夜の鏡面
それでも人生はこの世の創作の中で一番のコメディーなんですよ
静かな夜は、鏡なんです。
私の嫌なところが見えてしまうんです。
嫉妬、怒り、不満……
彼女に罪はありません。しかし、私は彼女に、彼女達に酷く嫉妬を感じてしまうんです。
そんな自分に酷く落胆してしまうんです。
だから夜は鏡なんです。
ラジオを聞く、虫の声を聴く、扇風機の風にあたりながら、眠れない夜は嫌な自分というものに向き合う。
嗚呼なんて卑しい人間なのだろうか、それは私の夜でありながら深い海の底なのだろう。嫉妬というものに私は生かされ、また殺されている。
深い夜にいつも思うのは、後悔と嫉妬と呆れと怒りと不満と焦りと不安と……
負の感情に染まって、それは潔白でも漆黒などでもなく、何でもなれるキャンバスなどでもなく、私は、ただの人間でしかなく、私という人間というものを夜の湖面に映る鏡に、私の顔を映すのだ。
嗚呼、私のなりたかった姿なのだろう、私の棄てた姿なのだろうと
私は、ただ、虚無に居座って、自分という名の喪失感に染まるのだ。
もう諦めろという幻聴に、もう私は降ろされているという幻覚に踊らされ、私は勝手に上った梯子を下りているのだ。
何にもなれる。しかし、何かになった瞬間に、凡庸に憧れるのだ。
いつだって、どんな時だって明日になれば私の持っていない、幻覚を、見えない、存在しない、持ち上げられただけの形のない評価に憧れてしまうのだ。
持っていないから、持つことができない故に、夜空に浮かぶ月をこの掌に収めることを望んでしまうのだ。
私は最低だ、嗚呼最低なのだ。
なのにどうして生きてるのだろう。
無論私は生きていたいのだ。
汚く、それはとても人間という醜悪という存在そのもので
美しくはなく、また闇の中に差し込む一筋の光のような希望に満ち溢れているのとは全くの逆であった。
汚く、そして血のような、誰もが忌み嫌う存在なのである。
愛される資格も無ければ、自愛することなんてできない、そんな中途半端な人間で
益々、何故生に執着しているのかわかる。
私は、人間なのだ。
どんな人間よりも貪欲で、嫉妬深く、他人に理想を求め、矛盾な思想を持ち、恥に後悔し続け、欲望に忠実で、そんな人間が死ぬわけがないのだ。
最低な人間こそ、充分に生き。
善良な人間は、生きるのをやめてしまう。
愛される人間じゃない。もう、私の事は愛さないで
孤独に居させて。
生きる価値の無い私にいつまでも執着する必要なんてないのですから。
静かな夜は、もう一人の私を写す鏡で
そして、私に喪失感を与える時間なのです
夜の鏡面