ルル、夜明けがこない
ルル、きみはいつになったら、わたしの血となり、肉となるのか。
ときどき、しらない惑星からの通信がはいると、深夜の街はざわめき、わたしは、ファミリーレストランで、本を読んで過ごした。住んでいるアパートから、徒歩三分の、ふつうの、なんてことはない、よくあるファミリーレストランの、フライドポテトが、ルルは好きなのだった。わたしのからだからはなれてしまったルルは、もしかしたら、どこか遠くの、宇宙の果てに飛び立ってしまったのではないかと、わたしは思っていて、恋人は、でも、この星からいなくなったことを、死、と捉えているようだった。わたしは、ちがうのに、と思いながら、日に日に欠けてゆく月をながめているときに、すこしだけ泣いた。ルルの体温、というものを、わたしはしらないけれど(だって、ルルは、わたしのからだのなかにいたので)、ルル、という人格が、おおきなくまのぬいぐるみの、おなかのあたりのやわらかさに似ていることに、わたしは安堵していた。わたしのからだのなかにいるのが、ルルでよかった、とも思っていた。フライドポテトのソースは、かならず、ケチャップとマヨネーズで、それを、ポテトのせんたんでまぜあわせるのが、ルルのたべかただった。深夜のファミリーレストランにいるひとは、みんな、どこかさみしそうで、孤独、というものが、ひっそりとただよっているのだった。読みかけの本を閉じて、わたしはコーヒーをのんだ。わたしも、この、さみしさのなかにひたって、孤独をかみしめていた。
ねむれないのだ。
ルル、夜明けがこない