スノーボール

かき氷にスプーンを突きたてて、霜柱を踏んだ音
水滴混じりのシロップがべたつく、底にはアカシアの香り

枝葉を茂らせた木が化け物に見えたのは昔の話
何にでもなれた昼時が何となく疎ましかった、窮屈な話


寒くもないのに震えている?
人いきれでこごえそうだ

痺れた左手には感覚がないわ
過ぎた熱はひどく冷たいでしょう、
頬で確かめる勇気もないけれど


ゆるく結んだ紐がほどけて、帽子が落ちて
拾いあげた向こうには、もういない

不在の夏は、僕にとってはまんなかの冬だ
さようならを見つけられずに三年が経ちました

いつか、どうか、忘れられますように
今も空白を願っている

スノーボール

スノーボール

雪玉でなくて花のほう。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-30

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