貴方ならよかった

一定の音しか出ない機械音が部屋に響く。
目の前にはこの前までたくさん喧嘩して、一緒に遊んでた冷たくなった女の子の体がある
あれ、最後に一緒に遊んだのはいつだっけ。思い出せないや。


妹は悪性リンパ腫だった。この病気はとても珍しいものらしい。それも子供のうちでなるのはとても低い確率らしい
初めて妹が病気と聞いたのは2年前。
その時私は受験生だった。一生懸命勉強した。たくさんたくさん頑張った。いいところにいきたかった。

ただ、褒められたかったから。妹ばっかじゃなくて、私のこともちゃんと見てほしかったから。

すごく難しいと言われている高校に受かった。でも、ダメだった。その時期に妹が悪性リンパ腫だとわかった。
妹は昔から体が弱かった。だからみんな妹のことばかり。もちろん私のこともかまってくれた。でもすぐに妹の方へ行く。みんな妹の方が可愛がった。心配した。妹の方がたくさん構った
あたりまえだ。妹は体が弱い。それにとても優しい。こんなクソな私にも優しくしてくれる。

それと反対に私は最低だった。「妹よりもかまってほしい、妹よりも心配してほしい、私も病気になればみんなたくさん心配してくれるのかな?」ってちょっとでも思ってしまった。妹はなりたくて病気になったんじゃない。学校だって行きたいはずなのに…。私は最低だ。


私は昔から体が弱かった。悪性リンパ腫と聞いたときは何も考えられなくなった。そんなことない、私はみんなよりもちょっと体が弱いだけ、そんな病気なんかじゃない。私の体は普通だ。そう思っていた。でも、違った。ただただなんで?なんで私なの?そんな言葉しか出てこなかった。

家に帰って、ベッドの中でひたすら泣いた。自分が病気だと思うのが怖かった。調べたら死ぬかもしれないということがわかった。
いやだ、死にたくない。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

その後入院生活が始まった。皆優しくしてくれる。心配してくれる。たくさん構ってくれる。私には。

入院してから何日かたった。今日はお姉ちゃんの受験の合格発表の日だ。なのに、みんな私のことばっかり。
お姉ちゃんが病室に来てくれた。すごく難しいと有名な学校に受かっていた。誇らしかった。私もすごくうれしかった。お姉ちゃんは私の自慢だ。勉強ができて、可愛くて、優しくて、かっこいい。

お姉ちゃんが嬉しそうに、褒めてほしそうにお母さんに受かったことを言った。
お母さんが言った。

「おめでとう!よかったわね!!そんなことよりちょっとナースさん呼んできてくれない?診察の時間だわ」

お姉ちゃんの顔が曇った。泣きそうな顔して、下手な作り笑顔をして「うん!」といった。罪悪感がブワァっと沸き上がった。いっつも私のこと優先でお姉ちゃんが悲しい思いをしていることを知っている。お姉ちゃんがこうゆうとき誰もいないところでひっそりと泣いているのを私は知っている。

お姉ちゃん、ごめんね


妹が入院してから1年半がたった。家族とほぼ話さなくなった。妹と遊ばなくなった。
久しぶりに病室に行った。妹はすごく細くなっていた。弱っていた。そんな妹を見ていたくなかった。悲しくなった。見ているだけで私の自慢の妹が弱っていることが考えないようにしてもわかってしまう。
それなのに、妹は「久しぶり!!お姉ちゃんに会えてうれしい!!今日は遊んでくれる?」という。すごくうれしそう。何でだろう。なんでこんなうれしそうにしているのだろう、何か特別な日でもないのに。


私は病室に来るのが嫌いだ。弱っていく妹の姿を見たくなかったということもあるし、妹と自分の愛情の差をいっぱいいっぱい感じてしまうから。だから早く出ていきたかった。それに、         妹を妬んでしまうから

なのに…何で…そんなこと言うの?この最低な私に、やめてよ…。


「遊ばない!いやだ!!こんな場所にいたくない!あんたは私なんかと遊ばなくてもいっぱい遊んでくれる人がいるでしょ!!??私はあんたと...........いたくない。」
あぁ、言ってしまった。私、最低だ。妹が泣いている。でも下手な作り笑顔をしながら「ごめんね…」といった。私は急いで病室を出た。

なんでごめんねなんて言うの?悪いのは全部私なのに…。


家に帰ってから知った。今日は妹の脳にたまった水を抜く手術の手術日らしい。
だからか、妹があんなにも嬉しそうにしてたのは。私は急いで病院に行った。無我夢中で走った。妹の手術が成功することを必死に祈った。途中ころんで足から大量の血が出た。でも不思議と全く痛くなかかった。  あれ、病院ってこんなに遠いっけ

ようやく病院に着いた。息を切らしながら、血を出しながら妹の手術室を聞いて、手術室の前に急いで行った。
手術中という赤いランプがついている。

必死に、ただただ妹の手術成功を祈った。
そのとき、ランプが消えた。

手術は成功








したはずだった…。

貴方ならよかった

貴方ならよかった

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-12

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