子が陛下と女官がしてるの見てしまったの。皇太子はその女官が好きで。先にしてたの。だから、衝撃で立たなくなってしまったのよ。国の一大事でしょ。何としても直さなきゃならないの」「看護婦は天皇が立たなくなった時も直したの。すごい女なのよ」「看護婦が皇太子のに聴診器当てるのよ」「あなたもやりたくなったの?
天皇になりたいの?」「いいわ。あなたとなら私もやりたい」
 絹枝は裸の上に看護婦の制服を羽織り、帽子を被って、聴診器を持ち、「あなたは天皇よ。なりたくなかったのに天皇にさせられて、急に立たなくなったのよ」「看護婦の私がこうやって。聴診器で。ここの、そうよ、金玉の脈を計るのよ。ふぐりも。それから長さと太さを図るの」「それをカルテに書くのよ。詳しく。毛の本数まで。どう?」
 「あなたの?大きいわ。本当の天皇のはあなたの半分ぐらいよ」「それから診察を始めるの。やってるいろんな写真を天皇に見せるのよ。そっちの、そう、それよ。色々あるでしょ。どれを見たら大きくなるか、診察するのよ」「この写真?みんな夫が集めたの。無理矢理、私に見せるのよ」
 「その写真がいいの?」「三〇位の太った看護婦。白人だわ。四つん這いで、丸出しの尻を持ち上げて。後ろからのし掛かった、真っ黒い大きな犬としているのよ。犬の金たまが入ってて。金髪の陰毛だわ。女の口が人間のをくわえてるの。射精した瞬間よ」「それは三〇位の芸者が中年の男に股がって嵌めてて、肛門には若い男のが入ってて。その男が別の若い芸者のを舐めてるのよ」
「カラーの写真だわ。凄いのよ。四〇位の女と金玉だけが写ってる写真よ。大写しの、桃色の、肉付きのいい女が、真っ黒い金玉から飛び出る、精液を飲んでるの。手で金玉の根本と、ふぐりを揉んでるのよ。眉間に皺寄せて。目をつぶって。美味しそうに。紅い唇から白い精液を垂らして。鼻にも唇にも精液がついてるの。飲んでるのね。大きい金玉からも精液が飛び出てるの。出した瞬間なのね。紫色のぼってりしたおまんこがぱっくり開いて。金玉の形によ。今までいっぱい嵌めてたんだわ。1時間ぐらい嵌めてたのよ。抜いたばかりなのよ。だから閉まらないのね。そこから汁が、とろっと、流れて。太股までよ。おっぱいがおっきい。乳首もおっきい。色は赤紫よ。おっぱいにキスマークがいっぱいついてる。腹にもいっぱい。おまんこの回りに毛がいっぱい生えてて。モジャモジャ。真っ黒なの。臍まで繋がってるの。その脇に黒子が三つあるわ。そこにもキスマークがついてる。おまんこも舐めたのね」
 「厭らしい写真でしょ?こんなに写真見ても、天皇は立たないのよ」「仕方がないから、今度は看護婦が手で治療するのよ。こうして。ほら。こうよ。あなたにしてるみたいに」「天皇になった気分は、どう?」「ゆっくり撫でて。こんな風に。ふぐりもこんな風に。どう?」
 「天皇のは立ったのか、って?まだ立たないわ」
「あなたの天皇はもうすっかり元気よ。硬くて。ほら、筋が浮いてる。剥れて。亀頭がつやつや」「嵌めたいの?」「中に夫の精子が残ってるだろ、って?そうね。やっぱり清めなきゃあね」「小便で?あの時みたいに?私もやりたい」「風呂でやりたいの?」「そうね。今なら誰もいないかも」「いてもいいの?広くて湯気で見えないの?

絹枝の魔性2️⃣

絹枝の魔性2️⃣

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • ミステリー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-05

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