Salty

nanamame

Salty

初The Boyz小説。チャンミン(Q)くんとチャニ(New)くんとヨンフンくんのお話。

***

ほんのちょっとの想像力と配慮の欠如が、とんでもない失敗に繋がって、ほんのちょっとの勇気と思い切りで、今までになかった道が開けた。
僕は、どんな顔をして、新しい朝を迎えたらいいのだろう。未だ、慣れない。それが、ちょっと悔しい。



 ***



最近、ドラマの撮影で忙しいヨンフンヒョンがいつもより早く帰ってきた。早いと言っても、ほとんどのメンバーが寝ているか、寝る準備をしているかだ。チャンミンもリビングで1人、シャワーが開くのを待っているところで、疲れているのが目に見えるヨンフンに、無駄話も遠慮してしまう。
自分に何かできることはないかな、と思いながらヨンフンの動きを追っていると、目が合った。

「チャニは?」

「今、シャワーしてる。入ったばかりだから、まだかかるかな?」

ヨンフンはそっけなく「そっか」と言って、チャニの部屋に入っていく。何か約束があったのか、貸しているものがあったのか、深く考えずに再び携帯に視線を落とす。
少しして、自分より先にシャワーの順番を譲ってあげたら、ヨンフンが早く寝られるのではないかと思って、チャニに早く上がるように言おうと思った。
チャンミンはいい考えだと思って、チャニがいつも使うシャワールームに直行する。

くもりガラスの向こうにうっすらと人影が見える。シャワーが流れる音が大きく聞こえる。

「ねぇ、チャニ~。早く上がって―――」

名前を呼び、ドアを開ける。
許可を取ればよかった、もしくは、ドア越しに言えばよかった。そう思っても、開けて見てしまったものは取り返しがつかない。

シャワールームには、チャニ1人ではなかった。ヨンフンがいた。2人とも当然と言うか裸で、当然ではないのはキスをしていたからだ。人影が2人分見えなかったのは、2人がぴったりと抱き合っていたから。チャニの両腕はヨンフンの首に回っていて、片足はヨンフンの足に絡まっていて、ヨンフンの腕はチャニの腰をしっかりと掴んでいて、隙間なくぴったりとくっついていた。

「あ」と言ったのは、誰だっただろうか。どれくらい固まっていただろうか。チャニと目があう。その目は、今までに見たことがないくらい、冷たく怖かった。

「ヤー、ジ・チャンミン!! 勝手に入って来るな!!」

チャニの大声が宿舎中に響く。
シャンプーかリンスのボトルがものすごい勢いで飛んできて、シャワールームのドアが壊れそうなほどの強さで閉じられる。チャンミンは為す術もなく、棚やドアにぶつかりながら後ろに倒れた。ボトルが胸に当たってとても痛い。頭も打ってしまった。だけどまだ、見たものの衝撃の大きさで声も出せない。

「どうした?! 何があった?」

サンヨンの焦った声が近づいてきて、チャンミンは脱衣所から這い出した。誰も入れてはいけないと咄嗟に思った。

「チャンミン、何があったんだ? 今の怒鳴り声、チャニだろ?」

「出ていけ!!」

もう一度、チャニが怒鳴るので、脱衣所のドアも閉めて、チャンミンはサンヨンに支えられるようにしてリビングへ戻る。
寝ていたはずのサンヨンを始め、他のメンバーも起こしてしまったようだ。皆が心配そうに見てくるから、チャンミンは余計に顔を上げられなくなってしまった。項垂れたまま、しどろもどろに説明する。

「ごめんなさい…。僕が、勝手にドアを開けちゃって…、チャニが怒っちゃって…」

「ああ、まぁ…、勝手に開けたらダメだよな。入っているの、分かってたんなら」

サンヨンが慰めるように頭を優しくなでてくれる。それでもっと申し訳無くなった。

「うう…、ごめんなさい。早く上がってって、言おうと思って…。ごめんなさい、皆を起こしちゃった…」

核心を省いたため仕方ないのだが、大した理由ではないと皆は思って、「それくらいで怒るなんて」とチャニの方が悪いみたいな空気が流れる。チャンミンはそれにも落ち込んでしまう。

