夏とシチュー

あおい はる

 チョコレートのアイスが、たぶん、ごはんよりも好きで、いつも、それでいいと思うときもあるのだけれど、しろくまは、アイスばかりたべているとからだを冷やすよと言って、スープを、コンソメのや、ミネストローネ、コーンポタージュなんかを、つくってくれる。シチューも。夏に、シチューか、と、うんざりしつつも、しろくまのつくってくれるものは、だいたい、なんでもおいしいので、ぼくは、クーラーのきいた部屋で、シチューを、もそもそとたべる。しろくまは、シチューをつくるためにつかった、まないたや、ほうちょう、おなべなどを、洗いながら、コーヒーをのんでいて、十九時の、テレビにうつるのは、さして興味もない、野球の中継で、でも、しろくまはときどき、洗いものをする手をとめて、テレビをみつめているようだった。野球、好きなのかも。
 いつのまにか、夏は、やってきていて、せみの声が、すこしばかりわずらわしく、海の青さが、ひたすらにまぶしい。しろくまのことを、海よりも深いやさしさをもったひと、といって、きみにはもったいない、と、しみじみとうなずいた、だれかのかおは、もう、おぼえていない。夏休みになったらプールにナンパしに行こうといっていたともだちが、夏休みのまえに彼女ができたと報告してきて、そんなものだよなぁと思いながら、ぼくは、まいにち、チョコレートのアイスをたべようとして、でも、なんだか、おかあさんみたいなしろくまが、まいにち、ぼくの家にやってきて、ごはんをつくってくれる。おもに、スープだけれど、夏は冷たいものばかりのんで、たべて、からだが冷えやすいのだからと、やっぱり、おかあさんみたいなことをいう、世話焼きなしろくまを、でも、ぼくは、じゃけんにできないで、いる。なんせ、しろくまは、やさしいので。たしかに、ぼくには、もったいないくらい、やさしくて、深い。あたたかくて、そのあたたかさが、ちょっとこわい。
 テレビがとつぜん、わっ、ともりあがる。どちらかの選手が、ホームランを打ったらしい。しろくまは、水をじゃあじゃあ流したまま、テレビにくぎづけで、ぼくは、しろくまはいったい、どちらのチームを応援しているのだろうと思う。夕焼けの、赤に染まるまえの、オレンジと、海の、浅いところと、深いところのあいだの、ブルー。おなかのあたりが、ぽかぽかとあたたかい。

夏とシチュー

夏とシチュー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-28

CC BY-NC-ND
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