小説「一度、あきらめた場所で」第6部

hougen

小説「一度、あきらめた場所で」第6部
  1. 第35声「いまさら」
  2. 第36声「他人事の世界」
  3. 第37声「恋だった」
  4. 第38声「カンツォニエーレ(永遠に逸れないで)」

終わった唄のために

第35声「いまさら」


まだ秋の話しだったか…


「春が来た」と、職場の同僚から人づてに聞いた

あの娘に彼氏が出来た。
「仕方ないよな…」と僕は思った


あの娘が送った僕への好意
もしかしたら僕のことを好いていたのかもしれない
それに気づきながらも、してきた知らんぷりがあった
応えないようにする努力があった

今の自分は「やりたいことがある」と
そう思い込んで
いや、そういう風に自分を追い込んで
自分を創作活動の領域に置きたかった
変な話しじゃない

そうやって、
何かに挑戦したいとき、人は他を諦めたり
集中するための切り捨てをしたりする

迷いもあった。
愛せるのか? 
愛してもらえるのか? 

僕の心の準備がある
手遅れで気づいたのか

それとも


あの若い娘が、誰かのものになるという事が
それほどに悔しかったのか?
自分のものになると思っていたのか?

いまさら…好きに、本気にならなくても…


頭に浮かぶ 思い出しては 突き刺さる
置いては行けない 哀愁
とぼとぼ歩く 僕のよこ
車が水を 跳ね上げた

この歳になって こんな気持ち 味わうなんて

夏には背丈が 伸びていた 木々が 枯れて
見えていた 景色を 殺風景に
視界から 遠ざけ
未来が 霞む

アスファルトに 落とした眼には
ぽと ポト と 雨が 滴る

突き刺すような 痛みが 胸を
かけらと かけらを 重ね合い
染みをつくる

雨と雨、虹にはならない滲み


この歳になって こんな気持ち 味わうなんて

かけらと かけらを 重ね合い
アスファルトの乾きを 染め上げる

眼下に広がる 唄のこだまが
街の灯り みたいに
きらきら している

泪かーー--- 


いつか 視た 広がり
僕は 視たことが ある

まだ誰かの面影 昔 好きだったひと

そのときに そのときも 手を遅れで気づいた

「本気」

本当に好きなひと

どうにもならない事 それ自体ではなく

自分の気持ち

自分の気持ちに気づいたこと

本当の気持ちに素直になったこと

手遅れで

それが、また


また、そのパターン

それから


また人づてに聞いた

あの娘が泊まりがけで旅行に行った事


だめ押しの一手

そして戻る

一日

使い捨て

一日

疲労してゆく

僕はまた、果たせずに
終わらすことのできない
物事の泥沼のなか

一日

使い捨て

一日

疲労が溜まる

時間切れまで
カタカタな音
奏でるまで

一日

昨日の続き
ただの、続き


一日中

壊れるまで


僕はまた、迷う
終わらすことのできない
視たつもりのまた夢のなか


叶えることの出来ない、夢のなか

第36声「他人事の世界」


「ー他人事の世界ー」

冬になり

職場では、12月「師走」を迎えた。


この時期、職場で孤独感を味わった。

2名の退職者が予定されていること。
1名は、職場の開設当初から働いていた方で、
その職種のベテランでもあった。

そのひとは、ある面で疲れていた。


日々、職場の過酷になってゆく状況。
「50代」という年齢からの肉体的な不安。
そして、会社の変わらなさ。
悪い意味での変わらなさ。

「良い会社」とは、云い難い。
開設から3年目という、まだ安定を欠いた状態。

若い、これからの会社…
だけど、上役たちの駄目さ加減。
色んな提案や改善を試みた先輩たちは
「会社の未来に明るい展望は望めない」
辞めて行くときの主な理由。


退職予定の先輩は、定年までは続ける予定だった。
だけど、気持ちの糸は切れた。
頼りになる人だった。
「ベテランの経験者」だけではなく、
「はっきりとものが言える」
秩序の面で、精神的な柱だった。