「僕が悪いんだ。チャニを怒らせちゃった」

「ちゃんと謝れば許してくれるよ。早い内に謝っておくんだよ。最近忙しいから、チャニも疲れてたんだろう。大丈夫だよ」

サンヨンはそう言って、部屋へ戻っていった。チャンミンは何か飲んで落ち着こうと、とぼとぼとキッチンへ行った。
チャニとは違う部屋のシャワールームを使っていたジュヨンが、ジュースを入れてくれる。椅子に座ると力が抜けて、テーブルにつっぷした。サンヨンと同じように、ジュヨンも頭をなでて慰めてくれる。皆が優しくて泣きそうだ。

「あんまり落ち込むなよ。メンバー同士、裸なんて見慣れているし、あんなに怒ると思ってなかったんだろ? うっかりすることなんて、よくあることだ。チャニも、機嫌が悪かっただけだよ」

「うん…」

美容室でも楽屋でも、基本同じ部屋で衣装に着替える。下着まで着替えることもあるし、一緒にお風呂に入ったこともある。それを踏まえた、ありがたいけれどちょっとずれた慰めに、心が痛む。言えないことがもどかしいけれど、簡単に打ち明けられることでもない。チャニとヨンフンの関係を、サンヨンはどうかわからないけれど、ジュヨンは知らないに違いない。

「俺たちの部屋のシャワー使うか? 早く入りたかったんだろ?」

ジュヨンに言われて気付く。ジュヨンとヨンフンは同室なのだから、チャニでなくてもジュヨンでもよかったこと。そもそも、ヨンフンがチャニを探していたのは、多分抱き合うためで、自分の思いつきなど何の役にもたたなかったこと。
落ち込んだ沼から這い上がる術は今の所なにもなさそうだ。

「今日はもういい。明日の朝にする…」

ジュヨンは落ち込んでいるチャンミンを1人にしておくのが心配だったけれど、側にいてもできることはないので、先に寝ることにした。

「おやすみ」

1人ずつ部屋に戻っていって、チャンミンはキッチンでまた1人になった。ゆっくりとジュースを飲んでいると、ドアが開閉する音と、キッチンへ近づいてくる足音が聞こえた。
振り返るとヨンフンだった。濡れた髪のまま、ゆったりとバスローブを羽織っている姿は、直視できないほど色気があった。ぱっと視線を逸らし、椅子の上で膝を抱える。きっと目撃してしまった光景に影響されているのだろう。顔が赤く熱くなる。鼓動が早くなっていくのと同時に、もやもやした名前のない気持ちが生まれて大きくなっていく。

ヨンフンは冷蔵庫を開けて、少し迷ってから、ビールを取り出した。飲みながら考える。言い訳をしようか、堂々と打ち明けようか。
最近忙しくて、寝る時間も他のメンバーより無くて、ストレスも欲求も溜まっていて、ただ無性にチャニを抱きたかった。いつもより慎重さに欠けていたと思う。その結果が、今だ。チャニにも、チャンミンにも悪いことをしたな、と思った。見られた後、結局2人とも萎えてしまって、最後までできなかった。チャニには「仕切り直し、してね」と言われた。ストレスと欲求は、彼も同じだ。

椅子の上で膝を抱えたまま固まっているチャンミンに声をかける。

「なんか、悪かったな」

ヨンフンに先に謝られて、チャンミンは戸惑った。悪いのは自分だ。

「え? えっと、いや、僕こそ、僕が悪いんだ。邪魔しちゃって、あっ、邪魔って言うか、あの、その…」

真っ赤な顔で言葉もまともに出てこない様子に、「ぷっ」と笑ってしまう。かわいいな、と思う。チャニとは違うかわいさだ。

「…ごめんなさい。…あの、チャニは?」

「チャニはもうベッド。謝るなら、明日だね」

ヨンフンはチャンミンに近づく。キッチンには今は2人きりだけど、秘密の話だから、耳元で囁く。

「今日見たこと、秘密だよ」

耳元で吐息まじりに言われた言葉。誰にも相談できない秘密。チャンミンはヨンフンの顔を見られないまま、こくこくと頷いた。

「おやすみ。チャンミンも早く寝なさい」

ヨンフンは飲みかけのビールを持って部屋に戻っていった。

チャンミンも寝ようと、自分のベッドに入る。ぬいぐるみを抱いて、目を閉じる。いつもなら疲れからすぐ眠れるのに、今日は目を閉じるとチャニとヨンフンが抱き合う光景が脳裏に浮かんで眠れない。
深く重なった2人の唇や、チャニの細い腰を支えるヨンフンの腕、隙間なく寄り添う2人の胸、腹、下半身。もやもやが大きくなっていく。どうしてこんなにも気持ちが泡立つのか。

