再会

森下巻々

※成人向け・強い性的表現があります。

・―――
|『一九九X年、夏』
|高校を卒業して二年目の巳川丸実が、図書館
|の駐輪場から自転車に乗って通りに出ると、
|小さな本屋の前をウロウロしている、高校生
|時代の同級生、森鈴子が視野に入った。自販
|機で飲料を買うようなふりをして、行きつ戻
|りつしている。
|丸実は志望美術大学に落ちて二浪中、隣町の
|予備校まで電車通学していたが、鈴子の方は、
|同じ地域の経済大学に受かって、そのまま通
|っているはずである。実際、視線の先の彼女
|は、イマドキの学生風に見えた。
|彼がソロソロと、ゆっくり近づいていくと、
|「わッ。びっくりしたあ。ミカワ・マルミ・
|クンじゃない?」
|「なんだよ。その、フルネームで呼ぶのやめ
|てくれって言ってただろ」
|丸実は、そうやって嫌な顔をしながらも、鈴
|子が自分の名前を覚えていてくれたことが嬉
|しかった。
|「じゃあ、丸実クン」
|「巳川でいいよ」
|「そんなあ。高校じゃないんだし。私、丸実
|って名前の語感が好きなの」
|「まあ、どっちでもいいけど」
|鈴子は、髪を高校生の時と変わらずショート
|カットにしていた。首が長く、顔は小さく、
|スラリとした姿は、モデルが直ぐにでも務ま
|りそうだ。そういえば高校時代は陸上部だっ
|たなあ、と丸実は思って、
|「今でも走ってるの?」
|鈴子は首を横に振って、
|「やめたわ。今は文藝サークル」
|「そうなんだ。俺も、一応文学にも興味があ
|るんだ!」
|「そうなの! ってゆうか、ちょうどいい所
|に丸実クンと会ったと思って。頼みを聞いて
|くれる?」
|「なッ、何?」
|「お金あげるからさあ、『週刊プレミアムボ
|ーイ』買ってきてくれない? 山川メリイが
|表紙のはずよ」
|「いいけど……」
|丸実には小説や美術専門誌以外に雑誌を買う
|習慣がなかったが、鈴子から五〇〇円玉を受
|け取って本屋に入ると、直ぐにどの雑誌かが
|分かった。
|表紙写真は、鈴子の言った通り、山川メリイ
|だった。クリクリとした目、大きな胸をもっ
|ており、最近テレビのバラエティー番組で、
|よく見る顔だ。グラビアアイドルという風に
|呼ばれているタレントの一人らしい。表紙に
|は、そのほか、政治のニュースに関する言葉
|や、ヘアヌードという言葉が踊っていた。本
|屋のレジには、眼鏡を懸けた親爺が一人、腰
|掛けていた。お金をやり取りしたときに一言、
|有難うの言葉があった。
|本屋を出ると、『週刊プレミアムボーイ』の
|入った紙袋とおつりを鈴子に渡した。
|彼女は安堵した表情を見せ、
|「有難う」
|「週刊誌? そういうの読むんだ?」
|「うん。いつもは兄の買ってきたのを読ませ
|てもらうんだけどね。今週は合宿に行ってて、
|自分で買うしかなくなって……、でも、恥ず
|かしくて」
|「確かに、男の買う雑誌って感じだね」
|「兄は毎週買ってるわ」
|「お兄さんも、大学生?」
|「ええ。さっきも言ったけど、今日はゼミの
|合宿でいないの」
|いつからともなく、同じ方向に向かって歩き
|出していることに、丸実は気づいて、
|「あれ? 俺、帰るんだけど、こっちの方向
|でいいの?」
|「うん。ってゆうか、私の家に寄ってってよ。
|相談したいことを、思い出しちゃった」
|暑い陽射しの下、スカート姿の鈴子からは甘
|い匂いが煙るようだった。
|  *
|民家の間に、ぽつぽつと商店のある建物の並
|びに、その家はあった。『森商店』と錆びた
|看板がついている。
|「森サンの家も商売やってるんだっけ? こ
|の辺、店が結構あるもんな」
|丸実がつぶやくと、鈴子は、
|「うーん。もう、やってない。お父さんとお
|母さんは別の所で事務所作って何かやってる。
|これからは、インターネットの時代だ、って
|いうのが、お父さんの口癖」
|「インターネットって、パソコンのでしょ。
|ああいうの難しそうだよね」
|「でも、兄もそういうことを大学でやってる
|らしいの。家族で分からないのは私だけ! 