ある時は、女同士の…いざこざの仲裁。
ある時は、駄目な上役の考え方に対して、直接の訴え。

ある人には、「厳しいひと」に思われた。
だけど、言いたくても言えない事を
「代弁してくれる」
その力に、僕は頼っていた。

…もちろん、その人に、すこし良くない面もあったけど。


そして、2名目の退職予定者は、

「あの娘」だった。


知っていた
いや、人の会話のなかで、耳に挟んでいた
だから、直接聞いたわけじゃない。


退職予定1名目のベテランさんからは、
事前に「辞めるかもしれない」と、
その可能性を直接に話してくれていた。

だけど、2名目の「あの娘」


許せなかった


職場の、別の部署では辞めることを言っていた
でも、自分の部署の中では、
それを話さず、隠し。
部署の中で、いじめとか、そんなことはなかった。
むしろ、良好な関係が出来ていた。
僕を含めた(?)同僚たちからは、かわいがられていたし、
その娘の役割も出来ていた。
居場所があった。

その娘は、専門学校に通うらしい。

耳に挟んだ話しでは、あと何ヶ月かでの…退職。


恨みたくなる


というのも
人それぞれ 勝手な理由を抱えて 生きているから

その理由が 仕方なく 思えるから


誰に 誰を 誰かを 恨みたくなる
僕の 身勝手さ 恨みたくなる 自分を


というのも
生きづらく 消化できずに抱えて 生きているから

その理由が 分からなくなってきているから

理由を また 造ってゆくから

裏切らない 何かが そんなに 必要なのか?

忙しくなってゆく職場の現状を知りながら、
辞めてゆく
そして、なんだか最近…
他の同僚は業務を雑にやっている

その人たちの雑な部分を拾う、僕の状態…


あほ クサく なったよ
あん たら と いっしょに
働かなきゃ ならんの

なんで あんたら 
手伝わな いかんの
孤立 したんだか

なんか あほ クサくなった
あんたらと いっしょに
働かなきゃ ならんの

なんか とても かなしい

他人のこと なんて
誰も 深入りしないさ
趣味や 考え方 大切にしていること 想い出
分かってくれる ひとなんて
いないんだ

たぶん、とても かなしくて
むかし ぼくは あの本 作ったのかも
たぶん、とても つらくて
むかし ぼくは あの本、作ったのかも

あれは この会社 入るまえ 
じぶんの 『居場所』が 無いとき


たぶん とても 寂しくて
あの本 居場所を 作りたくて

たぶん とても 寂しくて
あの本 ぼくは 作ったのかも

いつまで 分かってくれる人 なんて
求めているんだろう

もう、僕も 他人事の 世界に 安住するべき

あきらめろ

    他人を

他人事の世界

みんな好きなように 自分の生き方を選ぶ

それは 良い事

     良いこと? なんだろうか

責任とか そんな重たいこと
そうじゃなくて 『居場所』
『居場所』があること

そこに自分が居て、
「活きていること」を 
どう思っていたんだろうか?


辞めてゆくひとたち

でも、僕もフリーターだった頃、そうだった
辞めてゆくひとだった

受け容れられたこと


そこで「他人ではなくなった、ぼく」

辞めてゆくひとは、「他人だ」

「他人」になるんだ

他人事をつくってゆく 他人事の世界がある

第37声「恋だった」

 
「ー恋だったー」

クリスマス

働いている施設では去年に続いて、
今年も僕はギターを演奏することになった。

とはいっても演奏会なんてもんじゃなく、余興といっていい。

プログラムは…


「ふるさと」
「ジングルベル」
それと、とあるアニメのエンディングテーマ曲。

何でかと云うと…
「あのアニメを観ていた」と、共通の話題に。
以前、そんな会話をあの娘として。

そのことを覚えているか分からないけど、
そのアニメのエンディングに流れていた曲を演奏しようと思った。

数少ない…共通の話題。
共通の話題の想い出。
少なからず、やりがいを感じる。

来年の3月に辞めてゆくあの娘に、
こっそりと贈るような、僕の気持ち、だ。


あの娘の存在が僕の中で、大きくなっていた。
あの娘と “共有したい”
 いや “共有できる” ことを感じていた。
僕のことを好いていたようだけど、
今は彼氏が出来て、
お泊まりも…

