やさしいレモネード
レモネードのきいろが、やさしい色をしていたから、この星がまるいのも、うらがわがあるのも、朝と夜がはんたいであるのも、なんとなくゆるせた。だれもいないあいだに、教室のつくえが、深海になげこまれて、わたしたちはすこしだけ、存在意義、というものをなくした気がした。さびれた街のはしっこに、ひっそりとたたずんでいる喫茶店で、きみと、つめたいレモネードでかんぱいした夏に、わたしはひまわりの葬列をみた。もう、そろそろ、ひだりあしから、透けているけれど、きみがすくいあげた、やさしさ、というものだけで、わたしは、わたしでいられると思った。途方もなく遠い朝にむかって、わたしたちいきものは祈り、浅い眠りのなかで、夢のつづきがぶつ切りとなって、上映される。虫食いのフィルム。うれしいこととかなしいことと、たのしいこととむなしいことが、いっぺんにきたときの、あの、やるせなさ。忘れらんないよ。
やさしいレモネード