きゅっと、目をつむって、しずかに、体育座りをすると、しのび足で睡魔が訪れて、夜となかよくできればいいのにって、どうしてじぶんを責めなくっちゃならないのかって、ごちゃごちゃとかたづかない感情が、なみだをうんで、海になる。
 まもられてるみたいな、気になるのに、べつになににもまもられていなくって、ただ、じぶんでじぶんを、覆う。雨音も雷も、もうちっともこわくないし、夏夜の雨がはこんでくるすずしさはしっとりとやさしいのに、それでもなにかに、おびえている。
 うまれたかっただろうな。あのひぐしゃりとつぶしたパックのなかのたまごたち。ぱきゃりと割るはずだった。
 ほら、ゆりかごをおもいだして。うごかない世界より、おだやかなゆれに身をゆだねるここちよさを、おもいだして。
 でも、もう、かすかなゆれさえこわい。だからまた、きゅっと、体育座りで、悪夢が脳をおかすまで、つかのまのねむりにつく。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-15

CC BY-NC-ND
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