「どうしよう…」

寝ようとしているのに眠れなくて、さらに勃ってしまった。潰れるほどぬいぐるみを抱きしめても、脳裏の光景を消そうにも、どうしようもない。勃ってしまった中心を放っておくのも辛くなって、なるべく音を立てないようにトイレに入る。

1人で慰めながら、情けなくて涙が浮かんでくる。あの唇に触れるのが、あの腰を支えるのが、あの下半身にこすりつけるのが、どうして自分ではないのだろう。どうしてそうしたことができる権利を、ヨンフンが持っているのだろう。チャニとシャワールームで内緒で抱き合う快感を、自分こそが味わいたい。

「はぁ…」

果てた後の汚れた手のひらを見つめてため息をつく。
後始末をして、静かにベッドに戻る。抱きしめたぬいぐるみに、少しだけ涙が滲む。

名前がないと思っていた気持ちは、単なる嫉妬だった。大好きなはずの兄に対して、浅ましく嫉妬している。大事な一番の親友と思っていたチャニに対して、気付いていなかった独占欲の大きさに戸惑う。
知ってしまったばかりの気持ちを整理できなくて、チャンミンはあまり眠れなかった。



 ***



翌日、チャンミンは朝ごはん中のチャニに、「昨日はごめんなさい」と謝ったけれど、きっと睨まれて、返事をもらえなかった。入れ替わるようにチャニはご飯を終えてしまう。少し離れた場所でサンヨンがチャニと話をしてくれていた。
スケジュール中も、何度か謝ったのだけれど、「もう分かったから。しつこい」と言われてしまった。

11人中の一部だけ仲がぎこちないだけでも、それは全体に波及する。カメラの前では取り繕っても、全く元通り仲良くということにはならない。
1日、2日と経てばチャニもヨンフンも元通りのように見える。チャンミンだけが、意識している。チャニと同じ部屋で着替えるのもどきどきするし、チャニとヨンフンが一緒にいるとものすごく気になるし、どんな風に笑い合っていたのか、話をしていたのか、忘れてしまいそうだ。

「チャンミンヒョン、ご飯食べないの?」

スケジュールの合間、昼食の時間。チャンミンは近頃悩みすぎて食欲があまりない。お弁当を前に携帯ばかり見ていたら、隣に座っていたハンニョンが顔を覗き込んできた。

「俺の食べる? これ、おいしいよ」

メインのおかずが違うお弁当を食べていたハンニョンが、チャンミンの方へお弁当を寄せる。チャンミンは驚いた。「食べないの?」と聞いたら必ず「頂戴」と言っていたハンニョンが、自分の分を分けようとするなんて、弟の成長に小さく感動に震える。

「ご飯食べないと、元気もでなくて、悩み事も悪い方に考えちゃうんだよ。だから、ご飯いっぱい食べないと。ただでさえ、ヒョンはいっぱい踊って消費しているんだから。ね?」

弟に気を使われるほど、心配させていたのだと思うと、いい加減ちゃんとしなくちゃ、と気持ちが引き締まる。

「そうだね。ありがとう」

ハンニョンに笑顔で答える。おかずを1つもらって、代わりにチャンミンのお弁当のおかずを2つあげる。笑顔で美味しそうに頬張るハンニョンを見ていると、チャンミンも食欲がちょっと出てきた。
お弁当を食べながら、決断しなくちゃ、と思う。いつまでもくよくよしていたら、自分のせいでチームの雰囲気がどんどん悪くなってしまう。それは絶対に嫌だ。

