地下鉄にて

 ミキは地下鉄の窓ガラスに映る自分の顔をふと見つめた。眉間に影を見つけて、思い直す様に静かに深呼吸をした。
朝の通勤電車の中だ。後15分乗る。

 何処かに自由に行けるとしたら何処がいいか。
今日は雨で車内は湿気が感じられる。
からりとした風が吹く場所がいい、とミキは思う。
 ハワイの海も最高だが、北海道はどうだろうか。
花咲く丘が続く初夏の北海道。レンタカーの幌を開けて加速したら髪がなびくだろう。遠くでポプラも風に揺れている。
 ミキは少し腕を広げてみる。体が宙に浮いて、彼女も風に乗り、緑の丘を巡る。

地下鉄にて

地下鉄にて

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-13

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