写真エッセー『赤ちゃんロッカー』

西川 真周

写真エッセー『赤ちゃんロッカー』

撮影場所:桑栄メイト1階

 
 僕の地元の桑名には桑栄メイトというノスタルジックな複合用途ビルがある。桑名駅東口と直結していて桑名民なら知らない人はいない。たぶん。
 地上6階、地下1階建てのこの鉄筋コンクリートのビルは桑名駅前市街地再開発事業の一環として1973年に建設されたそうだ。ビル内には飲食店・物販店・サービス店・事務所・診療所などの店舗の他に、5階と6階は住宅スペースとなっている。

 桑栄メイトに入ると建設された当時の1970年代の雰囲気がそっくりそのまま残されているように感じられる。ちょっと大げさかもしれないけれど、僕にとって桑栄メイトは『ジュラシック・パーク』に出てくるジュラ紀の蚊を保存していた琥珀みたいなものだ。映画ではこの蚊が吸った血液から恐竜を再生させてとんでもないことになってしまう。
 話が逸れてしまったが、僕にとってこの建物は異空間のようにも感じると同時に遠い昔から知っているような温かい懐かしさを味わうこともできる。とにかく不思議な建物だ。

 前置きが長くなってしまったが、この写真は桑栄メイトの1階にある「手荷物一時預り所」a.k.a.「赤ちゃんロッカー」を撮ったもの。ロッカー全体に大胆にプリントされた赤ちゃん。今は何歳になっているのだろう。どこでどんな人生を送っているのだろう。人生の伴侶と出会い、子どもを2人くらいもうけているのかもしれない。ひょっとしたら孫もいるのかもしれない。その孫がまたどこか違うところのロッカーにプリントされているのかもしれない。この一族は代々ロッカーにプリントされる宿命を背負わされているのかもしれない。そんな宿命にうんざりして長い旅に出るが、最終的にはロッカーにプリントされることで救われたりするのかもしれない。

写真エッセー『赤ちゃんロッカー』

写真エッセー『赤ちゃんロッカー』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-03

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