儚い煙とうつろな瞳
いつだって言葉を尽くすことに必死だった。自分に対しても、自分ではない誰かに対しても。尽くした気にはなっても実際に尽くせた試しはなくて、吐いた先から色のない煙になって消えていくようだった。きみもこんな煙を吐いていたのだろうか。きみにしか視えない、決して透明ではないもの。そんな痕跡を探しだしたかった。きみの慟哭を逃さないように、目を背けないように、わすれないように、あの空に溶けてしまう前に。墓地であるその空は弔いを待ち望んでいるだろうか。きみが見ている空と僕が見ている空は繋がっているようで繋がっていない。繋がることもなければ重なることも交わることもない。きみの幻影が僕にそう諭しているような気がする。僕の幻影もきみにそう諭しているのだとしたら、僕は正面からそれを否定したい。きみが否定してくれるかはわからないけれど、僕はきみに対してそう伝えたい。きみが楽になるのなら、動けないトルソーになって傷つけられるのも厭わない。僕はそれでいいのに、必要以上に優しいきみを前にすると、不必要な言葉を並べ立ててきみを怒らせたくなってしまう。怒って、と言いたい。怒って。きみの、きみの言葉が聞きたい、心に触れたい、ただそれだけなのに。どどめ色の空が僕らを見下ろしている。ひとりでいるときの孤独感より、ふたりでいるときの孤独感の方がつらいことなんて、そんなこと、もうとっくに分かっている。ふたつの口からとめどなく漏れる煙が、破れそうな空をきょうもを灰色に烟らせている。
儚い煙とうつろな瞳