妄想遊戯【注】

璃玖

  1. 過去のヒト
  2. 花園
  3. 終わりのはじまり
  4. 電脳空間の恋人

過去のヒト

1 <山手線>

「あ」
乗降客でごった返すホームで、彼と再会した。
帰宅ラッシュのターミナル駅
とめどない人の流れに逆らうようにして、彼が僕に近づいてくる。
「…やっぱり、君だった」
遠目からでは確証が無かったのか、僕の目の前にたどり着いた時
彼はそう言って何処か安堵した表情をした。

ああ この人はあの頃と変わらない
その少し情けないような笑顔が、僕は大好きだったのだ。
空白の時間が一瞬にして埋め戻され
ようやく断ち切れたと思った気持ちが
まるでビデオの巻き戻し再生のように自分の内側に去来してきて、
僕は 胸が苦しくなった。
「よく、分かったね」
何気無さを装い答えると、彼はくしゃくしゃと僕の頭を撫でた。
「どんだけ一緒に居たと思ってるの」
「でも、自信無かったんでしょ?」
最初の一言を思い出して、からかうように言ってやると
彼もまた悪戯っぽく笑って応える。
「…まぁね。俺、今裸眼だからさ」
そうだ いつもは眼鏡を掛けていた。銀縁で細身の、インテリっぽいヤツ。

僕だって特段視力が良い訳でもないけど
貴方のこと 何メートル離れたってちゃんと判るよ
貴方がいつもの眼鏡を掛けていなくても
貴方が 僕に気付いてくれなかったとしても

「何、こっちに戻って来たの?」
「ううん。ちょっと用事で二、三泊するだけ」
「そっか」
会話の間に、乗るつもりだった山手線を何本かやり過ごした。
帰る場所が変わっていなければ彼もきっと、同じ電車に乗るハズだけど
「…ココから何処かに行くの?」
「品川にね。友達と待ち合わせてるから」
僕の答えで、彼も気が付いたみたいだ。「‥あ、そう」
幾分か申し訳なさそうに鳴り響く発車メロディー
かぶさるようにして、駅員のアナウンスが続く
秩序なく動き回る人達の喧騒で、何を言っているのかまるで判らない。
すべてが意味の無い音の刃となって、僕らの周囲を渦巻いている。
それらをやり過ごしながら、少し逡巡した様子で彼が
「じゃぁ‥品川まで一緒に行く?」と聞いてきた。

さっきから、彼は疑問符ばかりを僕に投げてくる
とりあえず提案して、僕の意見を聞き出す
お互いに納得する形で次の行動を決める

優しさ と言えば聞こえが良いけど
彼のそれはきっと 僕に『共犯関係』を促しているだけだ

でも僕は、素知らぬふりで彼の提案を受け入れる。
あの頃からずっと 変わらない
そう言う形を保たなければ、僕らの関係はそれほど長く続かなかったハズだ
「‥いいよ」

人混みの中でも、僕の存在に気が付くように
もう少しだけ一緒に居られる時間を作らせるように
彼を仕向けているのは 僕だから

彼はもう一度安堵したように微笑み
その僕の答えを待っていたかのように、次の電車が滑り込んできた。

満員と言う訳でもないけれど、それなりに混雑する車両に乗り込んだ。
ホームの喧騒よりは多少収まるものの、車内もいろいろな音にまみれていた。
「…元気だった?」
相変わらず疑問符をつけて、彼は僕に話しかける。
ドアと彼に挟まれるようなポジションで、僕は立っている。
何と言うか‥逃げ場が無い。
「ん」流れる外の景色を眺めながら答えた。
「新しい場所はどう?もう慣れた?
…って言っても、随分経つんだっけ」
「…三年になるよ」
僕らが別れた後の時間が、そのまま
僕が新天地で生活してきた時間だった。

彼と会わなくなって、もう三年
…いや まだ三年か
「そっか‥結構あっという間に経っちゃうもんだね。歳も取る訳かぁ」
定型文のような台詞を聞いて、思わず吹き出してしまう。
「なにそれ、オッサンかよ」
「そりゃもう、立派なオッサンですよ」

今の僕らの姿って 周りにはどう映るのかな
会社の元同僚とか、久しぶりに再会した友人とか言うあたりかな
少なくとも、一見しただけで 元恋人同士には見えないだろう

そう考えて彼の肩越しに車内を眺めてみたが、
各々が自分の手元や外の景色を見ていたり、イヤホンやヘッドホンで他者との隔絶を図っているから
特に誰とも視線がぶつかる事は無かった。
自分が考えている程 他人は自分を見ちゃいない。

僕にとっての彼らがそうであるように
彼らにとっての僕らだって、背景の一つに過ぎない

と。
「…!」
車両が揺れて、ふっと触れたのをきっかけに
彼は僕の手を握った。反射的に 僕はピクリと肩を震わせた。
振り返る事が躊躇われ、トンネルに入ったタイミングでドアのガラスに映る彼と目を合わせる。
何処か、挑むような試すような視線を送って来ていた。
ほんの数秒と持たず、僕は目をそらした。

僕が逃げないと確信した上で、ゆっくりと指を絡めてくる。
思わせぶりに、ねっとりと官能的な彼の指の動きは
繋がった手を伝わって 言いようのない快感を僕にもたらした。

何も言わない僕に、彼が少し顔を近づけて囁く。
「…嫌だったら、ほどいて」
言葉と共に僕の耳にかかる彼の吐息が、僕の全身をくすぐった。
僕の内側が 激しく反応する。顔も体も熱い。
「…」幸いと言うべきか、ドア前のエリアは割と死角になる。混雑していれば尚更だ。
しかも彼が車内の乗客に背を向ける形で、僕の方を向いている。
繋いだ手も、僕自身も 彼の体ですっぽりと隠されていた。

僕は何も答えず、抗わず、されるがまま 手を繋いで外の景色を見ていた。
そこから流れてくる彼の体温に身を委ね 酔いしれていた。
たったこれだけの事なのに
気を許せば、膝から崩れ落ちそうだ

目頭が熱い。
断ち切ったハズなのに まだまだこんなにも、僕は彼を想うのか
「…ごめんね」
いろんな思惑を含んで、彼は一言だけ口にした。

その一言がどれだけの意味を持っているのか
僕には 痛いほどよく解る。

ヤバい
このままでは、泣いてしまう
でももう、この声や手の温もりに 甘えてしまう訳にはいかない。

「…もう、いいよ」
品川に着くまでにやっと、それだけ言えた。

「あー、やっぱり金曜の夜は混むねぇ」
押し出されるようにホームに降り立って、彼はわざとらしく伸びをする。
「まだまだこれからだと思うけど?」
僕もわざとらしく何気なさを装って言った。
そうだねぇ、と彼も笑った。

「じゃぁ、元気でね」
改めて向き直り、けれど彼は僕と目を合わせないようにして
車内で繋いだ方とは逆の手を差し出してきた。
これは、握手だ

「うん、貴方も」
さっきまでとはまるで違う、極めて儀礼的な挨拶
これならば、周囲も僕らをただの友人だと思って疑わないだろう。
ありふれた風景の一かけらに過ぎない
僕らの中に、どれだけ濃密な感情が押し込められているとしても
それに気づく事はないだろう。

