波紋

渡逢 遥

眠っていた冷笑主義が息を吹き返して
誰のことも真っ直ぐ見られなくなってしまった
いつか狂うだろうと予感していたもの、それは
方位磁針や、予感の皮を被った確信だったかもしれない

僕の意思とは無関係に、歯車は事も無げに動き出す
無機質な、非人間的なそのからくりには
何か、残酷な名称が付けられていた気がする
僕の、あるいは僕だった何かの最期は
不意に崖から突き落とされるような、
呆気ない、瞬間的な転落ではなく
徐々に波紋の立たなくなる湖面のような、
自然の摂理に抗えないような、閑かな、緩やかな自死に似ていた

あの湖が、誰かの流した泪で出来ていたなら
歯車の音も気にすることなく、安らかな眠りにつけるような気がした

波紋

波紋

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-27

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