見通し

 私はレキップ(ロピニロール塩酸塩)という薬も途中から服用し始めた。ALS治療薬のリルテックとエダラボンに併用しながら漸増中である。この薬はパーキンソン病の治療薬として使用されているので、もしかしたら神経細胞変性疾患ですくみ足もみられる私の病気にも効果があるのではないかと思って前の主治医に処方してもらい今の主治医に引き継いだ。私はレキップについてある程度の知識しかないが、病気からのがれたい一心でこの薬の治療効果を期待している。
 痰が切れない時ほど厄介で苦しいことはない。そんな時は呼吸器を使用しながら体位交換をしているうちに楽になって来る。それでも痰の喀出が無い場合はカフアシストや痰吸引器が必要となる。妻はこれらを真剣な面持ちでやってくれるが、吸引器はどうしても不安になると言う。素人だから失敗しても構わないよ、私の言った様にやってごらんと応援すると上手くいくことがある。確かに妻の介護技術は少しずつ向上しているようだ。
 他にも介護する事は色々あり、非力ながらも妻は大抵のことを自分一人でやろうとするから大変な苦労だ。以前は口内炎予防の為には経口摂取がいいと言って、食べやすくて安全なものをあれこれ探していたが、そのうちに私は誤嚥しそうで口から全く食べなくなった。そのため、日に三回の胃瘻注入、日に二回の歯磨きを欠かせなくなった。また気分転換のために天気のいい日の朝や夕には車椅子で近くを散歩する。最近では孫も一緒だから楽しい。
妻は時々シャワーチェアで私の体を洗う。更に洗顔、おむつ交換など細かなことまであげればきりがない。結果として膠着状態のストレスが妻の精神と身体を弱らせるようだ。私は心配になって二人の息子に相談して事情を汲み取ってもらった所、嫁さんたちも介護に協力してくれそうだ。本当に有難い。
 笑顔を絶やさず患者さんを大切に見ている主治医は毎週水曜日が往診日となっている。私は主治医の往診の時に、早く改善してほしい症状を四つ五つあげて、見通しを話し会った。主治医の説明ではこれらの症状はレキップを増やしていけば改善してくるという。私は嬉しくなってその兆しをとらえようと毎日チエックしていた。今の所は体位交換、寝返り動作が自力でわずかに出来るようになったことに気づいている。この程度の改善はレキップの増量効果でなくても、主治医の説明に安心したからとも、気候が暖かくなってきたからとも、治療薬併用の効果が出てきたからとも考えられるだろう。しかし、私は主治医の言ったようなレキップの増量効果によるものであると、是非とも考えたい気持ちがある。そして、もしそのとおりだとすれば、痰の喀出、便秘、自立歩行、誤嚥、発声などの問題の改善も夢ではないような気がする。私はALS治療に関する今後の見通しは明るいものと思いたい。
2020/6/27

見通し