ぼくのための銀河
ぼくのための銀河
ぼくのための銀河は星とか星とか星とか星とかそういうものじゃなかった。ただの銀河だった。きみにも見せてあげたいけど、ざんねんなことにぼくだけのためにある銀河だから見せることができない。銀河っていうひとかたまりで、分割することはできなかった。白鳥とかさそりとかも乗っかっていたけど、やせっぽっちだった。ぼくだけがそうなのかはわからないけど、ぼくの手元にはそういう銀河しか残っていなかった。地球が入るほど大きくないから、ほんとうにここから生命が生まれたのかどうかは疑わしかった。俯瞰するだけの観賞用銀河で、なんだかぼくは天使みたいだったけど、絶対ちがう。でも、きみも口あけたまま夜空の星とか眺めてアホな詩をまき散らしていて、ほんとうにばかみたいだから、ここは地球じゃなくて、宇宙のさいはてなのかもしれない。地球にもう一人ぼくがいるけど、そいつはただのコピー。ちなみに、そうじゃない宇宙にはそうじゃない地球にそうじゃないぼくがいる。神様が飽きるまで億とか兆とか延々とコピーが続いていて、宇宙のさいはてからだとわかりにくいからぼやーっと感じることしかできない。星っていうのはひとつの迷信で、絵に描かれているみたいにフィクションで、さみしい。そしてフィクションのぼくたちがさいはてのぼくをひっぱる、ぼくのからだは薄くひろがる、でも実体がないもの同士だからなんともそれはあたりまえのことで、ぼくは宇宙をいっぱい見た、たくさんの地球でたくさんのきみが泣いていた、でもぼくのための銀河から見るとそれは絵に描かれているみたいなフィクションで、だからたくさんのきみをながめることしかできない、近くにいるような気がするけど、ほんとうはずっとずっと遠くにいて、視力がよかったり悪かったりが交流電源みたいに切り替わってぐにゃぐにゃになって、フィクションのぼくがどこにいるのかもわからず、生まれたり生まれなかったり、ただきみが泣いているところだけが夜空にきらきらしていて、それはもしかしたら星だったかもしれない、正真正銘ただ一つほんとうの銀河。
ぼくのための銀河