パウンドケーキ日和
ゆうびんきょくのまえで、まちあわせた。しろくまから、パウンドケーキを焼いたからたべてよ、と連絡がきて、ぼくは、ぼくのいえと、しろくまのいえのあいだの、ゆうびんきょくに、むかった。車が、きょうは、みんなゆるやかにはしっている日で、うんてんしているひとたちの表情が、にこやかにみえた。赤信号をまっているときも、いらいらして待っているひとはいなかったし、歩いているひとも、自転車のひとも、なんだかたのしそうに、やわらかくて、おだやかだった。パウンドケーキ日和だなぁと思いながら、ぼくは、ゆうびんきょくのまえの、あかいポストのところで、しろくまをまっていた。暑くもなくて、寒くもなくて、湿気はすくないし、くもが、たいようのひかりをほどよくやわらいで、すごしやすい午後だった。しろくまは、ぼくが到着してから、三分も経たないうちにやってきて、やぁ、と片手をあげた。ぼくも、やぁ、と言って、片手をあげた。しろくまの、あげなかった方の手には、ケーキやさんみたいなしろい箱があって、しろくまは、きょうはお天気もよくてきもちがいいから、パウンドケーキをつくるのに最適だったよ、とほほえんだ。ぼくらのよこを、ひとびとも、自転車も、車も、すべるようにいきかい、つまりは、ちいさなわだかまりも、いざこざもおこらず、街は、へいわそのものだった。こんな日が、まいにちつづけばいいのに。しろくまのパウンドケーキも、できたら、まいにちたべたいとひそかに思いながら、ぼくは、しろくまとならんで歩きだした。
パウンドケーキ日和