「いつも手遅れ」

そう、アントニオ・タブッキ。
あなたの言うとおりだ。

何年か前の、想い出の娘も手遅れになってから、
自分の中の感情を隠せなく、
素直になって、意を決して…。

想い出の娘とも、
“共有したい” 
いや “共有できる” ことを感じていたのに。

最初、僕のことを好いてくれた…だけど
「いつも手遅れ」で
結局、想い出の娘には、ふられた


僕は…


でも、良い演奏ができるんじゃないかと思う。
これまでの経験から、気持ちを乗せて、
これは、心ある演奏になるだろうから。
心の底から、演奏したいことだから。

たとえ、余興で、他愛のない場だとしても


ーークリスマスの当日

夜勤明けで、迎えた僕の意地。
眠気を何処かへ置いて、演奏した。


あの曲は、失敗した。


声が出なかった。

緊張…それもあったが、
前の曲(ジングルベル)で声を張り上げて歌っていたせいで、
静かな出だしで…しっとり唄う…感じが、
音程、声色…全部が『ジングルベル』な感じになった…笑
(笑以外になんと書けと?)

すぐに、演奏を中断し、その曲は止めた。


ちなみに

フルート、クラリネットとの合奏で
「ふるさと」「ジングルベル」をやった。
クラリネットは、あの娘が演奏した。
僕は、誰かといっしょに演奏する経験がないようなもので…
ほぼ、ぶっつけ本番。
吹奏楽なんて知らないのに。

人と合わせることの練習もあまりしたことがない
僕のテンポのズレを誤摩化しながら…
生音をほとんど拾ってくれないマイクとアンプさんのおかげもあり、
音は小さく済み、
フルートとクラリネットの音量に、
クラシックギターの音は…かき消され、

クリスマス演奏(余興)は終了した。

「〜さん、ありがとうございました!」と
あの娘が先に声を上げ。
そして、その場の同僚も
「ありがとうございました!」と
夜勤明けでの眠らぬ僕に、言ってくれた。


生きた心地を感じた
自分の努力が誰かのための時間になり
居場所を肯定されたような

何かが、報われたような

そんな感動


ーー忘年会の日。僕は幹事を任された…

本当は出たくなかった。
ただの忘年会ではなかったから。

この慌ただしい職場で、人手不足のままなのに、
これから近いうちに辞める3人
(2人ではなく、3人…)の職員のための
『忘年会兼、送別会』になる。

それを思うと、恨み、怒り、
…のような思いが湧いて、
幹事の僕は、シフトを見て…
僕が夜勤をやり欠席し、
他の人たちで忘年会をやってほしかった。
シフトを見ると、どう考えてもズラせなくて、
…仕方なく、諦めて…出席する。


あの娘と、最近、関わりづらくしている。
どうせ辞めてゆく人だから。
関わりづらさは、
最近、その娘がすごく仕事が出来るようになり、
自分の立ち位置がなんだか危うくも感じていた。
そんな理由もあったのかな…?

