ルル、夜明けがこない

 ルル、きみはいつになったら、わたしの血となり、肉となるのか。
 ときどき、しらない惑星からの通信がはいると、深夜の街はざわめき、わたしは、ファミリーレストランで、本を読んで過ごした。住んでいるアパートから、徒歩三分の、ふつうの、なんてことはない、よくあるファミリーレストランの、フライドポテトが、ルルは好きなのだった。わたしのからだからはなれてしまったルルは、もしかしたら、どこか遠くの、宇宙の果てに飛び立ってしまったのではないかと、わたしは思っていて、恋人は、でも、この星からいなくなったことを、死、と捉えているようだった。わたしは、ちがうのに、と思いながら、日に日に欠けてゆく月をながめているときに、すこしだけ泣いた。ルルの体温、というものを、わたしはしらないけれど(だって、ルルは、わたしのからだのなかにいたので)、ルル、という人格が、おおきなくまのぬいぐるみの、おなかのあたりのやわらかさに似ていることに、わたしは安堵していた。わたしのからだのなかにいるのが、ルルでよかった、とも思っていた。フライドポテトのソースは、かならず、ケチャップとマヨネーズで、それを、ポテトのせんたんでまぜあわせるのが、ルルのたべかただった。深夜のファミリーレストランにいるひとは、みんな、どこかさみしそうで、孤独、というものが、ひっそりとただよっているのだった。読みかけの本を閉じて、わたしはコーヒーをのんだ。わたしも、この、さみしさのなかにひたって、孤独をかみしめていた。
 ねむれないのだ。

ルル、夜明けがこない

ルル、夜明けがこない

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-06

CC BY-NC-ND
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