廻蛍やぐら
謎解きはたのしいかね
薄暗いやぐらの中で、遥か昔から賭けをしている
苔は体を寄せ合い
わずかな陽光を逃すまいと息づく
雨水は岩を這って小さな窪みに流れ、淀みとなる
一匹の羽虫が落ちる
謎解きはたのしいかね
いつものように曇天の蚊帳に蛍を放つ
呼気の隙間を埋めながら発光するそれらは
いくつかの点を結びながら四方に散り
そして、いつしか消える
謎解きはたのしいかね
何度目かの転生によって
苔はさらに青々と繁り湿潤に歓ぶ
雨水は絶え間なく流れ、窪みは一層深まり
羽虫が沈殿する淀みの上澄みが煌めく
謎解きはたのしいかね
いつも誰かと果てなく賭けをしている
後ろ手に密かに握った青磁の破片で、柔らかい部分に印をつけながら
やがて殻と芯は引き離され
どちらか残ったものだけが、靭やかな苔の褥で眠ることができる
あの言葉がやぐらにこだますれば目覚めて
再び終わらない賭けごとがはじまる
今が一体、何時なのかあなたには分かるか?
明滅。
いつものように、また放たれる蛍。
廻蛍やぐら