ねがう

 夏をかぞえれば、またあえるのだから、それでいい。
 逆?
 夏をかぞえると、あえない時間のながさが、残酷だってわかる。
 星型のプリンをつくって、うれしそうだったルナが、いつか月にいこうといったけど、べつに月じゃなくっても、けっきょく、いいのだった。
 船づくりはすすまないし、およぎかたはわからないし、とべないし、できないことばかりをかぞえて、このゆびじゃたりなくって、かなしくなる。
 あしのつめをふかい夜色に塗ったの。ルナ、なつかしそうに、つめを撫でる。
 もう、これ以上願われたくない。
 都合のいいことばかりかんがえている。
 ねむっていたころ。ねむりからさめて大泣きした。ねむってもねむっても、おきるしかなかった。
 もうすぐ、ずうっと、ねむっていられる。
 月もぼろぼろ。クレーターに、うつくしい海だけがひろがっている。
 あの星は、おおむかしに永遠のねむりについた。その奥から届く熱が、よわくなってゆく。
 もうすぐだ。
 夏がなくなったら、季節が死んだら、あえなくなるのか、かんけいなくずっといっしょにいられるのか、きめるのはぼくらじゃなくって、悲劇がだいすきな連中の犠牲になることだけが、現実だった。

ねがう

ねがう

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-07

CC BY-NC-ND
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