|PHSだって持ってないんだから」
|「そうなんだ。俺も持ってないけど」
|丸実が鈴子に付いて入ったのは彼女の部屋で
|ある。ベッドが置かれているが、まだ充分に
|余裕が生まれる広さである。しかし、実際は
|カーペットの上に本や雑誌の積まれた塔がい
|くつもあって、雑然としていた。
|「ごめんね。散らかしてて、ベッドに坐って
|よ」
|丸実にとっては初めての女の子の部屋だった。
|本に埋め尽くされていることにはびっくりし
|たが、ベッドに坐れることは、むしろラッキ
|ーだった。
|「ちょっと待ってて。缶ジュース持ってくる」
|鈴子がその場を離れると、丸実はエアコンの
|効き始めた部屋をあらためて見回した。
|よく見ると、壁紙はうっすらと桃色をしてい
|るし、カーテンもハートマークの散らばった
|可愛らしいデザインだ。角の勉強机には造花
|が一輪飾られてある。部屋の雰囲気を変えて
|いるのは、明らかに床に散らばった書籍の山
|なのだ。
|そんなことを考えている内に、自宅に居る気
|持ちになってしまったのだろうか、彼はいつ
|のまにか枕を手にしてしまっていた。
|最初はベッドの端に置き直してみたものの、
|甘い匂いに誘われて抱き寄せてしまった。
|桃色の布地に顔を埋めると、思いっきり息を
|吸い込んだ。
|「ああー。いい匂い」
|独特のムッとしたものが鼻腔を刺戟してくる。
|クラクラする思いだ。しかし、自身ではちょ
|っとの間だと思っていたのが、
|「あッ! 変なことしてる」
|顔を上げると、既に鈴子が缶ジュースを両手
|に持って立っていた。
|「あああ。ご、ごめん」
|丸実は、嫌悪感を剥き出しにされることを恐
|れたが、意外にも彼女は、
|「いいよ。愉しんでて」
|そう言って、勉強机の椅子に坐ると、ジュー
|スを一口飲んだのだった。
|そして、紙袋をペリペリと開けると、『週刊
|プレミアムボーイ』を開いた。
|「私、長槻蜻蛉先生の『白肌巨乳保健室』っ
|ていう連載を愉しみにしてるの」
|イラストとタイトル文字のあるページを丸実
|の方に見せた。
|「きょッ、巨乳!?」
|鈴子の口から、思いもよらぬ言葉が出て、彼
|が驚いていると、
|「女の子の匂いを嗅ぐとか……。男の人って、
|やっぱりそういうところがあるのねー、長槻
|先生が書いていらっしゃる通りだわ。勉強に
|なるなあ」
|「エッチな小説なの? それ」
|「まあ、そういうところ」
|「意外だなあ」
|「どうして? 私は小説も書き始めてるから、
|とても勉強になる……」
|「へえー」
|丸実が勉強机からジュースを手に取って飲み
|始めると、
|「いえ、私も知ったかぶりなんだけど……、
|活字を数えてみたの。そしたら、毎回原稿用
|紙で一五枚くらいみたいで……、それでね、
|ちゃんと、そのお……な、なんて言うの」
|「何?」
|「毎週ちゃんと、射精のシーンにもっていく
|のよ。すごいわ」
|「そう、そうなんだあ」
|「連載で、毎週読者をちゃんと愉しませるっ
|て、私の理想とする作家だわあ」
|「作家、めざしてるんだ?」
|「ええ。それで陸上部には入らなかったの。
|丸実クンは書いてないの?」
|「うん。俺は読む専門だから」
|「じゃあ、エッチな小説は読んでる?」
|「いやあ、エッチっぽいって言ったら……か、
|……かなあ」
|丸実は、大文豪の名を挙げた。
|「読んで、昂奮したことある?」
|「ないとは言わないけれど」
|「じゃあ、ペニスが勃つんでしょ。そうなっ
|たら、どうするの?」
|純粋そうな雰囲気の鈴子から発せられた明け
|透けな質問に、丸実は顔を赤くし、気取るよ
|うにして、
|「うん? 男はオナニーをするんだよ。出さ
|ないと、スッキリしないからね」
|鈴子は、真面目な表情で、
|「男の子は、朝勃ちするっていうのは本当? 
