煙について
煙について
どんなにおしゃれな高層マンションだって、もっと高い建物から見下ろせば拍子抜けするくらいおしゃれじゃない上面を見せていてさ、そういうところが建築らしいんだけど、それを建築家に言うのは、ちょっと気が引ける。意外と高いところまでアカトンボは飛んでくるんだな、まだまだ夏なのに?
なにひとつ趣味がかぶらないぼくらは、常に生と死について話し合っていたよ。でもそれは一番しあわせな中二病のありかただった。遠大、でね。世界が。やがてそれが、ぼくらの血とか肉とかに還元されていくのかな。定説ではそうだけど、はたしてどうかな。星空文庫の中だけで人間関係を完結させられたらバカか煙にはなれるよね。なにひとつ取り柄のないぼくは、たぶん煙の方になるんだろうけど。またどこかで火事の予感。夏なのにマスクをしていて外気を取り込まないから、視界がぼやけてきた。それを起点にして小説を書く。窓のそとに見えたのは歯車みたいにかみ合って回るコロナウイルスじゃなくてただの白いグレーだけだった。血とか肉とかが空に還元されてた。色っていう概念に腹が立った。煙がひとすじ。いったい何が燃やされたんだろう。
煙について