僕を好いてくれていたのに、
応えずにいたら…違う男と付き合って、
泊まりに行って…
複雑な感情を抱いてしまい、
僕は冷たく、
他人として、
醒めるように

関わりを避けていた


そして仕方なく…
忘年会の日付を知らせるために、
あの娘に話しかけた。

あの娘と僕と、もう一人の同僚が、
前もって作成されたいたシフトにより、
忘年会の次の日が早番になっている…。

忘年会で夜遅くなって、
次の日が早番という過酷さ…

申し訳ない気持ちで、
忘年会の日付を知らせたとき、不意に…
「がんばりましょうね!」と、
言ってくれた。


そこに含まれた濁りのない優しい素直さを感じた。


僕は、それで、自分の間違いに気づき
その娘に負けた…と

ーー恋だった


複雑な 感情を抱く
それは 分かっていても
イライラして 考えてしまって
だけど
自分の中で 消化して
納得しなくちゃいけない

その感情に 気づいたら

恋 だった


自分が 退かなきゃいけないとき
手遅れな とき


頭に 浮かんでは
それで 腹が立って
歪んで 傷ついて
だけど
自分の中で 消化して
納得しなくちゃいけない

複雑な 感情を抱く
それは 分かっていても
イライラして 考えてしまう
だけど
自分の中で 消化して
納得しなくちゃいけない

その感情に 気づいたら

恋 だった

その感情に 気づいたら
恋 だった 
恋 だった だけど
これも 手遅れで

とても
悲しい

いつまで 
空回りするのだろう

自分の気持ちを確かめていたら

空に流れていったーー

忘年会(兼、送別会)、
またあのアニメのエンディングテーマ曲を演奏した。

リベンジのつもりで
…どうしても演奏したかった

あの娘に


最後まで弾けた
それで良かった

自分のどもり癖だとか
人前で声が通らないことだとか
あがり症だとか
色々、だめだけど

最後まで弾けた

それで良かった

ーー忘年会の帰り

色々、だめだった演奏で、
ブルーな気持を抱えて後ろ姿で歩道を渡ってゆく僕に
「〜さん、ありがとうございました!」と

また、あの娘が声をかけた

終わった唄のために

第38声「カンツォニエーレ(永遠に逸れないで)」


 「-カンツォニエーレ(永遠に逸れないで)-」


たぶん、素朴な あの娘
僕は 愛することが 出来るだろうか
きっと 趣味が 違うだろう
きっと 違うものを 視ている
たぶん、素朴な あの娘
僕は 愛することが 出来るだろうか

僕と 違うところで あの娘 活きている
たぶん 素朴な あの娘
僕は、好きだ
でも うまくゆくだろうか
僕と 違うところで あの娘 生き生きとしている…

あの娘、あの娘ーー


あの娘が、好きなんだ


同じ時間 同じ場所で
うまく やってゆけるだろうか

たぶん、素朴な あの娘
僕を 愛し続けて くれるだろうか

自分と すこし
違うものに 惹かれて
自分には ない
違うものに 焦がれる
あの娘、愛し 続けて みたいんだ

今度は うまくゆく だろうか
ビクビクして 勇気が足らない

ためらってばかり
こころのなか 打ち明けるの
ためらって ばかり

同じような 失敗が 散ら点いて
ビクビクして 恐がっている

ためらってばかりの
本心を 打ち明ける
確証のない 投げ掛けを


確かめてみたいの?
ためらってしまうの?
触れてみたいの?
ためらってしまうの?
手を…手を…
重ね合わせる

涙を流す 底までの 過程が
あるじゃないか
でも 素直に ならなくちゃ

あの娘を 僕は 奪う
誰かを 傷つけてしまう
でも あの娘を 僕は 奪う
もう 自分のために
もう

自分が心を許せる相手を
求めていた
きみは ぼくの
こころの拠り所
こころの宿場

ぼくのほうが こどもかもしれない
いつか きみが
これを見てくれたとき
ぼくのこと まだ好きでいてくれている?

