赤い糸について

赤い糸について

どこかにけがの一つでもしなければ自分の血を直接見ることはできないのに、はたちの献血って文字は赤い色で書かれていて、ほんとうにぼくの血も赤いのかねって思うけど、これはまあしょうがない。A型とかO型とか、そういう概念はただただくだらないってバンパイアが言ってた。ぼくは動いている心臓の動画を見るのがなんとなく嫌いだ。
赤い糸をカミソリの刃でちぎった女の子を、怖いって噂してる女の子。怖いって表現はなんか正しくないような気もするけど、ぼくは黙っておいた。赤い糸の切れはしが赤い線をつくって、机のはしに小さくてきれいな記念碑をつくる。クラスメイトたちには目もくれず手首だけを見て、赤い糸の絡まることだけを考えていた彼女は立派だった。あと二週間くらいで彼女の誕生日が来るんじゃないかって、彼女の誕生日なんて知らないくせに、そう思えてくる人生の不思議。人間は閉鎖けっかん系だからぼくの小指の赤い糸はぼくの手首だけにつながっている、らしい。でも、なぜかぼくはそういうものに興味がなかった。そういうものに興味がない自分は彼女と同じくらい立派だった。ただ閉鎖けっかん系って言葉だけはよく覚えていて、赤い糸が切れた彼女も閉鎖けっかん系であることに安心する。赤血球を押しつけて、今日の記念にとっておいたの。彼女のそういうところがすごくかわいらしいなってぼくは思ったりするけど、ぼくの赤い糸も彼女の赤い糸の切れはしも、閉鎖けっかん系のせいでどこにもつながらない。だから彼女は自分のけっかんだけを見つめて、ぼくは自分のけっかんから目を背けている。

赤い糸について

赤い糸について

閉鎖けっかん系。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-19

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