この気持ちを言うなれば④
4月の中頃。
私は昔世話になった人の家に携帯を忘れたという失態をした。
よく私の話や悩みを聞いてくれる人だ。
『今忙しいから、お互い時間空いたら取りにおいで』
『わかった、私はいつでも良いから、少しでも空いてるなら連絡ちょうだい。すぐに取りに行くから』
キミと連絡が取れないのが…悲しい。
早くキミとの繋がりが欲しい。
私とキミって、携帯しかないんだよ。
それから長い、長い一週間が経って
携帯が私の手に戻ってきた。
『忘れるなよ、馬鹿』
『別に好きで忘れたわけじゃないよ』
貴方と喋る時間が勿体ない。
早くキミにメール送れなくてごめんねって謝ってそれから
『なぁ、らんな。お前さ…好きな奴いんの?』
『なんで言わなきゃいけないの?』
目が合った貴方が、いつもと違う様に見えて
真っすぐ、真剣な顔だから
嫌な予感しかしなかった。
『止めとけよ。らんなのこと好きじゃないって言ってたし?』
『…………は…何…言ってんの?』
私が忘れた携帯で、貴方は私の代わりにキミとメールしたんだって。
私が、ずっと……ずっとずっとずっと
言いたかった言葉を…さ
伝えたかった言葉を、だよ?
私じゃない
第三者が、キミに教えたんだ
『……らんなにそういう感情は無いってさ』
『なんで…なんで余計な事したの?!私はこのままで良かったんだよ!』
叫ぶしか、嘆くしか
私の想いが
知らないうちにキミに…
そして、キミは私を………
あぁ…キミは、私のこと何とも思って無かったんだね。
私だけが、キミを好きで
どうしようもないくらい、好きだったんだ
『この一週間のやり取りは無かったことになってる。メールも見るだろうから消した』
貴方はいつまでもクヨクヨしてる私に痺れをきらしたんだ。
私が臆病だから……そう思ったら
責める気持ちは不思議と消えてた。
ただ
もう、キミに連絡取れないのかな、とか
キミは私の気持ちを知って
今まで通りで居てくれるのかな、なんて
そんな思いだけが心を埋め尽くすの
確認したくても、貴方が言った通り二人のやり取りがあっただろうメールは削除されていて
私が、送っていいのかな?
拒否られてたらどうしよう
なんて、送れば…いいのかな…
『お久しぶり。ちょっと仕事が忙しくて連絡出来なかったです。心配かけました』
うん、まあ…大丈夫なんじゃない?
普通な感じでさ
返信は時間掛かるかなと思ったのに、意外と早くメールを知らせる着信が鳴った。
『嘘つけ』
…………何、このメールは?
『な、何さ?』
『知ってるよ。メールしたら今携帯預かってるって言ってました。だから連絡しなかったんじゃなくて出来なかっただけゃろ?小さくても嘘はついたらダメですよ』
え?二人のやり取り無かったことになってるんでしょ?キミって隠す気0じゃん。
『らんなさん知らない事になってると思うので終わりにしましょ。態度にも出したらダメです』
キミは、嘘が嫌いな人間だったね。
そうだった…忘れてたよ。
『はーい、ごめんね』
『そういえば、らんなさん浜松の人とはどう?』
きた…何となくは予想してた。
『へ?あーなんで?別に何も…だって、好きとかじゃないし』
『そっかーそれは他に好きな人がいるから?』
なんでそうなるの…?
文脈的に可笑しいよね。
『好きと言うか…見守ってたい人がいる。これって好きってことなのかな?』
『うん…わからないですけど。見守りたいのはホントに好きなのかもですね。ちなみに自分知ってる人ですか?』
『あーそうなんだ。うーん、知ってる人かも』
『それ本気ですね。自分も本気だった人にはそうだったから。自分ではないですよね?』
『そっか、私本気なんだね。びっくりだわ。うんうん…キミ彼女いるし』
『気になる人いるんだ。なら自分じゃないですね?自分嘘嫌いなん知ってると思うんでらんなさんは嘘は付かないですもんね』
ちょ……この人、何言ってるの…?
笑えない
もしかして、キミは私にこの言葉を吐かせたいの?
なんで?
どうして?
私に何の興味もないくせに
私に何の感情もないんだって
言ったんでしょう。
キミは今何を考えてるの?
キミは今どんな気持ちなの?
…キミは………どうせ…
私を好きになってくれないんでしょう
駄目だ、考えても悩んでも解らないや
私の気持ちを知ってるなら
言ってしまおう
もう、失うものなんてないから
『…正直に言うよ…私が好きなのは、キミだよ』
このままで良かったなんてウソだ。
例え叶わなくても
例え終わってしまっても
後戻りなんか、出来なくても
ずっと…知って欲しかった
私はこんなにも
キミが好きなんだよ
この気持ちを言うなれば
切願
お願い
キミの心に…届いてよ
この気持ちを言うなれば④