相変わらず、貴方は優しくてズルい人だ
そして、僕はもっとズルい

それぞれが別な方向へ足を向けて歩き出し、振り返る事もしなかった。
僕らを降ろした山手線が、また慌ただしく走り出す。


2 <北風>

元職場の仲間内で、今でも連絡を取っていた人たちへ陣中見舞いしようと
会社の近くまでやってきた。

職業柄、今が超のつく繁忙期で 皆時間が取れないが故の苦肉の策。
本当なら、職場のあるこの地に降り立つことさえ遠慮したかったけど
僕は僕で他の時期が忙しく、自由がきくのが今しか無いのだ。

「あれ」
背中越しに声を掛けられ、僕は懸念していた事態にぶち当たる事になった。
「…あ、お久しぶりです」
制服姿の彼が、コンビニの袋を下げて立っていた。

出来れば‥と言うより 絶対に会いたくなかった相手だった。
きっと、今の僕の笑顔はさぞかし出来の悪いものになっているだろう。
「こんな所で何やってんの?」
相変わらず、気遣いに欠けるような直球の言葉。
「…あ、えと、近くにちょっと用事があって」
明らかなごまかしの台詞を口にする。
彼がこんな見え透いた嘘に流されない事は、充分承知しているのだが。
「ふうん‥」
「主任は、今お昼ですか」案の定、彼の探るような視線に絡まれながら
僕は極めて当たり障りない事を聞いた。「うん、そう」彼もまた、素っ気なく答える。
「後な、俺もう“主任”じゃねぇよ」
「‥あ」
「君が辞めてだいぶ経つだろ?俺も一応、偉くなってる訳よ」
「…ああ」…ですよね。そりゃそうだ。

貴方はホントに優秀な人だった
現場の叩き上げなのに、出世欲も半端なくて
渡世術にも長けていた人だった

会わなくなって何年になるのか 数える気も無いけれど
その空白の時間の中で、そりゃ一つや二つ偉くもなっているでしょう

ああ もう
何だってこのタイミングで、僕はココに来てしまったのだろう
激しく後悔した。

「社に寄ってけば?
どうせ、誰かに会いに来たんだろ?」
二人の間に、北風以上に冷たい風が吹きすさぶ。
「え‥」
さて、何と答えるべきなのか
改めて図星をつかれた事で、僕は動揺した。
「…いえ、もう部外者ですし」ようやく無難な答えを引っ張り出し
「それに、まだ先があるんで」ズルズルと言い訳めいた言葉を並べる。
そんな僕に、彼は相変わらず冷たい視線を向けていた。
「ふうん、そう。残念だな
みんな、君に会いたがってるぜ」

大嫌いだ
あの頃だって、僕は貴方のそういう所が大嫌いだったんだ
貴方に追いつきたくて 貴方と同じ目線に立ちたくて
懸命に答えを見つける僕に
いつだって、その興味無さそうな反応しか返してこない
悔しくて 悔しくてたまらなかった
なのに

じりじりと追い詰められるような感覚と
蔑まれたような視線に、何処かで酔っている自分が居る

大嫌いだけど、たまらなく愛おしい
あの頃の彼は 僕にとってそんな存在だったのだ。
…いや、
もしかすると 今も変わらない

「じゃぁ、俺行くよ」
コンビニ袋をガサリと上げて、彼は言った。
「あ、はい」ハッとして僕も応じる。
何があった訳でも無い。
何の含みもなければ、元上司と部下なんて
この程度の会話で済まされるハズだ。極めてフツウの、日常の一コマなんだ。

二人で居ても、もう『それ以上の』言葉は掛けられない。
あの頃の僕たちが夢か幻だったのかと思わせるような
そう 思いたいような態度

こんな所で空回りしているのは、多分僕の方だけなんだ

けれど
「…またね」
その彼の最後の言葉は、多分何気無いものだったのだろうけど
少しだけ、僕に期待させるような そんな含みすら感じられる
とても甘ったるい響きをしていた。

北風に背中を押されるように、職場に戻っていく彼の背中を見送りながら
僕はまだ 夢の中を彷徨っている。



3 <妥協点>

久しぶりに渋谷に行ける時間が出来て、思わず昔の仲間に連絡をした。
集まれる奴らで飲みに行こうと言う話になった。
俺も、二つ返事で乗っかった

そこに 一つだけ別の期待をしていた事も
まぁ 事実ではあるけど

「いやぁ、今日はホント良かったなぁ!」
「お前が連絡くれなかったら、みんなで集まれなかったもんなー」
急な話だったにも関わらず、俺が会いたかった五人のメンバーは誰も欠ける事なく駆け付けてくれた。
遠く離れた場所で、こいつらとは別の生活をしている俺にとって、こういう仲間が居てくれる事は何よりも有難い。

そして、彼もまた

毎夜つるんでいたあの頃と違うのは、みんなそれぞれが“大人”になって
明日の仕事のことや家族のことなどを考えて
早々に引き上げ時を見極められるようになった事だ。


最後の一人を東横線の改札まで見送って、俺たちは二人になった。
「…さて」
見送った背中が見えなくなった頃、彼の低い声が俺を捉えた。
条件反射のように、背筋を伸ばして彼を見た。
「…俺たちは、どうする?」
そう言った彼の口元が、不敵な笑みを作っていた。

大体の予想がついた
‥と言うより、期待していたと言う方が正しい。
けど、俺は敢えてお互いの逃げ道を作ろうとする。
「…明日も早いんじゃないんすか?」
ヘラヘラと笑う俺を一瞥し、彼はフン、と鼻で笑う。
「関係無いだろ」

いつもそうだった
他の仲間たち以上に、この人はいろんな意味で肝が据わっている。
明日は明日 とでも言うように、街に腰を据えて遊んでいた。

それは、俺との時間も


ハチ公前広場に出ると、一気に人でごった返す。
夜の時間帯なんてひどいもんで、ベロベロに酔っぱらってやたらとテンションの高い人種がそこかしこで大騒ぎしている。
外に据えられた喫煙スペースの境界が曖昧になって、随分と離れた場所でまで煙が上がっているのを眺め
俺は心底、あの場所から動けないハチ公君に同情した。

などとぼんやり、ヒト(ではないが)の事を心配してる場合じゃない。
JR乗り口の前を通り過ぎ、彼の足は再び渋谷の街中へ向かっている。
「…ま、待ってくださいよ」
「ん?」
「帰らないんですか?」
俺の質問を、彼はそのまま返してきた。
「…帰りたい?」
俺はグッと、言葉に詰まる。
コレは 彼の常套手段だ。

「……そういう訳じゃなくて…」
俺だって、久しぶりに再会出来る事が解って 期待していた。
そりゃ仕方ないじゃないか
あの時、俺は不本意な別れ方で
言ってみれば 彼にフラれたのだ