|丸実クンもしたことある?」
|「なるよ。毎日だよ」
|「へえー」
|鈴子は感嘆したように、長い睫毛を伏せた。
|「お兄さんに訊けばいいじゃない?」
|「訊けないわよ。そんなこと」
|「雑誌を借りて見てるくせに、変なヤツだな
|あ」
|「これは、お勉強なの! 男の子の心理を知
|りたいって言ったら、兄が奨めてきたのよ。
|それより、もっと教えてよ。オナニーは、ど
|うやってするの?」
|「どうやってって!? そのお、エロ本見たり
|とか」
|鈴子は、雑誌のグラビアページを開き、
|「こういうのでしょ?」
|「そうだけど」
|開かれたページには、股間の恥毛も見せた、
|裸の女性が写っていた。
|鈴子が昂奮気味に、
|「じゃあ、ここで見せて。いつも、どうやっ
|てるか」
|「ええッ!?」
|彼は、渋って見せながらも、この先に妖しい
|快楽が待っていることを予感している。
|「ほら、脱いでよ。裸でベッドで坐っていい
|からさ」
|「分かったよ……」
|彼は、強く頼まれたから仕方なしに、という
|風を強調するようにして、ゆっくりと動作し
|た。チノパンとトランクスを同時に脱ぎ、下
|半身を露出した。
|鈴子は、息を呑むようにして見ている。丸実
|は、
|「ティッシュ用意してくれるかなあ。それか
|ら……」
|「はい。ティッシュ。それから……」
|「そのグラビアは、俺の好みじゃないから、
|森サンの裸を見せてくれる?」
|「えッ」
|「だって、俺だけ、こんな格好させられて……」
|「分かったわ」
|鈴子は頬を赤く染めたが、あっけなく従って
|くれた。
|丸実が利き手でペニスを弄る目の前で、セー
|ラー服が剥がされていった。
|上下とも下着姿になった鈴子。飾りっ気のな
|いブラジャーとショーツは、機能性を追求し
|ただけのものに見えた。
|丸実は、その躯を舐めるように見て、
|「ほら、チンチンが大きくなってきたでしょ。
|もっと気持ちよくなりたいから、オッパイ見
|せてよ、早く」
|「分かったわ」
|鈴子のオッパイは、白く美しかった。巨乳と
|は言えないが、存在感は確かにあって、桃色
|の乳首がツンと上方を向いていた。
|「き、綺麗だね」
|「嘘言わないでよ」
|「嘘じゃないよ。ほら、見てみてよ。俺が昂
|奮してる証拠だよ」
|「ああ、すごい。実際見ると、不思議な形ね」
|鈴子の目は、ペニスに釘付けになったようで
|あった。
・―――
   *
 タブレット器機の画面に、西川益実がここまで打ち込んだとき、今までペニスを舐めていた名津菜が、
「ああ。もう我慢できない。益実サンはそのまま小説書いててもいいからね。私が動くから」
 立ち上がると後ろを向き、ミニスカートをたくし上げ、ショーツを引き下ろした。安楽椅子に坐って、股間を勃起させている益実に、腰を落としてくる。
 名津菜。二〇歳の大学生だという彼女は、益実の初体験の相手である純見子にどこか似ていた。髪もショートカットにしている。しかしながら、あの頃の純見子と違って、男性経験が豊富らしいことや、オッパイの豊かなところは違っている。
「はあー。入ったわ」
「ああ。無理だよ、さすがにこの状態で書くのは」
 名津菜の内部は熱く、摩擦感が高かった。益実は小説を書くことをあきらめて、タブレット器機を横のデスクに置いた。
 官能小説作家である、益実の住むマンションの隣室に名津菜が引っ越してきたのは、この春のことだ。大学の文学部に通うための下宿ということである。このレベルのマンションを選ぶということは、かなり裕福な家の娘なのかも知れなかった。
