あの子の葬式

 五月に飾った風鈴 仕舞い忘れた炬燵

 ぼろきれを羽織り 酸欠で死んだ金魚を携えて
 あの大きな煙突の根元まで 自転車を漕ぎ
 遠のくチャイムを背に 淀んだ空気を吸い込んで

 夢見心地の断片 不快な音色のピアノ

 あの子は真っ赤な犬のベロだったし、偽物の心霊写真だった
 浮浪者の手袋だったし、庭先に生えたジャスミンだった

 あの子は壁のシミと友達で、膝の上にはいつも綺麗な花が咲いていた
 サッカーボールを嫌っていて、塗り潰された絵を大事に持っていた

 あの子は長い髪を結い、ニキビだらけの顔を洗い
 細い目をさらに細めて、眉根の皺を深く深く刻み
 いつか燃やされる手紙を綴って

 壊れたモデルガン 河童の噂がある公園

 ユーフォーを見上げた晩の あの子のことを 永遠に笑い者にして
 立ち昇る煙を見上げた僕は あの子のことを 一生の忘れ物にして

 九月に仕舞われる風鈴 押入れに押し込まれた炬燵

 あの子は憶えていてくれるかな

あの子の葬式

あの子の葬式

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-28

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