妄想写真エッセイ『看板猫』

妄想写真エッセイ『看板猫』

撮影場所:西川理容店

 
 西川理容店には看板猫がいます。名前は"もんた"。もんた君と出会ったのは名古屋の円頓寺商店街でやっていた猫の譲渡会でした。そのころはまだ小さかったのですが、譲渡会のおばさんに「この子は大きくなるよ」と言われたとおり、今ではちょっとした犬くらいの大きさになりました。
 もんた君はカメラが嫌いなので、この写真ではムスッとした表情をしています。
 もんた君は好き嫌いがはっきりしています。食べ物に対してや人間に対してもです。いつもはお店でのんびりしているのですが、自分が苦手なお客さんが来ると、すっと店の裏に引っ込んで、お客さんが帰るまでじっと待っていることもあるようです。基本的にはみんなに対して寛容に接してくれますが、『大脱走』のスティーブ・マックイーンのように隙あらばお店から脱け出して外の世界へ繰り出すこともあります。油断できません。男の子ですが、首輪はピンクを付けられています。ジェンダーフリーな猫です。
 それから、父がときどきリードをつけて近所を散歩することもあります。何度か犬に間違えられたこともあるようです。

妄想写真エッセイ『看板猫』

〈あとがき〉
もんたは、ひとりっ子の僕にとって、初めてできた弟のようで、それと同時に彼の堂々とした態度は兄のようでもありました。けれども、そんな大好きなもんたは数年前に亡くなってしまいました。良い人や良い猫ほど先に旅立ってしまうものなのかもしれません。

妄想写真エッセイ『看板猫』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted