自己紹介について

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こんにちは、僕です。自己紹介、終わり! って切り上げたいけれど、世の中そんな簡単にはいかない。でも、本当に自己紹介で語ることがないんだ。白い画用紙を与えられただけで、その上にぐちゃぐちゃの線を引いて満足する幼稚園児に嫉妬している。誕生日を言ったところで誰も覚えてはくれないし、住所を言うのは自分には生活というものがありますよって誇示しているみたいで、いやだな。
いつからだったか、学校で話す友人たちがほんとうは生きていないんじゃないかって気がしていた。お母さんやお父さんの話は薄っぺらく聞こえた。彼らは僕との会話のためだけに存在していて、ただそれだけなんだろうなーって。親しくなればなるほどそうだった。もしかしたらこれは、僕が卒業式を気楽に過ごせるように三年前から備えられていたぼうえいほんのう、なのかもしれない。二つ年上の先輩にいたっては、バスに乗っていること自体が、なんだかとっても、シュール「!」 で、一つ年下の後輩に弟がいることは何度聞いても信じなかったよ。
家にいてもいなくても、君たちの人生にはなんの影響も与えない。だから僕は自分のことを実在の人物なのかどうかはっきりと答えられなくて、だから自己紹介はしたくなかった。裏垢とか作ってたら自分の境界があいまいになる。もうみんな架空の生き物ってことにしていいですか。

自己紹介について

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自己紹介ってホント苦手……

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-06

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