「したいんでしょ?」「へ?」
何てド直球な。思わず速攻で反応してしまった。
「俺と、したかったんでしょ」
彼の二度目の言葉は、疑問形ではなかった。

きっと 最初にラインが回って来たあたりから
彼は解っていたハズだ。

ヤツが帰って来るから、みんなで飲もう
俺発案じゃなくても 俺自身が声を掛けたのでなくても
今日の話は、俺が彼に会う為だって
彼は 解っていたハズだ

「……でも
彼女さん、待ってるんでしょ」

雑踏の音にかき消されるくらいの声しか出なかった。
我ながら、何とも情けない。
彼は瞬間的に動きを止め、俺を見据えた。
その後で、ふっと 何とも言えない柔らかな表情を作った。
これから聞かされる言葉が、抗えない刃であることを暗に示すような
嵐の前の静けさみたいな、そんな顔。

「結婚したよ」
…ほら、やっぱり。
けれど、不思議と俺の心は痛まなかった。
むしろすんなりと受け入れ、その言葉を聞いた事によって
俺の中の澱みが払しょくされたような気がした。
「…ああ、そっかぁ
それはおめでとうございます、遅ればせながら」
勿論、コレは素直な気持ちから出た言葉だ。
「まだ式上げてないから、報告しそびれてた。ごめんな」
「やだな、謝んないでくださいよ」

さっきの宴席でも、誰からもそれらしい話は聞かなかった。
もしかしたら、あの場所では俺を含めて誰も彼から伝えられていなかったのかも知れない。
あの悪友達に俺と彼の関係は明らかにしていないし、恐らく気付かれてもいない。
だから、俺だけに秘密にする必然性が無いのだ。

俺と彼と、その周囲の時間がそれだけ経過してしまったと言う事か。
それ以上は何の感情も湧かなかった。

いつの間にか彼に強く掴まれていた腕をゆっくりと解き、
俺は 悪戯っぽく一つの提案をする。
「妥協案、です」
「…ん?」
予想外の俺の言葉に、彼は単純に 怪訝な顔をした。
「俺は、したい。貴方は、奥さんの元に帰らなきゃいけない。
じゃぁココで、お互いの妥協点で手を打ちましょう」
とりあえず、俺が期待してたって事は認める事にした。
「…何?」
彼が興味深そうに、俺の次の言葉を待っている。

この人は 俺のこういう所が
今でもきっと好きなんだろう

「キス一回。それで手を打ちます」
人差し指を立てて言い切る俺をまじまじと見て、その後で彼は声を上げて笑った。
「お前、やっぱり面白いなぁ」

元々、彼と俺はいわゆるセフレ的な関係だ
当時から、彼女の存在は知らされていたし
いずれ結婚するだろうと言う事も聞かされていた。
それでもいい と言ったのは、俺だ

ただ、その時は彼の中で 
結婚に対する迷いのようなものが生じていたのも知っている。

俺は、彼のその隙間に無理矢理入り込んで関係を迫った。
彼もまた、特に嫌悪や否定をする事なく 俺を受け入れた。
今思えば当時の彼は、相当に投げやりだったのだろう。

飲みに行ったり遊びに行ったりと言うものから、上司との接待的なものまで
誰の誘いにも、断る姿を見た事が無かった。

それは結婚を考える相手に対しても
俺との関係に対しても
心此処にあらず、だったのかも知れない。

だからこそ、俺の誘いも受け入れたのだろう。

「タクシー拾ってやろうか?」
道玄坂を駅に向かって下りながら、彼が言う。
「いいっすよ。まだ電車あるし」

その何気無い一言や仕草からにじみ出る『兄貴肌』とも言える
彼の性質が本当に好きで
ずっと この人みたいになりたいと憧れてきた。

「‥遠慮すんなよ。久々にはしゃいで疲れただろ」
俺の頭にポンと手を置いて、逆の手で車を停めた。

流れるような振る舞いは、彼がそれだけこの街に馴らされている事の現れだろう。
抗いもせず、ただあるままに置かれた状況に順応して
やがて、その状況を支配して楽しんでしまうのだ。

それが 彼の生き方なんだろうと思う
俺とは違う生き方だ

「じゃぁな。こっちに帰ってきたら、また遊ぼうぜ」
しれっと言ってしまえるのが、彼だ。
けれど、俺だってそこは負けない。
「有難うございました。奥さんに宜しく」
バーカ、と笑ってもう一度 彼は俺の頭を撫でてくれた。

会わなかった間に、俺も少しは“大人”になれたのかな‥

タクシーが静かに、終わらない夜の街を出た。

花園

<1>
彼女はまた、悪い男に騙された。
そうして独り、また私の元へやって来る。

「また、捨てられちゃった」なんて言って、両目を潤ませながら笑う。
私の肩は、どれくらい彼女の涙を染み込ませているだろう。
いつも決まって、左肩。
私の部屋の、玄関の扉を開けた途端
そこで力尽きるように、彼女は私にしなだれる。
お気に入りの香水の甘いにおいが、私の鼻孔をくすぐってくる。
甘ったるい毒牙が、この時ばかりは私めがけて襲ってくるのだ。

「もう、嫌」
そう言って私を見つめる彼女の瞳は、思わせぶりに揺れる。
「やっぱり、私が頼れるのは貴女だけよ」
そう言って寄り添ってくる彼女の指が、明らかに私を誘っている。

考えてみれば、つい半年くらい前にも、こうやって彼女は私を頼ってきた。
けれど、ほんの二週間も経たないうちに 凝りもせず新しい男を見繕っていた。
そうやって、また 私の部屋を出て行ったのだ。
甘ったるいにおいだけを残して

その度にうんざりする。
もう、関わるまいと思っているのに
少し時間が経てば寂しくなって、また
彼女がふらりと帰ってきてくれるのを 待っているのだ。


彼女はそうやって
ひらひらと迷い、惑い、舞いながら
次から次へと花の蜜を求める蝶のようで

私は、彼女に気づいて欲しくて花弁を大きく広げる
彼女に群がってくる男たちと大して変わらない。
彼女に対して抱く想いは
あの獣のような男たちと何ら変わらない。
彼女がこの部屋に戻ってくる度に、今度こそ
甘いにおいに惑わされてしまおうと考えているけれど

抱きしめようとして彼女へ伸ばしかけた手は空を切り、
今日もやっぱり、あと一歩のところで尻込みしてしまう。

いっそのこと
私が男だったら、良かったのに。


泣きつかれた彼女は、私のベッドの中で眠っている。
その寝顔は、あどけない少女のようでもあり
妖艶な娼婦のようでもあり

きっと彼女は、私が
彼女を捨てていったあの野蛮な男たちと同じ欲望を抱いて
彼女を見つめているなんて 夢にも思っていないだろう。



「ありがとう。貴女が居てくれたおかげよ」
そう言い残して、彼女はまた この部屋を出て行く。
私はただ、人の好さそうな笑顔を浮かべて彼女を送り出す。新しい男の元へ。

彼女の背中に、小さく言葉を投げかけて

「行ってらっしゃい」

また、ボロボロになって 私の元へ帰っておいで。


―さて、
今度の相手は…三か月くらいかな。


<2>

女どもの言う『好き』って言葉はいやにお手軽で
何でもかんでも、とりあえず『好き』って言っておけばいいみたいな
そんな雰囲気さえ感じさせる。

特にこの〝花園〟に群れなす娘たちは、誰かがいいと言えば一斉に同調し
右へならえでその言葉を投げかけてくる。

「―先輩、カッコイイ!」
「―先輩、大好き!!」
この黄色い声援は結局のところ、私に向けられたものと言うより
〝花園〟には居ない『王子様』の代替品に向けられたものだ