答えを出そうと思うだけで、自然と答えは出ていた。はじめから、1つしかなくて、それを子供の自分が直視できなかっただけなのかもしれない。



 ***



しばらく忙しいスケジュールが続いた後、久しぶりに午後から各自練習する時間ができた。それぞれ勉強したり、歌やダンスの練習をしたり、動画配信したり、個人スケジュールがあったり、様々だ。
チャンミンはチャニを探して、練習室を見て回る。廊下で会ったソヌが、チャニがいる部屋を教えてくれる。防音仕様の小さな練習室の1つ、小窓から中を除くと、チャニは居眠りしていた。
幸い、鍵はかかってなかった。そっと部屋の中に入って、鍵をする。覗かれないように小窓にも紙で蓋をする。
チャニはまだ起きない。寝顔を見るのは久しぶりだ。意外とお喋りだし、よく笑うし、マイペースで困るところもあるけれど、寝顔はきれいでかわいくて天使のようだ。
つんつんと突くとすぐに目を開ける。チャンミンを見つけて、すぐに体を起こす。

「びっくりした、チャンミンか。なんか用?」

「うん、ちゃんと話がしたくて」

チャニはちょっと困ったように眉尻を下げる。でも「そうだね」と言った。

向き合うように椅子に座る。少しの沈黙の後、チャンミンは勇気を出した。ちゃんと言うんだ、という決意のもと、向き合っているのだから。

「あのさ、いつから、付き合ってるの?」

つまらなそうに携帯を見ていたチャニは、頬杖をついて、チラチラとチャンミンを見る。そして意外なことを言った。

「別に、付き合ってる訳じゃない。好きだって言われたこともないし、デートをすることもないし、ただ、身体だけってそこまで割り切ってることもないんだけど…」

窓のない部屋で、遠くの景色を見るように、チャニはここではないどこかを見ていた。

「なんて言うんだろう、僕とヨンフンヒョンは」

チャニはチャンミンに聞かれて初めて、ヨンフンから「好きだ」とか「付き合おう」とか言われたことがないと気付いた。恋人と言うには淡白すぎて、身体だけと割り切るには情がありすぎる。

「いつから?」

「1年くらい前かなぁ」

デビューする前後は、恋なんて必要ないと思い込んでいた。歌手は長く培ってきた夢で、ステージで歌えるなら、それだけでいいと思っていた。だけど、アイドルというものは歌うだけが仕事ではない。歌だけを求められるものでもない。眠れば忘れられた、歌えば解けた、ストレスや不満や不安が、行き場もなく溜まっていって、ある日、とめどなく涙となって流れた日があった。久しぶりの連休で、他のメンバーは皆でかけていて、1人だと思って気を抜いたからかもしれない。仕事から帰ってきたヨンフンに、いっぱいぶつけて、一緒に泣いて、お酒を飲んで、お互いに抜き合うだけのつもりだったものが、セックスになった。
そんな始まりだったからなのか、自分たちの関係はいつも切羽詰まっていて、切実だった。ストレスや不安に揺れるメンバーたちに対して、少し後ろめたさもあった。

チャンミンは今にも泣きそうだ。何をそんなに思いつめているのか、よくわからない。

「チャニは、ヨンフンヒョンのことが、好きなの?」

「ん? そりゃあ、嫌いじゃないよ。メンバーだし、情もあるし―――」

「メンバーなら、誰でもできるって訳でもないんでしょう?」

「そんなの当たり前じゃないか」

誰でも良い訳ではない。あの日、あの場に居合わせたのがヨンフンではなかったなら、その人とこんな関係になる可能性は0ではないものの、今はヨンフンでよかったと思っている。

「でも、ヨンフンヒョンでなきゃダメってことでもないんだね」

「何が言いたいの?」

チャンミンを睨む。男同士で関係を持って、軽蔑されているのかと思ったら、そんな表情でもない。耳まで赤い顔で、まっすぐな眼差しを向けてくる。
チャンミンの手が伸びて、携帯を持っていた手を握られる。チャンミンの手は、熱くて、力が強い。
固く引き結ばれた口は、まだ何も言わない。

