文学のこと

 暑くて暑くて、いっそなりふりかまわず溶けだしたい。にんげんが溶けると、なんというか、グロテスクだろうけれども、質量を感じるというか、夏は重力がいじわるな気がする。(個人の見解です)
 マシュマロをいただいてから(いただいたことに気づいてから)、シャワーを浴びながらだとか、掃除をしているときだとか、歩いているときだとか、ふと首をもたげて脳を支配した、「海百合にとっての文学とは」という質問。うーん。あまり、というかほとんど、考えたこともなかったな、いつもひっそり、自然にそばにあるもので、存在について疑問をもつこともなかった、という感じで。
 つまり身近なものだった。いい機会だから、わたしの(わたしの!)文学史でもふりかえってみますが、適宜読み飛ばしてください。不親切かな。もう三段落後くらいには、質問にこたえているかも。
 宮沢賢治や夏目漱石、小泉八雲、江戸川乱歩、そうとはしらず小学生のわたしがこのんで読んだ文学作品の作者たち。いまでは太宰と乱歩の圧勝なのですが、小学生の頃は太宰を読んだことがなかった、と思う。教科書はべつ。「走れメロス」くらいは読んだかもしれないけれど、覚えていないというのが正直なところ。
 強烈に覚えているのは、小学校三年生くらいの昼休み、(冷房のにおいがしたので夏だったと思う)図書室のすみっこで出会った「怪人二十面相」。表紙がこわくって、でもものすごく惹かれて、それから「少年探偵シリーズ」をぜんぶ読んだのが、さいしょの「文学」の記憶だと思う。あとは、わたしの小学校で大人気だった青い鳥文庫の、若おかみさんとか、黒魔女さんとか、パセリ伝説とかを、予約待ちして読んでいた。あと、ミッケ。ミッケばっかりやってた時期もある。いまでもたまにやりたくなります。そして中学生になると、恩田陸、有川浩の時代(もちろん、わたしのなかで)が始まって、もう、しんじられないくらいたくさん作品があるから、このふたりばっかり読んでいた。中学では、だから、いわゆる「文豪」の作品からは、離れていて、次に読むようになるのは高校生。ひえ~と思うひともいるかもしれないけれど、これを「損」とか「ありえない」とかたづけるひとは、たぶんこの文章を読んでいないので、気にしないことにします。高校生になってからは、恩田陸、太宰、そして図書室のすみっこで出会ってから現在に至るまでわたしのいちばんすきな森博嗣に出会って、森博嗣旋風の幕開け。この次くらいに読むようになったのが、福永武彦や坂口安吾、宮沢賢治。福永武彦の作品が図書室にほとんどなくって、歯噛みしたのもなつかしい思い出。
 なにを「文学」とするか、書いておかなければならない、とここでようやく気づきました。質問者さんの意図がわからないので、完全に主観で、この文章を書くためだけに決めると、「ああ考えたな」「行間を読んだな」「頭をつかったな」「吐きそう」「なんてことだ!(衝撃を受けた)」といった強烈な読後感のある「フィクション」作品を、ここではまとめて「文学」とします。ここだけですよ。というか、「文学」って、定義できるのだろうか。(辞書や学問的なことではなく。)いまは、「わたしにとっての」はなしをしているので。「文学とは!」と訊ねられても、明確なこたえなんか出せない、というこたえになっていないこたえが出てしまう。個々人にとっての「文学」は、その時の心理状態とか、置かれている環境、状況とか、感じ方は日常的に変化するから定義できなくって、だからいま、とりあえず、上に書いたようなことを、「文学」としておきますね。たとえば、名前を全然出していないので説得力に欠けるかもしれませんが、アニメだって「文学」だと思う。本、といって、漫画やラノベを迫害するひとと有意義なはなしなんかできない! という過激派のわたしもおります。考え方はひとそれぞれなのだけどね。でもわたしが本、というときは、当たり前にそれらも入っている。(ほんとうは、わざわざこんな説明すらしたくないけれど、あくまでも考え方はそれぞれだから。)
 脱線しすぎかもしれない。文学史はこれくらいにして、そろそろ質問にこたえます。「文学」はわたしにとって、「周囲のだれかから、それ変だよ、と否定されたことを、いとも簡単に肯定するもの」です。ここまでに挙げた作家さんの作品は、どれかがやっぱり、こういう側面をもっていて、だから覚えているし、すきなんだよなと思います。(なんにも考えずに読める、観れる、作品たちももちろん大好きですが主旨とずれちゃうので。)こたえらしいこたえとして提示できるのは、このくらいです。しかも、これだってあくまでひとつの側面でしかない。むずかしいなあと頭をかかえながら、昨日ようやく、ぽん、と、それらしいこたえをみつけました。むずかしかったです。普段からかんがえてるひとは、こうこうこうだよ、とすっぱりこたえられるのかな。でも、かんたんにこたえをだせないものに取り組むのってたのしいので、わたしはこんな感じでいいです。
 ちゃんと三段落後でしたね! 長々と書いてきましたし、なんというか、とてもラフな文章になったし、雑然としているし、ざんねんながら推敲する気もないので、読みづらさを強要すること、おゆるしください。そして、たいへんお待たせしました。質問者さんはもうわすれてるかもしれませんが、とてもたのしく考えることができました。マシュマロ、ありがとうございました。

文学のこと

文学のこと

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-14

CC BY-NC-ND
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