ぼくはなんだか こどものように
きみのことを ただ もとめて
いっしょに 居たい
それも 共有する ということ
なんだろうね

まだ この時
きみの返事を聞いていない段階で
不安で きみの声が聴きたい
きみのメールが来ないかなと
そればかり


ふたり の あいだ
温度差 が あって
片方 は 必要に 思い
片方 を 知らず
会話 は 弾まず
距離 は 縮まら ない
ひとり 違うほう 向いて
視線 が 合わず
片方 の 努力で

信じるしかない
耐えて 耐えて 堪えて

ぼくは

もっと きみの人生に
触れたい
知りたい
きみが 体験した 場所
きみが 育った 世界
きみが 生きた その 軌跡

純粋に
許容したい
きみの人生
共有したい

だから

手を 取ってほしい
僕を 見てほしい

詩に つづる
僕はこの方法で
この方法で 自分の辛さを
乗り越える

僕は いま
詩に現す世界で
この世界で 自分の想いを
作り替える

詩が こころを

僕には
恋愛は
純粋になってゆく
より意識的に 純粋な感情を
取り戻してゆく 試み
そして
破壊的な 衝動と
傷の
ふたつのベクトルのなか
バランスをより意識的に
取ろうとすること

溢れる 感情と 向き合うこと

つまり、より自分と向き合う
つまり、より他人を考え
向き合おうとすること

葛藤し、選択する

そのスパイラル


その先に、あなたが

あなたが


親密さとは、
打ち解けた 素の口調で
すこし悪い 形式を破った
笑い声
やさしさを 被せた
壁を 取っ払った瞬間
そのときー発したー笑いごえ


僕は
打ち解け合う 瞬間に
ふれあいの たいおんを 感じた 瞬間に
時間が 止まる

何かが 重なった
重ね 合わせた こころの 軌道に
ただ 出逢いたい

そこで なにかが


 始まる


ふたりの あいだ

これから 将来 未来

過去が 意味合いを 帯び

過去が 速く 加速し 未来へ

 連なる

総てが 渦巻き スパイラルの 果てに

あなたが

あなたを 感じる

確信する きっと

 出逢うと


あなたと 生きたいと 思う

あなたを 信じたいと 思う

あなたを

愛し

それで

良い


それで 十分 だと 思う

好きだと 言ってくれたなら
それで 気持ちが 晴れてくる
好きだと 言ってくれたなら
それだけで すべてが 報われる
それだけが それほどに 
特別なんだ

このまま 何もなければ
ぼくは また 独りだ
また 勘違いで また 傷ついて
また 死にたくなる
もう 少しで 時間が 迫る
このまま 何もなければ
ぼくは また 一人きり

好きだと 言ってくれたなら
それで 気持ちが 晴れてくる
好きだと 言ってくれたなら
それだけで すべてが 報われる
それだけが それほどに
それだけが それほどに
それだけが それほどに
特別なんだよ 

『女心』なんてのは
わからないよ
ただ きみを 微笑ましく
微笑ましく 見ているよ

きみの 視線が 逸れたまま
ぼくは 話し掛ける
きみの 眼を 覗きこむ
ぼくを すこし睨んだかな
ぼくの 声は 小さく
きみは 反応 しづらい
ぼくの 声が もっと
もっと やさしく もっと
話せるように 
届いたら いいのに

『おんな心』なんてのは
わからないよ
ただ きみを 微笑ましく
微笑ましく きみを 見ているよ

きみの 顔を もっと 見せて
ぼくの 顔は 自信ない
きみが 視線を 向けるとき
ぼくの 顔のこと 気になって
なかなか 正面から 目を合わせられない
好きなひとに 正面から 顔を合わせる 勇気
自分の素を 見せる 勇気
嫌われたくない

『おんなごころ』なんてのは
わからないよ
ただ きみを 微笑ましく
微笑ましく きみを 見ているよ

申し合わせたかのような 愛によって
ぼくら 出逢った
きみの 面影に ぼくが 出逢った人たちが 浮かぶ
きみに 出逢う前 ぼくが 出逢い 好きになった人たち
でも きみは きみです
きみが 好きです

