蜂蜜

高松忠史

蜜の味

なんとも云えぬ、芳しい香りが部屋中に広がる。蜜壺の蓋を開けた瞬間、アカシアのような、サクラのような鼻腔をくすぐる芳香で僕は覚醒する。
僕は蜜壺から黄金色の蜜をスプーンですくう。
まるで、溢れ出してきそうな粘度の高い貴重な液体を、僕はパンに垂らす。

パンの端から、とろりと滴れ落ちる蜜を僕は慌てて舐めあげる。
まず舌の先にツンとした酸味を感じると、すぐに豊潤な香りとともに甘く官能をくすぐるテイストが口腔いっぱいに広がる。

昨夜の雨降る中の濃厚で、そして甘美な記憶が脳裏に浮かぶ。
写真の向こう側で微笑む彼女を視界に入れながら、僕は口の周りに付いた蜜を舌で拭う。

honeybee…

胸を膨らませ、情念を膨らませ
待っているよ
僕だけのhoney bee…
帰っておいで、ここに

目くるめく甘美な世界に…

蜂蜜

蜂蜜

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-27

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