森の家

ここは小さな森の中
風の音と一緒に鼻唄が聞こえてきます。

鼻唄の主はこの子。
うさぎのうーちゃんです。

スキップをしながらお散歩中。

「う~ちゃ~ん」
あれれ?どこからかうーちゃんを呼ぶ声がしますよ。
木の穴からひょっこり顔を出してる子がいます。
「あ!! くるみちゃん!! 」
可愛い呼び声はリスのくるみちゃんでした。

「ねぇ、うーちゃんあっそびましょー!! 」
「うん!! いいよ。なにして遊ぼうか? 」

二人はう~んと首をひねりました。
「そうだわっ!!かくれんぼしましょ、うーちゃん」
「いいよ。……あっ、でも二人じゃつまらないから皆を誘おうよ」
「うん、そうね」

うーちゃんとくるみちゃんは、お友だちを誘ってかくれんぼをすることにしました。

まず誘ったのは土の中に住んでいるもぐらのもぐくん。
「いーいーよー」
と眠たそうに答えました。

次に誘ったのは広場で太鼓の練習をしていたタヌキのポンタくん。
ポンポンっ
と太鼓を元気よく叩いて仲間に入りました。

その次は川で水遊びをしていたくまのくーちゃんと双子のリスのリキくんリクくん。
三人は水をバジャバシャ飛ばしながら大喜びです。

最後に木上で歌の練習をしていたことりのチュンちゃんを誘いました。
チュンちゃんは歌うような声で
「もちろ~ん。遊ぶわ~」
とパタパタ羽を広げて降りてきました。

さぁ、お友だちも誘ったしいよいよかくれんぼの始まりです。

「ジャーンケーンポン!! 」

見事に一発で勝負がつきました。
鬼はリキくんです。

一斉にみんなは散り散りになりました。

「いーち、にー、さーん……」

「もーいーかい!? 」

「もーいーよ!! 」

さぁ、リキくんは皆をみつけられるでしょうか?

リキくんはまず、木を見上げました。
「あっ!! ふさふさのしっぽが2つ!! リクとくるみちゃんみーつけた!! 」

「みつかっちゃったわぁ」
残念そうにくるみちゃんとリクくんが出てきました。

今度はしげみを注意深くみると、黄色のくちばしがのぞいています。
「ふふふ。ちゅんちゃんみーつけたっ」

「あらららら~。見つかった~わ」
歌いながらチュンちゃんが出てきました。

今度は岩をみると、あれれれれ。
1つだけ茶色くてふさふさした岩があります。
「あーー!!くーちゃん岩にばけてる!! 」

「見つかったかぁ!! 」
頭をポリポリかきながらくーちゃんが振り返りました。

おや、広場の木の横に小さなこぶができています。
「やった!!もぐくんも見つけたぞ!! 」

「あれー、見つかんないと思ったのにー」
もぐくんは欠伸をしながら地面から顔を出しました。

今度は川に行きました。
すると、ぷかーんと太鼓が浮いています。
「あー!!ポンタのお腹だ!! 」

「見つかったかぁ」ポンッ
軽くお腹を叩いて、川から上がってきました。

さぁ、のこるはうーちゃんです。
注意深く見ても見つかりません。
そこでみんなで探すことにしました。
「おーい!!うーちゃんどこー? 」
「うーちゃんだどこにいるのよ! 」

「どーこ!? 」ポンッ

みんなが探していると深いしげみの奥からうーちゃんの声が聞こえてきました。

「こっちだよー!! ねぇーこっちにきて!! 」

声のするほうへみんなでいくと
そこには綺麗な花壇がある大きな家がありました。
「だらか~すんでるのかしら~。」
チュンちゃんが家の周りをくるくるまわっています。

「暗くてわかんないね」
リキくんとリクくんが遠目から窓を覗き同時に答えました。

「ねぇ!!じゃんけんで負けた人がみにいきましょうよ」
くるみちゃんが声を弾ませていいました。

「ジャーンケーンポン!! 」

あらあらうーちゃんが、負けてしまいました。
「ぼくかぁ」
うーちゃんは恐々近づいていきました。
「うーちゃん。どーお?」
もぐくんがゆっくりききます。

「窓からじゃ暗くてわかんない。扉を開けてみるね」

うーちゃんがドアに手を伸ばしたその瞬間、みんなの後ろから声がしました。
うーちゃんはびっくりしてその場にしゃがみこみました。
振り返ってみると、物知りなくまのおじいちゃんのひぐじぃでした。
「ほほっ。驚かしてすまぬな。何をしとったんじゃ? 」
「誰がすんでるか、確かめてたのよ」

「おや、くるみちゃん。そーだったのか。ここはのぉ、今は誰も住んでおらんよ」

「今は? 」ポンッ

ひぐじぃは空を見上げながらこの家のことを教えてくれました。
「ここはの。わしらの怪我を治してくれたりする優しい人間がすんどったんじゃ。だがのぉ。10年前、わしらの仲間が猟師にうたれそうになったとき身をていして守ってくれたんじゃよ。……それいらいここはずっと空き家なんじゃ。あの人がいた頃は昔はよく集まっていたんじゃがの」
ひぐじぃの目には涙がたまっていました。

「ひぐじぃ。ごめんなさい、こんなこと聞いて」
うーちゃんはひぐじぃの涙に驚いて謝りました。
それにつられてみんなも頭を下げました。

「なぁに、気にすることわないんじゃ。ちょっと想い出にふけってしまっての」

「ねぇ~ひぐじぃ~。この花壇の花は誰もすんでないのに~なんで綺麗にさいてるの~? 」

「あぁ、それはわしが感謝の気持ちを込めて毎日手入れをしてるからじゃよ」



ずっと真剣な顔で聞いていたくるみちゃんが言いました。
「ねぇ、私いいことかんがえたの」


みんなはくるみちゃんの顔をじっとみつめました。

「あのね。みんなでこの家を綺麗にしてみんなの家にしましょうよ。また、だれもが気軽に集まれるそんな家に。その人のことを忘れないように」

「わぁ。それいいね!! 」
くーちゃんがジャンプをしながら喜びました。
「ちょーと、じゃんぷはー、やめてくれー、響くんだよー。」
もぐくんは顔をしかめました。

「あ、家をきれーに、するのにはー、さんせいだよー」


ということで、みんなで家を綺麗にすることにしました。

床を拭いて
窓を磨いて
埃をとって

チュンちゃんが唄って、ポンタがリズムをきざみます。

みんなで協力したのであっという間に綺麗になりました。
「おわーたっーー! 」
みんなの喜ぶ声が綺麗になった家からもれだしました。

「さぁ、みんな外に一度でましょう」

みんなが外に出るとうーちゃんがドアに釘を打ち込みました。

「さぁ、あとはこれをかけるだけ」
うーちゃんは、ひぐじぃに『森の家』とかかれた看板を手渡しました。

ひぐじぃは涙をぬぐいながらその、看板をかけました。

みんな一斉に拍手をして叫びました。
「『森の家』の完成だ!! 」



そしてこの家は、動物たちと優しい人間の想い出の家となりました。

きっと、どこかにある小さな森にいってみると森の家があるかもしれません。
覗いてみると、素敵な気持ちになれるかもしれませんよ。

森の家

森の家

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted