あきらめについて

あきらめについて

あと数分で夜が終わる、厳密にそれが何時何分何秒なのかを知りたい。夜が、まとわりついて、いくつもの笑顔とか泣き顔とかで構成されていて、黒くて、膨張と収縮、ぼくを除け者にして、流れていく。さよなら。夜が終わると指先から落ちて黒い球になる。人間は知的生命体のはずなのに、まだ地球がただの星であることに気づかないみたいだ。インターネットの向こうは元気ですか。ぼくは、げんき。と、言いかけてやめる。眠い。今日の善行は、まただれかのセッション数に貢献したことです。そうやって目を閉じて、午前三時だからたいていの人がもう寝ている住宅街。空気を溶媒にして、夢がほわほわ溶けていた黒。かすんで見えるものが全部やさしさだったらいいのにね。みんなが知らない夜の果て。せまってくる、まきこまれる、でも眠い、現実が充満しているから窒息の危険性大。比重と密度が限界だったね。もう行かなきゃって彼は言ってたけど、いったいどこに行くつもりなんだろう。今、夜が終わる。いくつもの笑顔とか泣き顔とかがぼくを除け者にして巡ってゆく、ここがほんとうの終末、極限状態、きれいに透き通ったぼくのなみだはうつくしい。

あきらめについて

あきらめについて

夜が終わる。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted