ニワトリの歌

ごとうやゆうき

白髪のおじいさんが年賀状を書いていた。

 百枚目になった時、ニワトリの鳴き声が聞こえて来た。

「おや、もう朝かの」

 分厚い眼鏡をはずして、目をこすりこすりカーテンを開けた。

 外は星が輝く夜空が続いている。

「あれ、気のせいかな」

 カーテンを閉めて、腰をトントン叩いて年賀状の続きを書き始めた時、またコケコッコ―と鳴き声が聞こえてきた。

「ふむ、ニワトリが時間を間違えたかな」
 鳩時計を見上げてると深夜零時。

 指をさすってから、ペンを握り直し年賀状と向かい合う。

 スラスラスラッとペンを走らせ百枚目の最後の〇を書いた瞬間、けたたましいくコケコケコケッと鳴き声が聞こえてきた。

「耳が可笑しくなったかな」

 両耳を叩いてから、書きあがった年賀状をそろえたら、鳥の羽根がひらひら落ちた。

 目を疑い年賀状を振ったり、下からえ覗いたりしたが羽根は一枚も落ちない。

 おじいさんは奇妙な出来事に、首をかしげた。

「はて、いったいどうしたことだろう」

 おじいさんがぶさいくなニワトリを見つめて、愛しそうに撫でると、またコケと鳴き声が聞こえてきた。
 一枚一枚手書きで書いた年賀状を机の上に置き見つめ合った。

 おじいさんは年賀状と暫く見つめ合った後、先ほどの様に優しく撫でた。すると撫でたニワトリが嬉しそうにコケと歌いながら年賀状から飛び出してきた。

 続くように達筆で想いがこもった文字たちが行進して溢れ出て来た。

 おじいさんはびっくりしてのけぞった。

 ニワトリは次から次へと溢れ出れ来る。軽快な歌を歌いながら。

 出てくるたび、部屋が黄色い明りで眩しく光輝いていく。

 ニワトリたちの歌はたまに音を外すが、優しくて温かいメロディーだった。

 おじいさんはいつの間にか、恐怖心なんか吹っ飛んで、ニワトリと一緒に音痴で優しい歌を歌っていた。

 文字たちはおじいさんを取り囲み、鳥のマーチを楽しめるように冬の寒さから守ってくれていた。 
 毎晩独りきり、こたつに入って年賀状を書いていたから、とても寂しくなっていたおじいさん、今日は何だか心も体もホカホカ。

 ニワトリと歌っていると、鳩時計の鳴る音が部屋に響いた。

 そのとたん、ニワトリたちは羽をばたつかせ、文字を一列になれべた。

 文字が一列に並ぶとこれまた下手くそな、行進曲を歌いながら年賀状の中に入っていった。

 すっと最後の一羽が年賀状に入っていくと、部屋が暗くなった。

 おじいさんがニワトリが吸い込まれていった年賀状をのぞき込むと、再びニワトリが出てきてお辞儀をした。

「丁寧に一枚一枚書いてくれてありがとうございます。わたくしたち一同、大変喜んでおります。良いお年をお迎えください。」

 そう言うと、百枚目に描いた場所へ戻って行った。

 おじいさんはニワトリが話せること、歌っていたのが、自分の描いたニワトリたちだったことに驚き喜び、年賀状にほおずりをした。

 おじいさんはほおずりをしたまま、疲れてそのまま眠ってしまった。

 朝がきて、鳩時計の鳴る音でおじいさんは目が覚めた。

 抱きしめている年賀状を見た。

「あれは、夢だったのかな。夢でもいい夢だったなぁ」

 ニコニコしながら年賀状を撫でた。

 立ち上がろうと床に手をついた時だった、フサッと手に触れた物があった。

 羽根だ。間違いない。ニワトリの羽根が、数枚床に落ちている。

「夢じゃなかったんだ。わざわざ、お礼を言いに来てくれたんだな。ありがとう」
 おじいさんは嬉しく、羽根を拾い集め涙を流した。

 昼頃、おじいさんはおじいさんの気持ちと素敵なニワトリたちをポストに投函しに行った。

「今度は、私の友人たちを幸せにしてください」

 おじいさんはポストに向かって、手を合わせた。

 おじいさんは来年も年賀状を書こうと決めていた。

 ニワトリたちが残していった羽根で出来た万年筆を使って。

ニワトリの歌

ニワトリの歌

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-08-04

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