『女心』というか
きみの こころ
まだ あんまり わからないよ
でも きみを 微笑ましく
微笑ましく きみを 見ているよ
そして

『もし…』という言葉が 声が
ちらつき 考えてしまうとき

出来ることは 信じること

自分の不安に 耐えて
相手を 確信を 忘れぬこと

待つとき
それは 考えるため
相手を 信じるための 時間

きっと だいじょうぶ と


不安なんだ
あの娘が
ぼくは何だか

冷たく 凍るよう
きみのこころが 読めない
なんで 打ち解けてくれないの
避けるように きみは
その場 離れて行った

冷えた 凍りついた
気持ちを 溶かすのは
もう 手遅れなのかい
振り向いておくれ
その場に 立ち止まって
振り向いて

いっしょに 居たい
ぼくを 受け入れて
きみが 好きで 愛したから


嫌いなら キライと
不安なら フアンと
楽にさせてくれ

嫌いなら キライと
不安なら フアンと
楽にさせてくれ

いっしょに 居たい
ぼくを 受け入れて
きみが 好きで 愛したから

なんで メール
送ってくれないの?

きみの気持ちを 確かめたい

話せば 話すほど
考えれば 考えるほど
孤独になってゆく

きみの 気持ち
きみの 気持ち 確かめたい


ありがとう

好きだよ

おかしいな
なんで なみだ 出ないんだろう
わかっていたから
覚悟 していたのかな

なにを 信じたら いいかな
もう この 直感 当てにならないや
的外れの 人生さ
なにを 信じたら いいかな

おかしいな
なんで なみだ 出ないんだろう
わかっていたから
覚悟 していたのかな

どうしたらいいんだろう
生きたいわけでもないし
ただ 消えてしまいたい

ただもう消えてしまいたい


本気

だったんだ


考えたくない


死にたいよ

でも生きて

この人生を
価値あるものにしたい

独りでも

でも生きて

この人生を
価値あるものに

したいんだ

メールアドレス 消してしまった
電話番号 消してしまった
送信メール 返信メール 消してしまった

まだ あきらめたくない 自分が
まだ どうにかなると 思ってる自分が
後悔して 違う言葉で 伝えられたら
もしかしたらって こうすれば 良かったかもって
まだ まだ まだ まだ あきらめたくない

メールアドレス 消してしまった
電話番号 消してしまった
送信メール 返信メール 消してしまった

もう

ないんだ

もう

ないんだ


そうか

これが

胸の痛み なんだ

人生は いま 涙 すら
涙 すら 
人生は 奪うのか

愛も 夢も 期待も
生きる
希望を 奪ってきた

人生は いま 涙 すら
なみだ すら
泣くこと すら させない

でも それでも
この 心に 灯る
握りこぶしは 何だろうか

だぶん、貴い
未来へ 向かう 気持ち
握りこぶし ひとつぶん
強い 志しが 残っていた

握りこぶし ひとつぶん
まだ 消えていなかった

あの人はもう 辞めたんだ -永遠に逸れないで-


ああ あのひとは もう
もう 辞めたんだ
ああ あのひとは もう
もう 居ないんだ

君に向かって 話す
君の内容から 逸れずに
探りながら
丁寧に それが 何かに 変わるように

だから がっかりさせないでくれ
きちんと 向かい合って
永遠に 逸れないで

がっかり させないでくれ

君に向かって 話す
君の内容から 逸れずに
探りながら
丁寧に それが 何かに 変わるように

がっかり させないでくれ

がっかり させないでくれ

だから、

永遠に 逸れないで

だから、

突然に 居なくならないで

ああ あのひとは もう
もう 辞めたんだ

ああ あのひとは
もう

もう 辞めたんだ

ああ あのひとは
もう

もう 居ないんだ


巨大な 巨大な コンピュータの…ような
想い出や 記憶 誰かの すべて

映像と 永遠

だとすれば
再会の日のために、

世界はきみの中で

鼓動するーー

小説「一度、あきらめた場所で」第6部

カンツォニエーレ(永遠に逸れないで)

小説「一度、あきらめた場所で」第6部

アントニオ・タブッキ いつも手遅れ 終わった唄のために カンツォニエーレ(永遠に逸れないで)

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-06-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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