きみの好きな恋愛ドラマがぼくには響かないで
あい、なんてものがほどけたとき、きみがみていた恋愛ドラマのあの、いっそのことうざったいほどの少女漫画をすればいいのに、かっこつけたみたいに文学小説を気取っている感じが、まよなかのからだに毒々しいものを流し込んだ。
街の教会で、おんなのこたちが歌っているのは、神さまをおしたいしての賛歌で、ぼくたちは神さまというひとのことを、ほんとうはよくしらないのに、どうしてか、かんたんに、祈ってしまう。
おわりのない夜のなかで、ぼくは、実体のないいきものとねむり、朝になって、ひとりになったベッドのうえで、おわりのない夜なんてものは、所詮、まやかしだったげんじつを、なによりもうらんでいる。おんなのこたちの歌も、もうきこえないで、朝には朝の音が、たとえば、新聞配達のバイクの音や、早起きの鳥のさえずりなんかが、すがすがしく存在していて、指ひとつ動かすのも億劫な、気怠いからだに、脅迫めいたようにつきまとってくる。
起き抜け、たまごをわる、瞬間の、なぜか、ぬっ、とあらわれる、ざいあくかん。
実体のないいきものは、実体がないくせに、あたたかくって、やさしかった。
きみの好きな恋愛ドラマがぼくには響かないで