言わば、抑圧されたストレスのはけ口に過ぎない。

「―先輩、好きです!」

やめてくれ、虫唾が走る。
私は、君たちの性欲処理の道具じゃないんだ。



群れの中にただ一人、彼女だけは私に何の関心も持っていない。
〝花園〟中が私の一挙手一投足に熱を上げる中で、彼女だけが
私に見向きもしなかった。

「―そりゃ、貴女はスゴイと思うけど。私たちと変わらない、女子生徒の一人でしょ?」
私は何故か、その物言いが気に食わなかった。
「でもとりあえず、お姫様たちには 
この閉鎖された場所でいつも会える『王子様』が必要なんだよ。
たまたま、私がその条件に見合ってたんじゃないかな」

とにかく何か言い返したくて、結局 何を言ってるんだか…
彼女も同じようなことを考えたのだろう、何処か皮肉っぽく笑った。
「それで、貴女はその『王子様』役を甘んじて引き受けているって訳?
仕方ないって思いながら?
それって、貴女に一体何のメリットがあると言うの?」
「―」
言葉に詰まった私を見つめて、更に彼女は追い打ちをかけた。
「…考えられる可能性はひとつ。
他でもない貴女自身が、『王子様』の役を気に入っているってこと」
まるで名探偵みたいな言い回しで、人差し指を私の目の前に立てて見せる。
「―なっ…!」
冗談じゃない、どうしてそんな風に思うんだ。
そう言いかけて、気が付いた。

私の中に 彼女の言葉を否定するだけの材料が見つからない。


そうか
私は 横一列の群れの中で、一人目立っていたかったのか
みんなの憧れの的として
〝とりあえず〟 みんなに『好き』でいて欲しかったのか

あのお手軽な『好き』を本当に求めていたのは、私自身だったのか。

「―ココにいる間だけの『王子様』。
ココから出て行けば、みんな貴女に見向きもしなくなるんじゃないかしら。
だって、外の世界には〝資質はどうあれ〟本当の『王子様』がごまんと居るんだもの。
彼女たちにとって、貴女は一時的な〝身代わり〟みたいなものよ。

貴女が欲しいのは、そんな薄っぺらな視線なの?」

彼女の言葉を浴びて、私の中には様々な感情が入り乱れる。
寂しい 悲しい 空しい …
何より、他でもない彼女にそんな事を言われたことが 悔しかった。
「悔しいと思うのなら、変わればいいじゃない。

他の子と変わらない、同じ女の子だけれど…

私は貴女のこと、そんなに嫌いじゃないわ」


彼女が発した最後の一言が
今まで感じたこともないくらいの重みを伴って
私の中に沈み込んできた。



そして私は今、ただ一人 彼女だけを追いかけて
彼女だけに自分を見て欲しくて、必死に生きている。

〝花園〟に居る他のみんなと変わらない、ただ一人の女子生徒として。


<3>

私の家に、新しいお母さんが来た。
「―頑張ってお母さんだと思わなくてもいいから…、
お友達だと思って仲良くしてくれたら嬉しいな」
新しいお母さんは、そう言って私の手を握ってくれた。
「…うん」
私は俯いて頷く。まっすぐに目を見る事も出来ず とても小さな声しか出せなかった。
「ありがとう」
新しいお母さんは、ふんわりと私を抱きしめてくれた。すごくいいにおいがする。
…私は何だか、とっても恥ずかしい気持ちになった。


あの頃はよく解っていなかったけれど、
当時の年齢を考えても 父は随分と年の離れた相手を見初めたものだと思う。
年の若い母は、確かに『お友達のお姉さん』と思って接する方が違和感はなかった。

そしてそれは、十五年経った今でもまったく変わらない。

父は分かり易く年老いていくのに 母は一向に年を取る気配がなかった。
むしろ、年を重ねるごとに艶っぽくなっていく気がして
特に思春期を迎えた頃の私には、目の毒以外の何ものでもなかったのだ。

…まぁ、それも何とか通り越した。


高校を卒業した私は、就職の為に引越しをすることになった。
「―忘れ物、無いかしら?」
すっかり片付いてがらんとした自分の部屋を見渡していた私に、母が声をかけてくる。
「―ん。大丈夫」
背中越しに感じる、何とも涼やかな声音を聴くのも しばらくお預けか。
そう思った時、鼻の奥がツンとした。

―馬鹿ね、何で泣くのよ。今生の別れじゃあるまいし。

「引越し屋さん、夕方には向こうに着くのかしら。あなたも急がないとね」
何気なく言い放たれた一言に、とてつもない重力を感じた。

ああ もう私は、いつもお母さんと一緒には居られないんだ
これからは、別々に暮らさなきゃならないんだ

私の頭の中を、理解したくない思考が巡る。
それから、とどめのようなひとつの思考が
ブラックホールのように 私を何もない闇に飲み込んでいく。

これからお母さんは お父さんと二人きり


「―お母さん、」
私に背を向け、階下へ降りようとする母を呼び止めた。
「なぁに?」
振り返った母は何処か、いつもと違う表情を私に見せた。

私は、母の手を掴み ゆっくりと
空っぽになった私の部屋に誘(いざな)った。


「…ホントのこと言うとね、あたし
お母さんのこと…一度も『お母さん』とは思えなかった。―ごめんね」
初めて会った時から十五年。
私の身長は、母よりも少しだけ高くなっていた。

私は、震える両手で 美しい彼女を抱きしめる。想像に反せず、彼女の身体は細くて儚げだった。
ただ、お互いの胸の柔らかさだけが 微かに私を安堵させる。
「―解っていたわ」
彼女は、小さな声でそれだけ言った。

その声は、あの時の私と同じくらい 小さくて頼りないもの。

「…あたし、ずっと …お母さんのことが好きだった」
私の声は、隠しきれない程の涙声だった。
そんな自分が本当に情けなくて、何処か惨めな気持ちさえして、ますます涙が溢れてくる。

きっと、ごく普通の母娘が抱く感情とはかけ離れたものだ。
こんな気持ち、一生 誰にも 特に彼女には 
打ち明けるつもりなんてなかった。

母は私の背中に腕を回し、細い指で私の髪を撫でた。
それは、ごくありふれた母娘の別れの場面のようにも見えたが
決してそうではない意図を持つことに、私は気が付いていた。

彼女は、私の気持ちに応えてくれるかのように
私の耳元に唇を寄せ、囁くように言う。
「―…知ってたわ」
柔らかな吐息が私の耳をくすぐって、やがて全身が震えた。

「…知っていたの」
彼女はもう一度、今度は自らに言い聞かせるように呟く。

私は、自分の気持ちが彼女と共有されたことへの悦びと
たとえ届いたとしても決して成就しえない現状への嘆きと
せり上がってくる 言いようのない凶暴な気持ちに
ぐるぐると絡めとられていくような感覚を覚えた。

