優しい毒
「誰にでも優しいなんて、誰にでも優しくないのと一緒だよね」
「じゃあ、特定の一人にだけ優しくするのは優しさって言えるわけ?」
優しさなんて、倫理観なんて、囚われすぎると人を線引きしすぎるものだろう。僕達には、その自覚が無いのか。
きみの思う優しさと僕の考える優しさは重ならない、重なるはずがない。その齟齬が僕であり、きみなんじゃないのか。それを否定したら、何が残るっていうんだ。なあ。自分で自分を、突き放さないでくれよ。
"意味があることが、そんなに大事か?
意味がなければ、お前は動けないのか?"
(いつまで経っても更新されない画面を見ている、見せられている
諦めの滲んだ目で、何も知らなかった頃の二人を空想している)
優しい毒が緩やかに、全身にまわっていく。
優しい毒