反射神経について

反射神経について

触れられると、手をはたきたくなること。どこまでも続く地平線に、感動すること。ほんとうは目に見えるもの全部、そう感じているだけなんだって、誰かが言っていた。生物の時間は退屈だけど、すごく大切なことを勉強しているらしい。
条件反射みたいに叩き込みたい。見たもの全部。一瞬ぱっと目の前が白くなるとか、ぐわーっと頭の中にぐちゃぐちゃが広がるところとか、ふわっと原子が抜き出されてぽっとはじけるところとか、すうっと浮かんで宇宙を眺めるところとか。感じているだけならそれでもいい、神経線維を青い電流が走るところとかをカメラでとらえたい。くだけた日本語を使うなって大人たちは言う。でも、あなたたちはかつて愛だの恋だのそんな言葉に満足して、心拍数の元凶を言い表したんでしょう。眼球をカメラに例えるような真似はしたくないんだ。
早口なのに滅茶苦茶なことを言ってる人がうらやましい。
病名も夕立も白亜紀もみんな、ぼくの影でしかない。走れ、飛べ、絶対に止まるな。心臓をもっとはやく拍動させろ。まばたきのあいだにいくつもの歴史が開いたり閉じたりしながら点滅する。反射神経を鍛えてどこかに叩き込みたい、でも反射神経なんて鍛えられない。だから書を捨てて街に出る? わからない! 今ってことばがいまになって、ばちばち音を立てる。線香花火みたいに。ばちばちとしか音を立てないからまともな日本語にはならないけど、それをくやしいとかしょうがないとか、そういうものが目まぐるしく動いた。膨らんで落ちた火はぱちっと跳ねると、完全に沈黙した。ぱちっと、の間に高ぶったこれは感情未満であって、ぜったいに感情なんかじゃない。

反射神経について

反射神経について

一秒間に五兆作くらい書くことができればいいのですが。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-10

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