 益実が、紙袋いっぱいに古書を買い込んで帰宅したとき、ちょうどエレベーターから一緒になり、名津菜の方から話しかけてきたのがきっかけで、こういう関係になった。
 官能小説作家ということに大きな興味を見せた彼女が、益実の室に入りたいと言い出し、その日の内に躯を重ねたのだった。
 そして今日の場合は、締め切りが近くて無理だと言う彼に、名津菜が、それじゃあ書きながらしてほしい、私が勝手に舐めてるから、などと言って室に入ってきたのだった。
「フェラのときは書けてたのに……」
「うーん、無理だよ。ナッちゃんのここは気持ち良すぎて」
「嬉しい……」
 名津菜はゆっくりと腰を動かす。ペニスへの刺戟と、彼女のお臀の肌触りが心地いい。
 今回益実はアイデアに困って、二〇年前の自分の初体験を小説に書いていた。作中の「巳川丸実」は西川益実自身を、「鈴子」は相手の松田純見子をモデルとしていた。
 初体験を描くことを決断したのには、若い名津菜の存在も大きかったかも知れない。
 名津菜が腰を回すように動く。
 長い間、舌の刺戟を受けていたペニスは、もう敏感になっている。射精の予感は直ぐにおとずれた。
「ナッちゃん。もう、いきそうだよ」
「はあ、はあ、いいよ。いって」
 益実は彼女の腰に手を添えて、突き上げるように動作した。もう止まらない。
「はー、はー、でッ、出る」
 彼は、名津菜の熱い内部を味わいつつ、絶頂に達したのであった。
   *
 数か月経って、年も終わりに近づき、各雑誌は新春号を発行していた。
 益実の作品がたびたび掲載されている月刊誌も、和服姿の女性を表紙にしていた。
 彼は、自身の小説を真っ先に確認した後は、数日かけてゆっくりと、ほかの掲載作を読むことを常としている。
 二、三日経ってから、或る読者投稿小説の内容に気づいて驚いた。
 タブレット器機を手に持ち、小説を執筆しながら情交する作家の描写があったのだ。
 益実は、直ぐに電話で名津菜に連絡をとった。
「ナッちゃん? もしかして、小説送ったのかなあ」
「あん。バレちゃった? そりゃそうだよねえ。益実サンの小説も載ってる雑誌だもんね。やっぱり、ヤバかったあ?」
「まあ、あの書き方なら誰にも気づかれないかも知れないけれど」
「怒られるかも、と思ってたから。……良かったあ。ママも喜んでるし、ひと安心」
「お母さんも知ってるの?」
「知ってるよお。雑誌見せたら、どんどん書きなさい、ッて嬉しそうだったよ」
 そのとき、益実の脳裡で名津菜の顔と、あの初体験の相手である純見子の顔が重なった。
 この聯想は、直ぐに確かめられることになった。
 年が明け、しばらくして、名津菜が益実の室を訪れた。
 白いニット生地の服装だった。
「今、時間、大丈夫? ママが益実さんに会いたいって来てるの。もう直ぐ来るから、室に入れてあげてね」
 ちょうど起きたところで、放尿し、水を一杯飲んだだけだった彼は、洗面所で顔を洗った。
 だんだんと胸が高鳴った。
 純見子との再会かも知れない。
 玄関に立つと、
「失礼しまーす」
 ドアが開き、隙間から覗く目と、目が合った。
 やはり、彼女であった。
 純見子はドアを開けるなり、
「やっぱり、ニシカワ・マスミ・クンだわあ」
 彼女は、あの頃と変わらずに、髪をショートカットにしていた。長い首に乗った顔は、美しく、今は妖艶な感じすらあった。洋服は、名津菜と同じニット生地で、良く見るとワンピースらしかった、裾が膝上にまで延びている。黒いストッキングをまとった脚にも艶がある。