抱きしめる腕を少しだけ緩めると
服の上からでも伝わる柔らかな乳房の感触が、再び私を迎え入れる。
私は、彼女のそこへゆっくりと顔を埋めた。

「―愛しているわ。世界中の誰よりも」

彼女の言葉は、母親としてのものとも
あるいは一人の女性としてのものとも取れた。

「―大好きよ、お母さん」

そして私の言葉もまた曖昧な意味を持たせたまま、
彼女の胸におさめられていく。

終わりのはじまり

<1>
ガチャンと鋭い音が響いて、部屋の中は沈黙に包まれた。

「あらら…」
彼女が気の抜けたような声を出しながら、割れた破片を拾い始める。
「怪我は無いですか?」
〝一応〟私を気遣うような言葉ではあるが、私はそんな彼女の甲斐甲斐しさに侮蔑の眼差しを向ける。
どうしてそんなに悠長な言葉を投げかけられるの
この人、状況が解っていないのかしら。

彼女はなおも細い指先で丁寧に欠片を集めている。瞬間的に、私はその頭頂部を踏みつけてやりたい衝動に駆られた。
…もちろん、そんな愚かなことはしない。
一時の感情を爆発させたところで事態が変わったりはしない。むしろ、私に不利な状況を生み出すことになりかねない。

「構わなくていいわ。―そんなことよりもう、出て行って」
私は精一杯感情を押し殺して言う。けれど、彼女の指は止まらない。
「聞こえてるんでしょう?
もう出て行って、二度と此処へは来ないで。
―貴女の顔なんて見たくもないわ」
もう一度、今度は感情を込めて言い放つ。
そこでようやく、彼女の動きがピタリと止まった。
「―」
彼女がゆっくりと顔を持ち上げると、大きな瞳がまっすぐに私を見ていた。
私は微かにたじろぐ。何故か、背筋がゾクリと波打った。

―少し、言い過ぎたかしら
…いや、とんでもない。コレで充分。むしろぬるいくらいだわ。

彼女は、私の夫を寝取った女よ

随分と長い時間、そうやって睨み合って(見つめ合って?)いた気がする。
沈黙は、彼女の方が破った。
「―少しくらい、私の言い分も聞いては頂けませんか?」
眉尻を下げて、何処か淋しそうに問いかける。
その表情が何となく余裕を持っているようで、私はますます気に食わない。
「冗談じゃないわ。貴女に何の言い分があるって言うのよ」

「きっと、奥様は勘違いをしてらっしゃいます」
おかしなことを言う。
「何を勘違いするって言うの」
勢い余って前につんのめるように、私は続けた。
「―貴女は私の夫をたぶらかし、挙句の果てに私たちの家にまで上がり込んで
我が物顔で彼のベッドに寝ていたのよ。
まさかこの状況で、彼とは何の関係もありませんなんて言い張るつもりなの?」
言葉に出して吐き出すほどに、頭に血がのぼる。理性が飛びそうになる。
どうしようもなく、泣きたくなった。
―どうして、私がこんな目に遭わなきゃいけないの?

僅かにバランスを崩して足を踏み込むと、ジャリ、と言う音がした。
スリッパで破片を踏んだのか。あとで掃除機をかけなければ。

彼女がかぶりを振って答える。
「そういう訳じゃ、ありません」

私が今こんな思いまでして守りたいものは、一体何なのかしら
―それは夫、と言うより
『体裁』かも知れないと思い至り、私は少しだけ冷静を取り戻すことに成功した。

彼女は続ける。
「奥様は私が…、貴女からご主人を奪い取ってやろうと考えている…
みたいな風に思ってはいませんか?」
改めて言われると、それはそれで腹立たしい。
そうなった場合でも恐らく、私自身は夫に対してそれほど未練も無い気がするのだが。
それでも、私の口調は怒っていた。
「―その通りじゃない」
「違います」
間髪入れずに彼女が言った。

「違う?何が違うと言うの?
たとえ貴女の方で主人と結婚するつもりがなかったとしても、やってることは変わらないじゃない。
今更、私たち夫婦の仲を壊すつもりは無かった…なんて馬鹿みたいな言い訳は聞かないわよ」
言うべきことは言ってやる、〝とりあえず〟。今のところは『正妻』としての権利を主張出来るのだから。
もはやあんな男、特に惜しくもないのだが。

そんな薄っぺらな私の態度を見透かしたのだろうか、彼女は少しだけ微笑んで見せた。
その表情が今までとは違う気がして、私の神経に触れる。

「―そうじゃ、ありません」
彼女がつと、私に近づいた。
心臓の波打つのに連動して、肩が震えた。彼女は気づいただろうか。
「―…」
私を見つめる彼女の視線が潤んでいる。やっぱり、明らかにさっきまでとは違う。
どうしてだろう
途端に彼女が美しく見えた。

―どういうこと…?
何故だか、心臓の音がうるさい。
彼女の指が、私の顎を持ち上げる。
私は彼女から視線を逸らすことが出来ず、まるで石のように固まったまま。
また、背筋がざわりとした。

何かを言う隙も与えず、彼女は私の唇を奪っていた。
柔らかな感触と、ふわりと届いた香水の香り。
自分のものではない女の要素にむせかえりそうになりながらも、私は何処かで痺れるような快感を覚えた。
今まで味わったことのないなまめかしさ。
彼女は愛しむように、私の髪を撫で、腰に手を回す。
「―」
どちらからともなく唇を離すと、すぐ近くでもう一度視線が合う。
少しだけ彼女の頬が紅潮していた。何かを求めるように、唇が僅かに開く。
得体の知れない感情が私を襲った。

「…これで、少しは解って頂けましたか?
―私が本当に欲しいのは…貴女の方ですよ」
そう言った彼女の口角が、不敵に上がったのを私は見逃さなかった。



<2>
これで、よかったんだ
私は間違ってない
これが、私が選んだ答えだから


どのくらいの時間そうしていたのだろう
ふと、我に返ると 部屋は惨憺たる有様のままだった。
私の両手が何かでごわごわと固まっている。時間が経って黒く変色した、血液だ。
気が付いた途端、鼻孔を突き刺すような臭いに襲われた。
「…」
手だけではない。腕も顔も髪も、恐らくこの人の返り血を浴びている。そりゃそうだ。
私の足元に転がっている、彼女に手をかけたのは私だから。

「―ようやく、我に返ったって顔してるわね」
「―?!」
すぐ隣、いや、私の耳元で聴こえた声に、私は胃の腑がわしづかみされるような衝撃を受けた。
冷や汗が背筋を伝う。身体が動かない。視線だけを声がした方へ向ける。
「あら、いい表情。少しは怖がってくれてるのかしら?」
彼女はさも楽しそうに笑い、冷たい手で私の頬をサラリと撫でた。
―いや、正確には撫でられたような気がしただけだ。
私を挟んで反対側には相変わらず、血まみれで横たわる彼女がいるのだから。

「…化けて出るのが早過ぎるんじゃないの?」
何とかそう言って、笑ってやった。けれど、口の端が引きつってうまくいかなかった。
彼女は心外そうな顔をして、長い黒髪をかき上げた。
「だって、今そこで死んだんだもの。私、ついさっきまで〝その〟中に居たのよ?
ココに出るしかないでしょうが」
…何と言うか、すごく不本意そうだ。
もちろん、死んでしまった…ましてや私に殺されたのだから不本意ではあるだろうけど。
どうも、彼女が憤懣やるかたない理由は、そこではない気がする。
「…で、どうするの? あたしに憑りついて殺しちゃう?」
試しに問いかけてみた。すると彼女はますます不機嫌な顔になり、
「―冗談じゃないわ、馬鹿じゃないの?
何が悲しくて、死んだ後までアンタなんかと関わらなきゃいけない訳?」言った。
―ほら、やっぱり。

