焚火について
焚火について
澄み切った夜には、電波塔の展望台なんかで、男の人がプロポーズをする、なんてことがある。彼は、思考をきゅっとその夜一点につめこんだりするけど、残念なことに地球の裏側では、朝か、昼が展開されているんだよね。ぼくは、その男の人と自分を重ねたくない。
焚火は夜をてらす。
かつて火になげこまれたもの。生ゴミとか、小テストの答案とか、家具とか、ジャンヌダルクとか。薪になるものの存在より、火のほうが目立つからそっちに注目しているよ。燃焼は酸化の早送りで、あくまで火は副産物だった。夜を照らせばただただ歴史がむなしくなって、ぼくらは唯物論を語る。パラパラ漫画をパラパラしないようなことが今目の前でおこっています。あたまが進化しても、きっと人類は夜に火を焚くことをやめないのだろう。きみの365日が揺さぶられて、変わっていくことを喜んだり怖がったりしている、細い縫い針みたいな365日。炭化しているだけの現在がすっごく色鮮やかだ。夜の包容力でぼくの365日を肯定してくれ。変わっていく、かえってこない、なのに巡っていく、ならば一層綺麗なままで。
焚火について