泳ぐひと

 シンは補習の教室の窓から校庭を眺めた。
方程式は美しいと先生は言う。
暑くなってきた6月末の午後だ。

 校庭の端にプールが見える。水泳部が練習している。
次はユリの番だ。水泳で鍛えた丸みを帯びた筋肉が付いている。彼女が飛び込んで潜ってから水上に浮かび上がる一連の動作を、シンは見つめた。
静かな水しぶきが湧いて、ユリはクロールを始める。
彼女は何に向かって手を伸ばしているのだろう。
彼女が向かう先が自分なら良いのにと、シンは思う。
ユリは小気味良く水を切る。
 彼女が向かうのはゴールで、今はひたすらにタイムを競っている。無駄な動きを少しでも減らしていく。水面に浮かぶ刹那にユリはいる。
夏はもうすぐそこだ。 

泳ぐひと

泳ぐひと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-15

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