廻蛍やぐら

  謎解きはたのしいかね

薄暗いやぐらの中で、遥か昔から賭けをしている
苔は体を寄せ合い
わずかな陽光を逃すまいと息づく
雨水は岩を這って小さな窪みに流れ、淀みとなる
一匹の羽虫が落ちる


 謎解きはたのしいかね


いつものように曇天の蚊帳に蛍を放つ
呼気の隙間を埋めながら発光するそれらは
いくつかの点を結びながら四方に散り
そして、いつしか消える 


 謎解きはたのしいかね


何度目かの転生によって
苔はさらに青々と繁り湿潤に歓ぶ
雨水は絶え間なく流れ、窪みは一層深まり
羽虫が沈殿する淀みの上澄みが煌めく


 謎解きはたのしいかね


いつも誰かと果てなく賭けをしている
後ろ手に密かに握った青磁の破片で、柔らかい部分に印をつけながら
やがて殻と芯は引き離され
どちらか残ったものだけが、靭やかな苔の褥で眠ることができる
あの言葉がやぐらにこだますれば目覚めて
再び終わらない賭けごとがはじまる


 今が一体、何時(いつ)なのかあなたには分かるか?


明滅。
いつものように、また放たれる蛍。

廻蛍やぐら

廻蛍やぐら

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-08

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