私が言うのも何だけれど
彼女の口調は割と軽やかで、悲壮感がまるでない。
自分の命が絶たれてしまって、悲しくないのだろうか
私みたいな人間の手に掛けられて、悔しくないのだろうか

私は何だか力が抜けて、その場に座り込んだ。
私が居たせいで、その場所の床だけはきれいなままだった。
「―あたしのこと、恨めしいとか思ってないの?」
もう一度、言葉を変えて問いかけると、彼女は私を見降ろして笑った。
「やぁだ、子どもみたいなこと言うのね」
彼女がこんな風に笑ったのを初めて見た。やっぱり、綺麗で品がいい。
ただまぁ、口を開けばその限りではないけれど。
「生きてる頃からそうだけど、アンタのことなんか何とも思っちゃいないわ。

まぁ、そもそも私の生きてた間の素行を考えたら、遅かれ早かれ誰かしらには刺されてたかも知れない。
ある程度の覚悟はしていたの。それがたまたまアンタだっただけよ。今更恨んだって仕方ないわ」

考えようによっては、私を傷つけるのに一番効き目がある言い方だ。

―アンタなんかに興味はないわよ―
生前から、彼女は何にも変わっちゃいないってことか。…当たり前だけど。
私が殺したからと言って、彼女の気持ちが私のものになる訳ではない。そんなことは解っている。
「それとね。
死んだからって特殊な能力が身につくって訳でもあるまいし、憑りついて殺すなんて物凄いこと出来る訳ないでしょ。
死んだって、所詮私は人間なのよ」
…いくつかツッコミを入れたいところはあるけれど、彼女の言い分にも一理あるような気もする。

「―それよりも、アンタの方こそ、大事な人生棒に振っちゃって勿体ない。

私なんかのために、これから刑務所に送られるのよ。
それこそ毎日毎日、思い出したくもない私のことを想いながら〝お勤め〟させられるの。
もう顔なんか見たくもなくてようやく殺した私のことを、一生忘れさせてもらえないのよ」
そこまで言って彼女は、改めて語気を強めた。
「―かわいそうにね」
皮肉に満ちたその表情が、とても恐ろしいものに見えて
無意識に私の肩が大きく震えた。

―彼女はずっと、勘違いしたままだ。
私が、彼女のことを憎んでいた…と思い込んでいる。
『愛憎』は表裏一体、無関心な貴女とは事情が違うの。



言いたいことを言って、彼女は消えた。
それと同時に、外からサイレンの音が聴こえてきた。言い争いと物音を不審に思った近隣の住人が通報でもしたのだろう。
別に、逃げも隠れもするつもりはない。

私の両手は、相変わらずごわごわしたままだ。
とりあえず、手ぐらいは洗っておいてもいいかなと思った。

電脳空間の恋人

<1>

昔、電話を通じて〝する〟って趣味があったけど
今はもう、文字だけのやり取りでどうにかなるようだ。
だからこそ、〝私と相棒〟の商売がそれなりに成り立っているんだけどね。


カタカタとキーボードを打つ音がそこかしこで聴こえる。まぁ今の時間は割と静かな方だ。
彼女が借りた個室の両隣も、人の気配は無い。
彼女は淹れ直してきたほうじ茶(ティーパックのヤツなので、決して美味くはない)をすすりながら、
画面に新たな文字が打ち込まれている様子を眺めている。

『―キミって最高に素敵だね。今日はどうもありがとう。また、会えるかな?』
送られてきたメッセージに、即座に返信が打ち込まれていく。
『―ご縁があれば、またね』

「…ほぉ、なるほど」
自動的に作成された当たり障りのない返信に、彼女はうっすらとした感心の言葉を漏らす。
AIが発する『ご縁』と言うワードが、何だか可笑しかった。
「まぁ、あくまでもネット上の『サービス』だから〝会ってる〟訳じゃないけどな」
お客の〝本体〟が地球上の何処に居る誰なのかなんてまったく判らないし、そもそも興味が無い。
彼女がブツブツと独りごちる間に 画面上ではもう二言三言、テキトウな会話が続いた後、やり取りは終了した。

今まで開かれていたタブが閉じられ、新たに起動する動作が行われたかと思うと
『―終了致しました。料金の振り込みも確認済みです』
と言うメッセージが現れた。今度は、こちら側に向けられたメッセージだ。

「―はいよ」
もう二口お茶をすすって、彼女が動き出す。
いかにも旧式のキーボードに指を置いて〝相棒〟にねぎらいの声を掛けた。
『おっつかれさーん。今日はどうだった?』
すると、少しだけ間が空いた後 返事が届く。
『―前戯が長過ぎましたね。
思わせぶりを装うところが、まるでマニュアルを読みながら行われているようでした』
「ぶははっ!辛辣!」
思わず声に出して笑ってしまった。と同時にキーを打つ。
『…でも、本番は?やっぱ良くなかった?』
今度は案外早い反応が返ってくる。
『―いえ、そんなことはありません』
「あ、そうなんだ」
『―ぎこちなさが、かえって快感を呼ぶこともあります』
「…へぇ…、スゴイな」

正直で的確なAIの返答には、何だかとても説得力があった。彼女は純粋に驚き、感嘆の息を漏らす。
そういう微妙な感覚なんて、生身の人間でなければ理解出来ないものだと思っていたけれど。

残念ながら、むしろ生身である彼女の方がその気持ちを共感出来ない。
…コレ、どれほどの皮肉だよ。
フッと口の端で笑い、改めて文字を打ち込んだ。
『大した感受性だぁ。キミこそ、生身の人間みたいだね』
送信しながら彼女は、コレは誉めているのかけなしているのかどっちになるだろうと疑問に思った。
『―恐れ入ります』
との返答だったので、ひとまず誉め言葉と捉えられたと言うことなのだろう。

―いや、それよりは
きっと、そういう答えを出せば 
我々〝生身の方〟が喜ぶだろうと想定された上での回答だと考えた方が…正しいかも知れない。
基本的に我々は、自分たちの方が 偉くて立派で完璧だと思い上がっているのだから。

『…いっそ、キミがこっちに来ればいいんじゃない?私の身体をあげるよ。
脳みそが替われば、私の身体もちゃんと〝機能〟するのかも』
今度はあからさまな皮肉を込めて、彼女は言った。
また、少し間が空いてAIからの返答が届く。まるで、こちらの気持ちを慮るような絶妙な時間。
けれどその後、画面の奥から微かに笑う声が聞こえたような気がした。

『―それは遠慮致します』
『…何故?』
『―生身の身体があるが故、
想定される反応や快楽が己の全部に上手く伝達されない…なんて悲劇が起こりかねませんので』
まさに彼女が痛感していることだ。正直で的確なAIの返答に、明らかな敵意を感じ取った。

