【風のルウリィ】 三話

マチミサキ

そして更に月日は流れた

佐助、真純、万智ともに17歳

三人を操る運命の糸は再び
交差し
縺れ合う事となる。

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三人は揃って
星空学園に入学していた。

示し合わせた訳ではない、
少なくとも万智は違う。

示し合わす、どころか
佐助と真純の陸上繋がり関係は
ともかくとして

万智は
陸上も何もスポーツ、運動部活動自体を
まったくしていない。

高校入学前の小学生から
中学三年間までの一切だ。

中学時代は一度
友人に騙され演劇部に、
それから造形部・将棋部に。

いずれも文化系であり
演劇部のみ多少の運動はあったものの
本格的な運動部のものとは
まったく違う実に弛いものでしかなかった。

それはともかく

佐助はそのまま
同年代では負け無しの
将来の陸上界を担う天才型のホープとして
実力は誰しもが
文句のつけようのない勝率を誇っていたし
こういったタイプに
ありがちなスランプに陥る事もなく
未だ順調に記録を伸ばしつつあった。


真純も
佐助に比べればその戦績はいまいちでは
あるものの
モデル顔負けのルックスとスタイルの良さ
そして何より
そのサラブレッドかのような生い立ちも
手伝い
もはや国民的なアイドル陸上選手といっても
過言ではないほどの人気を博していた。

尚、
メディア各種の媒体で
何かとセットでの話題になりがちな
二人ではあるが

人気そのものは
判官贔屓ともいうのか
その純真無垢さ、生真面目さから
真純に軍配があがり
一方、実力及びレース成績は完全に佐助が上。

そして
真純の両親をまるでなぞるような
二人の恋愛を
世間では期待している風潮もあったが
当の本人達にはまったく
その気はなかった。

両者共に
中学も三年に入ると
幾つかの陸上名門からの特待生としての
スカウトも訪れていたのだが

それでも
この星空学園に揃って入学したのだ。

いや、
星空学園とて
文武両道を目指し
モットーとして掲げる
運動部門でも名門校ではあるのだが

それはやはり
二人が誘われた陸上名門よりは
些か心許ない

単純に

そう、例えば
オリンピックで金メダルが目標ともなれば
どちらを選ぶべきなのかは
容易に判断できる。

それでも
星空学園側としては
ダメ元でスカウトした
陸上界のホープが
何故だか二人揃っての入学希望と相成り
ホクホクであり

通常は1人分しかない筈の
短距離走の特待生枠を特例措置として
その年に限り二枠にした程であった。


そして入学から
幾つかの季節が過ぎ

舞台は高校二年の秋

まもなく
体育祭を迎える、という所から
始まる


□□□

陸上部グラウンド

『あのチビッ子ってさ、
やっぱ、ルウリィ…だよね?』

そうストレッチをしている
真純の背中を圧しながら話し掛けているのは
小学時代からの真純の幼なじみであり
親友の美保だ。

真純
『たぶん…そうだね』

美保
『幾らか伸びた程度でアレでしょ?
なんか怖いくらいじゃない??』

そう、たまたまグラウンドの近くを
通りすがっている万智の外見は
驚異的なほどに
小学生の低学年であった頃と
あまり変わっていない。

成長期を何処かへ置き忘れてきて
しまったかのようだ。

美保
『たしかに昔は凄かった記憶があるけど…
結局は陸上をする訳でもなし…
流石にあの身長(タッパ)じゃねぇ。』

真純
『・・・そういうの良くないよ。』

生真面目で努力家という
真純には
そういった本人には
どうにもならぬ事をいう友人の言葉に
多少の憤りさえ感じてしまった。

悪気がないのは解っているのだが・・つい。

美保
『ごめんって。真純は昔から変わらないねぇ。』

にゃはは、と
悪びれることもなく
屈託のない笑顔を見せる親友に
軽いため息をつき
真純も練習を再開した。

【ルウリィ】

とは
万智本人さえ
預かり知らぬところで
つけられていたあだ名である。

その由来は
スプーンお◯さん、という往年のアニメに
登場する
やたらと足が速く
普段は山に住むという
妖精なのか妖怪なのか
その正体はいまいち不明のキャラクター

その上
背がとても低く
幼い容姿である事も手伝い
いつの間にかに
真純や美保が通う小学校(本校)で
根付いていたニックネームだ。

小学校時代は
結局
あの年の選抜競争を最初で最後として
卒業まで【ルウリィ】こと万智が
その後も行われ続けた決定戦に
出場することは無かった。

毎年
俊足自慢の選手が山より
降りてきて
時には本校の選手に打ち勝つ事もあったが

その誰しもが
【あの年】
のルウリィ程の衝撃を本校陸上部の面々に
もたらすものでは無かった。

━━━ルウリィはどうして出て来ないのだ?

━━━━異界に戻ったのでは?

などという
噂も大会の時期には
御約束のように
のぼったが
あの激走を見た全生徒が卒業してなお
いまだ
その真相は判らず仕舞いであった。


実は真純は
あの【事件】のあと
何度か万智に会おうと
分校まで
足を運んだのだが

その寸前まできては
いつも
どうしても
合わせる顔がなく

その都度
結局はスゴスゴと引き返していたりしたのだ。

そんな当時のことを
自己嫌悪とともに
真純がフラッシュバックしていると

その真後ろに
いきなり現れた長すぎる影

誰だ?!

いや、体格(ガタイ)のよい陸上部員の
誰にしても
その影は長すぎる

真純が驚き振り向くと
そこに居たのは佐助であった。

いや、
いつの間にかに
万智を肩車した佐助であった。

万智
『降ろせへんたい』

佐助
『いやいや、大丈夫!
女としては見てないから!!
そうだな、歳の離れた妹ってとこかな。』

万智
『私のほうが3ヶ月以上歳上だけど。』

佐助
『そのナリで言われてもな』

いわば
そこに真純や美保も含めて
すべて幼なじみといってもよい程
馴染みの顔ぶれの筈なのではあるが

・・・

これは
世間ではまず
知られていないことなのだが

あれほどに
揃って取り上げられる事の多い
佐助と真純のあいだに
実は会話は昔からほとんど無い。

幼い頃
万智が出て来ないことを訝しみ
古巣の分校仲間へ連絡し
問い質した佐助が
【例の事件】
その真相を知り激怒したためだ。

未だにそれは禍根となり
佐助はメディア上以外となると
まともに真純とは口をきかない。

真純からは
幾度となく謝罪も兼ねて
話しかけてはみたのだが
佐助の無視は長年にして
ついぞ
変わらぬものとなっていた。

美保にしても
流石にその態度は酷いとは感じていたが
真純の友人として
当時の
本校生徒の陸上クラブメンバーとして
実はルウリィの仲間であることが判明した
佐助には引け目に近しいものを
感じていただけに何も言えなかった。

何より
その弁明めいたような事を
佐助が去ったあとで
あとで愚痴まがいに
真純に話しかけようとすると

真純本人が
泣きそうな声で
『ごめん、やめて、ありがと』
を繰り返すので

本人にもトラウマなのかも知れぬ、

もう
何も言わないようにしていた。

【風のルウリィ】 三話

三部作で終わろうと
構造していたのですが

終わりませんでした。

あと二話くらい

で、なんとかしたいなぁ。

ごめんなさい。

【風のルウリィ】 三話

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-06-29

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