遠くても。
遠距離でも、大丈夫。
少し切なくて、甘い話です。
これを見て、彼に会いたい!
なんて思ってくれたらいいな。
「これからは、こうやってあうことも少なくなるんだね。」
彼が寂しそうに呟いた。
「大丈夫、たしかに寂しいかもしれないけど、会えなくなるわけじゃないんだから。」
安心させるように私は言った。
付き合って3年。
ずっと一緒にいた私たちは、明日から離れ離れになる。
彼の急な転勤。
今までずっと一緒にいたから、寂しいのは当たり前。
だけど、私たちなら大丈夫。
この気持ちは変わらない。
ずっと…。
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初めて会ったのは街外れにある小さなバー。
毎週水曜日に通うことに決めていた。
でも、その週は何だか違う日に言ってみたくなって。
その週は金曜日にいくことにした。
カラン、
店の扉を開ける。
いつもの店なのに、なんだか楽しい。
いつもの席に座ろうとして、ふと、隣の席の男性に目がいった。
その男性が、今の私の恋人。
座るのも悪いかな?とは考えたけど、
主人がいつもの席にどうぞ、と微笑んでくれた。
すこし緊張したけれど、隣に座ることに。
「今日は珍しいですね?」
と、主人が私に話しかける。
「えぇ…なんとなく。」
隣を気にしながら、私はそう言った。
「彼も、いつもきてくれるんです。」
と、隣の彼を見ながら主人は微笑んだ。
「へえ、そうなんですか。あ、いつもので。」
「かしこまりました。」
そういって主人は厨房へ向かった。
「…貴方も、常連さん?それにしては見ない顔だけど…。」
急に声をかけられて、びく、と体が揺れた。
「あ…はい。水曜日しか来ないですけど…。」
ぎこちなく、返事を返す。
すると彼は微笑んで、
「へえ!道理で見ないと思った、なるほどね。」
うなずきながら一人で納得している彼。
「あぁ、自己紹介をしていなかったね。僕は村井 将人(ムライ マサト)。25歳で今は新聞会社で働いてる。」
軽く微笑みながら、村井さんは言った。
「へえ、新聞会社ですか?」
「うん、そう。仕事を転々としてて、今もいつやめるかわからない。」
すこし疲れた顔をしていたのは、それだったのか。
なんだか納得した。
「君は?」とたずねられたので
「柳野 朋香(ヤナギノ トモカ)です。23歳で某会社で働いてます。」
遠くても。