火星、地球、闇の間を埋めるもの。

yumiei


 闇の間を埋めるもの。

  火星と地球には距離がある、地球との空間と距離、人と物の距離、魂と魂の距離。
 もっとあるのは、火星人と地球人の距離だ。そして生活や風習の違いがある。火星の大部分は未開拓。
 凍ったままの水資源と、創造によって世界を想定すること。
 剣、盾、弓、鋼、光、闇、
  それぞれに対応するコロニーと、キメラ守護神(ガーディアン)といわれる、巨大なロボット。
 それらは、英雄同士の対決による、コロニーの芸術性と、文化、文明力の競い合い。いわゆる、まるで競技として確立した、戦争だ。
 しかし、地球人は改めなければいけない。それは戦争ではなく、競争だという考えに。
 討議と闘技との反復の舞台。激しい英雄同士の競い合い。そしてうわさされるエウゲの血との関係。

  少女ミゲルがまだ10歳のときのことである。
  (僕はRP234、僕を拾ってよ)
  まるで、花瓶を逆さにしたような頭の形状。虫(トンボとかカマキリとか)に似た形の瞳。そして長細い首が、繰り返し伸びたり
 縮んだりして、鉄クズの中で必死にもがいている、手はただものをつかむことができる程度で、足は鳥脚で、異様に長い。
 その形状から見てもわかる通り、彼はきっと見世物だった。
  (僕はRPガガッ)
  壊れたロボットを、鉄の山が放りだされるスクラップ工場にみつけて、そこに工場の従業員の姿がなかったことから、手を伸ばした。
 (あっ)
  ロボットの手に触れると、ふとよぎる記憶があった。それはロボットが繰り返し述べている言葉と違った。
 (僕をひろって、僕を助けて、僕をよみがえらせて)
 その言葉と裏腹に、ロボットの体は劣化が激しく、きしんでいた、ミゲルはそれを人間にとっての“筋力のようなものだ”とふと感じ
 られ、奇妙な気持ちになったのだった。そして浮かぶ、ロボットの記憶。
 (何?これ、歓声??大声の子供たち、お祭りかしら?)
 群集が囲むミゲルの通う小学校の校庭ほどの大きさ、そして、それを取り囲みかけ事をする大勢の人々、これはひとむかし
 前に扱われた闘技とその闘技用のロボットだ。とミゲルはすぐにわかった。

 学校の帰り道、ふとたちよったスクラップ工場。通学路の通りの少し、それた場所。あまり治安のよくない裏路地と地下への大階段
 の近く。歓声とその残留した記憶をもとに、まるでテレビドラマや、アニメ、群集がわく中に自分が一人立たされているような気分が
 うずく。
 ――ロボットとロボットの闘技、祭り、それを見守る人間たちの姿。――
 ミゲルはテレビで目撃したことがあった。それは間違いなく、キメラ・ガーディアン同士の闘技、“火星の祭典”の映像に見えた。
 ただ、少しその規模が、アレと違うだけで、人々の関心を呼び、巷を活気づかせたものには変わりがなかった。

  未だ日の目を見ることはない。人の乗っていないロボット同士の対決。英雄は、すでに役割をおえ、今ではただ、広報タレントと
 して火星の象徴となっている。その英雄の影響化、輝かしい娯楽と文化のゆりかごの中でミゲルは育った。
 ロボットたちも、また宗教と、祭りごとをもち、そして、英雄と守護神に憧れて、その生涯を終えたのだ。そしてそれが、デウス
 エクスマキナ、人間に作られたかりそめの条件つきの神の手によるものだと表むき言われているが、実際は、単に、地球と同じく
 一部の人間によって管理されているにすぎない。どのみち、そのデウスエクスマキナを設計したのは、人類。都合のいい統治形態だという事は、火星人もわかっていた。

 だからミゲルは、そのロボットのたどってきた過去をみた。かつてそのロボットは、地球で同じくスクラップとして扱われ、鉄資源に
 なり、火星にすてられ、またリンネを巡ったのだ。

火星、地球、闇の間を埋めるもの。

火星、地球、闇の間を埋めるもの。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-29

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