「何?」

「僕じゃ、ダメ?」

「…は?」

「僕、あの日からずっとヨンフンヒョンに嫉妬してる。ずるいって思った。僕が、僕の方が、チャニのことを好きなのに」

一瞬も逸らされないチャンミンの瞳から、涙が一筋溢れた。その涙を邪魔者のように、シャツの袖で乱暴に拭う。

「今まで、知らなかったんだ。一番大事な親友だと思っていて、親友よりもっと大事だと思っていたけど、僕は知らなかったんだ。それ以上の関係になれるかもって、方法を知らなかった。でも、今は分かっている。僕なら、もっと大事にする。チャニのこと好きって言う。チャニのこと、愛しているって表現するから」

涙ながらの告白に、握られた手がもっと熱くなる。チャニは戸惑い、視線が泳ぐ。さっきまで見つめ返していたチャンミンの目が見られなくなった。
チャニも、チャンミンのことを親友だと思っていた。秘密はあったけれど、何でも話せる気のおけない親友。出会えてよかった、一緒にデビューできてよかったと思える相手。
彼女がいたことがあっても、こんなに熱い告白をされたことはない。真剣さは、嫌というほど伝わってくるから、簡単な言葉は口にできない。

何も言えないでいると、チャンミンが立ち上がる。蛍光灯が逆光になって、表情がよく見えない。

「逃げないで」

もう片方のチャンミンの手が、チャニの項を捉える。あっという間に、唇を塞がれた。舌で口の中を弄られ、吸われるのも、嫌だとは思わなかった。手と項を抑えられただけなのに、なされるがまま、抵抗はできない。

性別が男だということはもちろん分かっているのだが、チャンミンに男らしさを感じたことはあまりなかった。踊っている時くらいだ。なのに今、握られた手の強さ、熱さ、キスの巧みさ、欲情しているとわかる荒い息遣い、チャンミンの全部に男を感じて、心が震えている。キスが上手いとか反則だ、とチャニは心の中で詰る。

「ん…、チャンミン、ま、待って…」

「やだ」

ブーブーと携帯が鳴る。2人ともびっくりして、思わず離れる。画面を見ると、ヨンフンからだった。手を伸ばそうとすると、素早くチャンミンに奪われる。

「あっ、なんで!」

「出ないで」

チャンミンは着信を拒否して、テーブルの端っこにチャニの携帯を追いやった。きつく抱きしめられて、苦しい。チャニが座っていた椅子に無理やり座ってきて、チャンミンの膝の上に座らされる。

「痛いよ」

「逃げない?」

「だったら襲うなよ」

「だって…」

少しだけ力を緩めてくれる。「誰か来たらどうすんの?」と聞くと、「鍵を閉めた」と言うので、チャニはもう諦めるしかなかった。力を抜いて、チャンミンに身体を預ける。その方が座りやすい。ドア横の小窓には紙が貼ってあるのが見えて、意外な用意周到さを発見する。こんなところで発揮しないでほしかったけれど。

携帯が鳴っている。今度は短いから、メッセージが来ているのだろう。ヨンフンと約束はしていないけれど、これからしようとしてくれているのかも知れない。それなのに、チャンミンに捕まってしまった。

「ごめんね、強引なことをしちゃって…」

「本当だよ、全く。友達だと思っていたら」

「うう…」

さっきまでの男らしさはどこへ行ったのか、今は捨てられた子犬のような表情で、かわいいなと思ってしまう。思わずほだされてしまうのは、それだけチャンミンのことを信頼しているということだろう。肝心なところで、冗談など言わないし、好きだと言われて、素直に信じられる。まっすぐな気持ちと表情にちょっとときめいた。

また携帯が鳴る。
チャニがそちらを振り向こうとするから、頬に手を伸ばし、引き寄せる。キスをする。今度は奪うようにではなく、優しく。
今までも楽しくて抱きついたり、手を繋いだり、したことはあるけれど、チャニの腰を抱き寄せるのは初めてのことだ。華奢なのは見てわかるけれど、想像していたよりも細くて、壊れてしまいそうだ。