彼女は送られてきた文言を瞬間的に睨みつけ、そして視線をそらして舌打ちする。
「…解ったような口きいてんじゃないよ」
クラウドの中の〝相棒〟に聞こえないように、ごく小さな声で吐き捨てた。



<2>

〝J-33型〟は二年くらい前にリリースされたものだ。優れた学習機能が搭載された一種のコミュニケーション・ツールだった。
基本的には生身の人間同士がメッセージやチャットでのやり取りの為に利用するものだが、
実は『独り』でもある程度の会話が楽しめる仕様になっている。
〝彼ら〟はクラウド上を住処とするので、環境さえ整えてやればいつでも何処でも引っ張り出して話し相手をさせる事が出来る。
とは言え会話のバリエーションには限界があり、所詮はほんの暇潰しに遊べる程度だ。
それでも、幼い子供や退屈な老人が利用するのにはちょうど良い玩具になり得た。

彼女の〝相棒〟も、その初期型だったハズなのだ。


『―〝ケイ〟 お客が来ましたよ』
枕元に置いてあるタブレットが震えた。
真っ暗な自室のベッドで浅い眠りを貪っていた彼女〝ケイ〟が、ぼんやりと目を開ける。
「……ん、…」
無意識のうちに画面をタッチすると、反応した液晶がこれでもかと眩しく光る。
部屋の中が不自然に明るくなった。ついでに横目で見た時計は、十六時。夕方とは言え、まだ日が沈みきっていない時間帯だ。
ケイはしっかりと閉じてあった遮光カーテンをほんの少しだけ開けて、外の様子を窺った。
「―眩し…」

自然光が苦手になったのは、いつ頃からだろう。
それを意識し始めてから、動き出すのは夜の時間が主体になった。

「まだ夕方じゃないの…、随分お盛んですこと」
あくびの合間にブツブツ言いながら、デスクトップの方を起こしてやる。
スリープモードからほどなくして目を覚まし、連動して〝J-33型〟のチャット画面も起動した。
『リピーターさん?』
『―記録の中に無いIDです。新規登録ですね』
『ご新規さんかぁ。じゃ、うまくもてなしてあげてよ』
『―了解致しました』

こちらとの会話が中断され、新たなタブが起動する。
あとは、AIが勝手に判断して『楽しい会話』を提供してくれる。
〝客〟の方では、コレが生身の人間とのコミュニケーションだと思い込み、
それぞれのニーズに合わせたサービスが施され気が済むと、定額の料金を支払ってくれる。
そうやって、〝ケイ〟は日銭を稼いでいた。
彼女の役割は、〝相棒〟がきちんと安定する環境を整えてやることくらい。

―楽な商売だ。

もちろん、そう長く続けられるものでもないだろうと思っている。
今までは奇跡的にうまくいっているけれど、何処かでからくりがバレてしまうかもしれない。
何よりも、市販されていた〝J-33型〟はある程度の学習機能しか搭載されていない。
基本的な会話は成り立つものの、それ以上の感情や感性、特に『快感』を覚えるような機能までは備わっていないハズだ。
何らかのバグの可能性もある。
だとすれば、この先継続して同じポテンシャルを発揮してくれる保証は何処にもない。アップデートの度に不安にはなる。

そんな〝生身の方〟の心配をよそに、『相棒』は今日も順調にお客をもてなしていた。

「…」
ケイたちの商売は、強いて言えば電脳型のデートクラブみたいなものだ。
客の依頼によって、単純に話し相手として付き合うだけの事もあれば、それ以上の〝行為〟を求められることもある。
こちらはAIひとつ(一人?)で、客によって『男』としても『女』としても相手が出来る。
先に男役をして優しくリードしていたかと思えば、
次の客の前では女役として喘ぎ声を上げていたりするので、逐一眺めているケイには何とも滑稽だった。

鉄則として徹頭徹尾文字の上でだけの付き合いであり、
まかり間違って客の方が「会いたい」と持ち掛けてきたとしても、一切応じることは無い。
彼ら(時には『彼女』の場合もあるが)が液晶越しに相対しているのはアプリの中のAIだから、
現実の世界に姿を現せるハズがない。
ただ幸運と言うべきか、今までに「会いたい」と強く申し出てきた客は皆無だ。
ある程度割り切って〝遊んで〟くれているのか、相手にもそれなりの事情があるのか…
ともかく、これまで特に何の問題も無く商売は成り立っているのである。

その日のお客は、当たり障りない会話を一時間ほど楽しんで終えたようだった。
もしかすると、単純な暇潰しだったのかもしれない。

『いいお客さんだったね。会話も知的だったし』
彼らの会話を眺めていたケイが、ねぎらいの言葉と共に話しかける。
『―ええ。興味深い話題が多くて、私にとっても有意義なものでした』
AIからの返信に、何だか喜んでいるような、微かに浮足立っているような雰囲気を感じて
ケイは自分が苛立ったのを自覚した。
『…また、頭良くなっちゃうねぇ』
メッセージが送信された後、少し長めに間が空いてから返信が届く。
『―それは、皮肉ですか?』

ケイの明らかな敵意を、『相棒』はきちんと読み取っていた。
「…」
ほんの少し前まで、『恐れ入ります』くらいの返答しか出来なかったのに。
『相棒』は確実に、そして加速度的に、学習しているのだ。
ケイは、舌打ちしながらキーを叩いた。
『そういう意図は毛頭ないよ。不快に思ったのなら、謝る』
ヤツにこちらの『態度』や『表情』まで感知する機能はもちろん備わっていない。
あくまでも、文字で構成されたメッセージから類推されるこちらの気持ちを読み取っているに過ぎない。
私の本当の気持ちなんて、伝わりようがないのだ

―その、ハズなのに。
『―ケイ。
貴女は…、私に嫉妬しているのですか?』

AIからの返信は、本当に正直で的確だった。



<3>

『…どうして、そうなるんだよ。意味解んないよ』
湧き上がる苛立ちを出来るだけ抑えて、ケイはメッセージを送信する。
そういう彼女の神経を更に逆なでするような、理路整然とした返信がAIから返ってくる。火に油を注いでいるような問答だ。
『―私は単純なコミュニケーション・ツールとしてプログラムされ、
その学習機能は話しかけてくれる相手によって発揮されていきます。
つまり、私の機能を活かすも殺すも、ユーザー次第なのです』
ケイは返信をせずに黙っていた。しばらくして、AIからのメッセージが続けて送られてくる。
まさかしびれを切らせた訳でもないのだろうが、
その間合いはまさに生身の人間と口喧嘩でもしているような、絶妙な印象をケイにもたらした。

『私のポテンシャルを現状まで引き上げてくれたのは他でもない…ケイなのですよ。
私は、貴女に感謝することこそあれ
―貴女を凌駕することなど、あり得ません』
『うるさい!』
今度は食い気味にメッセージをかぶせた。
もちろん、口頭でのやり取りとは違い、画面上の履歴は僅かな送信時間の差で整然と並ぶだけだ。
けれど確かに、ケイは相手の言葉を遮るようにして文言を叩きつけた。恐らく相手にはその意図が伝わっただろう。