 益実は、純見子の全身を舐めるように見てしまったことに気づき、咳を一つすると、
「フルネームはやめてほしいなあ」
「じゃあ、センセ」
「もう、やめてよ」
「まさか益実クンの方が作家になるなんて思わなかったわ」
「俺自身もだよ」
 場の雰囲気は、既に打ち解けたものになっていた。益実は、純見子を和室へと案内した。
 小さなテーブルを挟んで坐る二人。
「娘が、お世話になってるようで……」
 純見子は笑みを浮かべるように言った。益実はお茶を出しながら、
「う、うん。知らなかったんだ、本当に。松田サンの娘だなんて」
 彼女は首を横に振って、
「いえ、いいのよ。むしろ、男遊びが減ったみたいだわ、あの子。小説も書き始めたし、私としては嬉しいの」
「そう。小説を書くのをママは勧めるっていうのを聞いて、松田サンの娘じゃないかって、初めて気づいたんだ」
「ねえ、益実クンの方こそ、松田サンって呼ぶのやめてよ。純見子ッて呼んで。私も大人の女になったんだから」
「あー、うん」
 益実はお茶を一口飲んで、あらためて彼女を見た。
 同級生だから、当然純見子も今年四〇歳である。昔よりも、余裕のようなものが感じられ、益実は自分の方が年下ではないかと思ってしまう。
「それとも、名津菜みたいに若い子の方が好きなのかしら」
「いやあ。そんな、こっちが疼くようなこと言わないでよ」
「本気よ。大人になった私、試してみない?」
「でも、旦那さんが…」
「名津菜に聞いてないの? 夫とは疎遠になってるのよ。ケンカして、私が実家に戻ってしまって……」
 詳しく聞くと、純見子は或る男と学生結婚だった。相手は大学に残り研究者になったが、いつしか頻繁に女子学生と学校の外で会うようになったらしい。彼女の実家は、両親と兄がインターネット関連事業で成功し、生活には余裕があるという。
「……どーお? もう一度、私を抱いたからって面倒なことにはならないわ。私、名津菜のことのお礼をしたいのよ」
「う、うん」
 生唾を呑み込む益実。
「見て……」
 純見子は立ち上がると、黒色のストッキングを脱ぎ、ショーツも脱いでしまった。
 膝をテーブルに付け、ガニ股状態で、股間を突き出して見せる。
「……ほら、もう、こんなに濡れてるの……」
 純見子が左手でいじくりまわす秘部は開いて、キラリと光を反射する所があった。益実を迎え入れようとする中心も露だった。
 彼女は人差し指と中指の二本を、出し入れする。
「……ああん。感じるわあ」
 彼は、昂奮しながらも驚きを隠せない。
「松田サン、やらしいよ。なんで、こんなにやらしくなったの?」
「ああーん。純見子ッて言って! 私、名津菜の小説を読んで嫉妬したわ。あの益実クンとッて。大人になった、作家になった益実クンとヤってるなんて。私、あの頃、本当は益実クンのことが好きだったの。男の子のことを知りたいとか言ってたと思うけど、益実クンじゃなきゃダメだった……」
「純見子……」
 益実はテーブルの反対側に回って、彼女を押し倒した。
 上に被さって、唇を求める。
 ベロベロと舌同士を闘わせ、彼は唾液を吸うようにする。彼女の口腔は微かにタバコ臭がして、意外であった。
 存分に粘膜のヌメリを愉しむと、躯を起こし、純見子の足を手に取った。鼻を押し付けると、鼻を突くような独特な匂いがする。最前まで、ストッキングに包まれていたのだ。ムレムレなのは当然である。
