バックスペースキーについて

バックスペースキーについて

脳みその中で情動がスペクトラムを描くけどね、実際目の前の出来事は一つしかないんだ。なのに、その情動をいじくりまわして表現することは知的生命体の特権だ、とか偉い人が言った。ほんとうはただの欠陥なのにね。
何万文字書いてもバックスペースキーを押せばすぐ消える。執筆なんて、それだけの薄っぺらい行動。人は、目新しいお気に入りのものを見つけるとすぐ天才だっていいたがる(信憑性はないけど)。でも僕は消されるために書かれた作品が何より好きだって言いたい。たとえばきみが昨日星空文庫に投稿したあの作品が、十年後のきみにメールで届いて、それを見た十年後のきみはどう思うか。知ったこっちゃないけど、結局デジタルタトゥーなんてコンピューターの中にしかないんじゃないの。いまや初音ミクですら自傷行為してるよね。なんでもがサブカルに変換されて、サブのつかないカルチャーなんてどこにもないよね。それが悲しいんだろ、ざまあみろ。でも安心してほしい、むかえにいくよ。僕は今日もまた、寝れないっていう身勝手な理由だけで痛々しいタイトルの作品を漁っています。美しくもなんともない、言うならば駄作でしかないもの。ただ、十年後に存在を認められないからこそ、今を生きる僕が軽蔑しては心惹かれるもの。

バックスペースキーについて

バックスペースキーについて

いまや初音ミクですら自傷行為してるよね。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-11

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