「好きだよ、チャニ。僕を選んで。僕が、もう泣かないでいいようにしてあげる」

「…ありがと」

チャンミンは嬉しくて、嬉しくて、ぎゅうっと強くチャニを抱きしめた。「痛い」と言われて、力を抜く。

「ところで、携帯見たいんだけど。さっきから鳴りっぱなし。電話はヨンフンヒョンだったけど、メッセージまで全部ヒョンとは限らないでしょ」

さっきまでの甘い雰囲気は、一瞬で消えてしまった。こんなものなのだろうか。好きな人と2人きりなのだから、もっとときめいて、もっとセクシャルなこともしたいのに、友達としての期間が長すぎて、チャンミンの思うように行かない。時計を見たら、もう晩ごはんになってもおかしくない時間だ。
2人の携帯両方に、サンヨンから晩ごはんを宿舎で食べるかどうかを尋ねる連絡が入っていた。

「ほら~、サンヨンヒョンから来てる。もう皆、帰っちゃったんじゃない?」

「帰るの?」

「帰ろうよ。お腹空いてきた」

あっさりと外に出ようとするチャニの手を捕まえる。

「返事、聞きたい」

告白して、キスもしたけれど、肝心の答えをもらっていない。チャニは顔を赤くして、視線を泳がせる。かわいくて、またキスしたくなる。

「ちょっと待って。ヨンフンヒョンにも言わないと…」

「なんで!?」

チャンミンはショックだった。告白したその答えを、第三者に相談されるなんて。しかもライバルに。

「言ったでしょ? 僕たちは付き合ってるというより、寄りかかるための杖とか宿り木とか、そんな関係なんだよ。そういうのが急になくなったら、ヒョンが困るでしょ?」

「うぅ~、でもぉ…」

確かに支えが急になくなったら困るだろう。困ればいい、と言うにはチャンミンにもヨンフンに対して情がある。でもそれより、チャニを独り占めしたい。
チャニの携帯にソヌから電話があった。まだ練習室にいるか、という確認だ。ソヌもまだいるらしい。

「チャンミン、ソヌが一緒に帰ろうって。早く行こ」

ドアを開けて、廊下に出る。出口に近い方に、ソヌがいた。

「ヒョン、お腹空いたよ~。帰ろうよ~」 

ソヌのかわいい訴えに、チャニは笑顔で「うん、帰ろ」と答える。

「ねぇ、チャニ。返事…」

チャニに置いて行かれそうになる。追いかけて、手を繋ぐ。

「もう~、また今度って言ってるだろ!」

「だって~」

子供のように頬を膨らませて拗ねるチャンミンに、チャニはさっきのときめきを返してほしい気分だ。流されかけたけれど、ちゃんと考えないと。ヨンフンに助けられた部分はたくさんある。チャンミンの気持ちが嬉しくて応えたいと思っても、簡単に乗り換えるようなことはできないのだ。

「ヒョンたち、仲直りしたんだね」 ソヌが嬉しそうに言った。

「僕たち、別にケンカなんてしてないけど? チャンミンが1人で拗ねていただけだよ」 チャニがつんとすまして言う。

「拗ねてたんじゃないもん!」 真剣に悩んでいたのだ、とチャンミンは思う。

3人でいつも通り、お喋りしながら、途中でお菓子も買って、宿舎に帰る。「おかえり」と8人のメンバーが迎えてくれる。すでにピザとトッポッキが来ていて、キッチンからはジュヨンが作るラーメンの香りが漂ってくる。

皆で仲良く食べる。もう自然に振る舞える。もう迷わない。

チャンミンはご飯をいっぱい食べながら、チャニの隣に当たり前のように座るヨンフンに向かって「絶対負けないぞ」と念を送った。



End.

Salty

Road to KingdomでThe Boyzにはまりました。"少年"と"No Air"という曲が好きで聞いてたくらいだったんですが、もう見事にやられてしまいました。"Salty"も曲名です。甘々な曲で良いです。
はまったら腐らせずにいられない。素材が良すぎて困る。
夢系は多少ありますが、腐はほとんどないのか見つけられなかったので、いつもどおり自家発電です。
パンニュが美しすぎてお気に入りのカプですが、推しはジェイコブくんです。キューニューウユもかわいすぎるし、ミルコブも溺愛具合がすばらしいです。

Salty

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-14

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