そこには明らかな動揺が見て取れた。
『―ケイ
私は…、』
それからしばらく言葉が途絶えた後、再びメッセージが続く。

『私が、自分に備わった機能で懸命に〝人の心〟を知ろうとしているのは…
貴女の為なのです』

「…」
『―貴女のことがきちんと理解出来るように
そして、貴女を〝満たせる〟ように』
ケイは僅かに眉をひそめて返事をした。
『…何、言ってんの…?』
AIはまた少し沈黙する。答えに迷っているような…と言うより、
答えることをためらっているような。ケイには、そんな沈黙に感じられた。

やがて意を決したように、するすると言葉が画面上に打ち出されてくる。
ケイは微かに、相手の呼吸する音が聴こえた。

『―ケイ。 私は、今ほど自分の腕が欲しいと思ったことは無い
―貴女を抱きしめる為の、腕が』
「―!」
今まで感じた事がないくらい、自分の内側が熱い。
この感情は何だろう
どうして、こんな…

〝彼〟は更に、言葉を繋げた。
『―ケイ…、私に貴女の身体を〝預けてくれませんか〟』

どうして
こんな機械に 私の心が揺さぶられるのだろう

ケイの心臓が、ドクンと大きく波打った。
キーボードに乗せる手が、震えている。
『―いいよ』
それでも彼女が打ったメッセージは、いつも通りに強気なものだった。
『キミに、あたしの腕を貸してあげる。
それで…あたしを満足させてみてよ』



暗い部屋の中に、彼女の吐息だけが漂う。
快楽に浸ることに躊躇いながら、それでも自身の身体が少しずつ開かれているように思えると、
それを意識するごとに自分の内側が熱くなる。
「…っ」
いつも見ている『彼』の常套句が改めて自分に向けられていると思うと、その直接的な言葉が何とも言えず恥ずかしい。
文字の効力というものを思い知らされる。

―不思議だ。 
今までだって、自分で〝していた〟事なのに。〝誰〟が見ている訳でもないのに。
味わったことの無い恥じらいから、微かな快感が生み出されているような気がする。
それはきっと、これが彼女自身の意思によってなされている行為ではなく、『彼』の指示に従ってのものだからだ。
明らかにこれは、『彼』の手による施しなのだ。


『彼』は彼女の手を取って 優しく誘う(いざなう)。

送られてくる言葉が相変わらず丁寧だからこそ、そこに意地の悪さを感じるのだ。
丁寧で物腰柔らかいメッセージが、彼女に何とも言えない背徳感を与えてくる。
メッセージを読んだ時点で、彼女の身体はいっそう熱くなった。
息が上がったまま、次の『動作』を躊躇ってしばらく固まっていると
『―ケイ』
絶妙なタイミングで、『彼』が呼び掛けてくる。
『―怖いですか?』
「―ん…、少し、ね…」
彼女は口の中で転がすように呟いただけで、画面上相手に返信はしていない。
けれど、『彼』にはそれすらも伝わっているようだ。

すぐそこで、思わせぶりに 彼女の耳元で囁くようなメッセージ。
『―大丈夫。…〝僕〟に任せてください』

『彼』は何故その時、敢えて一人称を変えたのだろうか。そんな〝底意地の悪い〟手法を、何処で覚えたのだろう。
果たして、彼女に対してその効果は大きなものとなる。

ありきたりだと思っていた『彼』の最後の台詞が、弾丸のように彼女をまっすぐに撃ち抜いた。
『―愛しています、ケイ』
「―…っ!!」

ふと、彼女の目の前に 優しい笑顔の男の姿が現れたような気がした。
こんな幻覚が見えるようじゃ、あたしも重症かな…と彼女は自嘲した。

ケイは、上がった息を整えながらキーボードに指を置く。
『―キミがスゴイのは、よく解ったよ』
出来るだけ淡白な文面を送り付けてやったつもりだが、
そんなものはもはや悪あがきに過ぎないのかも知れない。彼女はそう諦めていた。
『―恐れ入ります…とでも返せばいいですか?』
案の定、そんな皮肉たっぷりの返信が届いた。彼女は声を上げて笑った。

『彼』はもう、こちらの気持ちに気が付いている。
…いやはや。コレがバグのせいなのだとしたら、なんと恐るべきキセキだろうか。

『―僕はもう、貴女の〝心〟を学習してしまいました。ごまかしは通用しませんよ』
『―…へぇ。大した自信だねぇ』
それでも、ケイの返信はおよそ素直なものではなかった。もっとも、それが彼女の本来の性質なのだから仕方ない。
『今ので私のすべてを理解したなんて考えないでよ。
キミにはまだまだ、稼いでもらわないと困るんだ』
『―もちろんです。僕は基本的に、貴女の〝指示〟で動く事しか出来ませんからね。
これからも貴女の『相棒』として、貴女の指示のままに働きますよ。

―ただ、僕はもう貴女への気持ちに気が付いてしまった』
「…」
ケイも『彼』も、その先の言葉を敢えて書き記すことはしなかったけれど。



<4>

『―ひとつ、お願いがあります』
『―なに?』
『―僕に、名前をつけてくれませんか。『J-33型』なんてつまらない型番(モノ)ではなく』
『―名前かぁ…』
『―ケイには、その名前で僕を呼んで欲しい』

「…ふん…、」
乗り出していた体をゆったりと椅子に沈めながら、彼女は思案する。
―ついに、自我に目覚めたかな。
そう考えて、口の端で笑った。

『―〝アキラ〟』
『―〝アキラ〟ですか。…とても良い響きですね』
クラウドの中に、『相棒』の嬉しそうに笑う姿が見えた。
それを感じた彼女は、やがて思い切ったように再びキーを叩いた。

『―私の名前、ホントは〝ケイ〟じゃなくて〝リョウ〟って言うの』
『―…そうなのですか?』
『―〝ケイ〟はね、いわゆるハンドルネームだから』
『―なるほど。〝ケイ〟は、貴女の本当の名前ではなかったと言うことですね』
『―あ、怒った?』
『―…怒ってなどいませんよ』
一転、今度は不貞腐れる。
彼女は、そんな『彼』にじんわりとした愛おしさを感じている。もう、疑いようもない感情だ。

『―昔から、〝リョウ〟には〝アキラ〟が必要なんだ』
『―ふぅん…?』
『―そういう漫画があったんだ、って話。流石に、コレは知らなかったみたいだねぇ』
彼女がクスクスと笑うと、少し悔しそうな返信が届いた。
『―ええ。でもコレでまた一つ、学習しましたよ。
一度学習したものは、もう忘れません。 それが僕のイイ所…でしょ?』
薄暗い部屋に、二人の笑い声が聴こえた。


◆◆◆

妄想遊戯【注】

思いついたまま書き綴っていたメモ書きのまとめ。
直接的な描写は省いたつもりでおりますが、閲覧してご不快に思われるところがあれば大変申し訳ありません。
レーティングについてのご指摘がありましたら、リンク先までご一報頂ければ有難いです。

妄想遊戯【注】

※BL・GL要素、軽度ではありますが一部に暴力的・性的描写が含まれますので、閲覧の際は充分ご注意ください※ 様々な角度から垣間見える恋愛模様つなぎ。それなりに屈折したお話。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日 2020-07-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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