 益実が舐めると、
「ああーん。なんだか恥ずかしいわ」
 彼は汗の味が無くなるまで、一〇本の指を一本ずつしゃぶっていった。
 全て舐めつくすと、やっと秘部へと舌を近づけていった。
 手の平では、純見子のスベスベとした太ももを愉しみつつ、顔は股間に向ける。
 そうだった、彼女の陰毛はあのときも薄かったのだった、と、浪人生の頃にも秘部を口にしたことを想い出した。あの頃は、初めてだったので、ペロリペロリと舐めるだけだったが、今は、クリトリスを集中的に吸うなどする。
「ああーん。そこ。そこがやっぱり気持ちいいわ」
 大きめのクリトリスを口内に感じながら、娘の名津菜も、同じようなものを持っていることを想う。
「ああ、いっちゃう。それだけで、いっちゃう」
 益実は、指も使って、リズムよい刺戟を続けた。
「あん、あーん」
 純見子は躯に力を入れたかと思うと、夢心地でいるような目で、上をあおぎ見たのだった。
   *
 益実がスウェット生地のズボンと、パンツを脱ぐと、純見子が愛撫してくれた。
 始めに、左手で幹をしごくようにしたり、同時に右手で陰嚢をモミモミとマッサージするようにする。
 次に、舌先を、ぺニス全体に這わせるように触れさせ始めた。
「気持ちいいよ」
「ねッ! うまくなったでしょ」
 上目使いの純見子は、なんとも妖しく淫らで、そして美しい。
「ああー」
「このまま、一回いく?」
「いや、入れたい」
「わたしも。もう、我慢できない」
 彼女にテーブルへ手を突かせて四つん這いにすると、益実はニット生地の裾をめくり上げて、臀部を露出させた。
 純見子の秘部は、触れていなくても開いた状態を維持している。
 益実は、ぺニスの先に、彼女の愛液をまつわりつかせると、内部に侵入していった。
「は、入った」
「分かるわ。はっきり感じるの」
 彼が、腰を前後に動かし始める。
「き、気持ちいい」
「私も……。どお? 娘よりいいでしょ」
「ああ。吸い付くみたいだあ」
「あん、あん、あん」
 やがて益実は前に折れて、純見子の髪に、耳の後ろに、首に、鼻を押し付ける。甘い香りに陶然となる。
「あーん。私、幸せ」
「はあー」
 息を大きく吐いた益実は、彼女の腰に両手を当て、今度は動作をより激しくする。
「あん、あん、あん、いっちゃう」
「はあー。お、俺も」
「いッ、いくううううう」
「ああッ!」
 益実は、テーブルに体重を預ける純見子の内部に、ドクンドクーンと射精したのだった。
   *
 半年以上経ってからだった。益実は月刊誌を読んで、また驚いた。読者投稿小説として掲載されていた、名津菜が使っているペンネームのある作品に、和室での男女の情交が描写されていたからだ。
 いつの間にか、益実の室に入って覗いていたのかも知れない。
 作品のタイトルは『母には勝てない』。
 登場人物の母は、こんなセリフを言っている。
「小説のヒントにしなさい。そして、応募しなさい。応募要項をよく確かめてね」
   (「再会」おわり)

再会

再会

官能小説。約9,400文字(記号含む)。

  • 小説
  • 短編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日 2020-07-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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